【完結】水と夢の中の太陽

エウラ

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第一章 フォレスター編

実家にご連絡 その1

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街に無事到着しました。

クラビスに背負われてたよ。(涙)

門番さんに涎垂らしてたの見られてないよね?!

「うう、起こしてよう、クラビス。恥ずかしい。子供じゃないんだから。重かっただろ」
「ハハハッ、坊主、子供は甘えてなんぼだ! クラビスならビクともしないし大丈夫だって」

門番のオッチャンは顔見知りなのか、クラビスの背中をバンバン叩いている。クラビス、ちょっと迷惑そう。

「子供じゃないです。・・・あれ? クラビス、そういえば成人て幾つ?」
「15才だよ」
何だ、とっくに過ぎてる。てか俺、もうすぐハタチ・・・。
「え、俺19なのに、ナンならもうすぐハタチなのに・・・・・・。幾つに見えてんの??」
「坊主、嘘はいかん。どう見ても13,4くらいだろ?」

ほれほれ、と水晶に手を導かれ。

「何?」
「身分証ないんだろ? 簡易の鑑定水晶の魔導具さ。名前と歳と性別、犯罪歴くらいは見れる。大きければどこの街でも大抵使われる。すまんな。仕事なんでな」
「一応守秘義務の誓約もされているし、防音の魔法がかかっている個室でやるから心配ない。大丈夫だ、アルカス」

心配してクラビスを見上げたら、言う前に説明してくれた。ありがたい。では安心して。

「お? おおう。なるほど? は? え?? ハアアアッッッ?!」

門番のオッチャン、うるさいよ。防音対策、人間にもして欲しい。クラビスが咄嗟に耳を塞いでくれたからよかったけど。

「お、おまっ、これっ! え、まじか---!!」
「ああ」
クラビスがにっこりと笑う。

「坊主、本当に19才だったんだな!」

ソッチかい!!

「いやスマン。歳が衝撃的すぎた。で、この名前」
「フォレスター家の三男のアルカス様だ」
「---はー、確かに、黒髪にその瞳は間違いないな。外では緑色だったが、室内灯では紅くなっている」
「やっぱり珍しいんだ? 俺のいたところでもこの瞳は誰もいなくて、綺麗って言ってくれる人もいたけど、大抵の人は気持ち悪いって」

だからわざと前髪伸ばして、夜はなるべく出かけなかった

クラビスがそっと抱きしめる。
「辛い思いをしたんだな。もっと早く見つかっていれば」
「大丈夫だって。色々と大変だったけど、今も生きてるしクラビスに逢えたし」

それにこの瞳、アレキサンドライトって宝石と同じ輝きなんだ。ちゃんと俺を気にかけてくれた人はいたし、ここには家族がいるし。

「ヨシ! じゃあ、とりあえず仮の身分証を発行するから、冒険者ギルドでギルドカードを発行して貰ってこい。そんでもって、ギルドマスターに話してフォレスター家に連絡してこい。皆さん喜ぶぞ」

オッチャンがにっこりとそう言うので、ひとまず詰め所を後にした。



ギルドに入ると一斉に視線が集まった。そういやもう夕方近く。冒険者も依頼達成やら買い取りやらで混んでくる。それに。

「何だ?」

チラッと見上げたクラビスは冒険者というよりはお貴族様で、いや、実際貴族なんだろうけど。とにかくかっこいいから。
(すっごく目立つ。そんでもって側にいるあいつダレって視線が痛い)
いくら日本で不躾な視線喰らいまくってたっていっても、慣れるもんじゃないし。

クラビスの背に隠れるようにしたら、ひょいと持ち上げられて顔を胸に押しつけられた。
ギロッと周りを一睨みして視線を黙らせ、スンッとした顔で受付の男の人に声をかける。

「ギルマスに、至急面会を。最重要案件だと言って下さい」
「は、はい。ただ今。しょ、少々お待ち下さい!」
ぎょっとして受付のお兄さんが奥へ走って行き、すぐに戻ってきた。

「すぐにお会いになるそうです。二階のギルドマスターの部屋にご案内致します」

軽く息を切らせたお兄さんは、抱っこされている俺をチラッと見てから、何も見なかったように淡々と案内してくれた。



「ギルマス、お連れしました」
「おう、ご苦労。入ってくれ」

扉の向こうから凄味のある低い声が聞こえた。
思わず肩を揺らしたら、クラビスが背中をポンポン叩いて、ギュッとしてくれた。恥ずかしい。

「お時間をとって頂き、ありがとうございます」
「悪いな、少し待ってくれ。お茶入れてくれるか?」

机で書き物をしているらしいギルマス?が、こちらを見ずに前者はクラビスに、後者はお兄さんに言って、ガリガリとペンを走らせている。

ソファに勝手に腰を下ろして俺を自分の足の間に座らせて、後ろからギュッとしているクラビスに、何も見なかったようにお茶を出して去って行くお兄さん。

去り際にちょっと生温かい目をしてたと思う。

絶対子供だと思ってるだろ!

そんで知ってる。これ、バックハグってヤツ。恋人同士ならラブラブなんだろうけど!

一応俺たち主従関係!!

いや、さっき自分の気持ち自覚しちゃったからさあ!!
クラビスはどうか分からないけど!
俺、心臓バクバクなんだけど---!!

お願いギルマス!! はよ気付いてっ!

俺の心臓がヤバいって!


「ふふっ」
クラビスが肩を揺らして笑いを堪えてるのが分かった。おのれ~おちょくったな?!

「クラビス酷い!」
「あんまりにも動揺してるのが面白くて、つい・・・、ククッ」

ムキーッとクラビスの胸筋にぐりぐり後頭部を擦り付けていたら。

「あんまり押し付けていると、ハゲるぞ。やってることは可愛いけどな」
「ソレはやだ!! まだ無垢な19才なのに!! そして可愛いはない!」

「ぶふぉっ?!」

ん? 誰? って、俺たちの他に一人しかいないか。

「お前ら、人が仕事してる前で何イチャついてんだよ!」
「暇だから」
「スミマセン」

思わず吹き出したのはギルマス、と思われる人。まだ自己紹介されてないので(仮)で。

「ったく、忙しいのに最重要案件だと言うからわざわざ時間を割いたのに。要件はなん--」

顔を上げてこちらを、正確には俺を目にして固まったギルマス(仮)。

もしもーし? 大丈夫ですか?
クラビスさんや、どうするんで?

「アルカス・フォレスター様だ。昨日見つかった。主家へ連絡を頼む」

そうクラビスが言うと、速攻で復活したギルマス(仮)が詰め寄ってきた。ビクッとする俺、再びのクラビスの胸の中。

「ほ、本当にアルカス様なのか!」
「そうだ。ステータスも確認したし、門で鑑定もした。これが仮の身分証だ。アルカス様のギルドカードを頼む」
「おお、おお、遂に、俺たちの悲願が・・・よくぞご無事で、生きて・・・!!」

ええと?

「クラビス、話が見えないんだけど?」

キョトンとした俺は間抜けな顔だったんだろう。クラビスが笑っていた。

「ああ、悪い。ギルマスはザイン・フォルターという。俺の叔父だ」
「ええと? なんでそんな人がギルマスに?」
「元々、冒険者で。この街はフォレスター家の領地なんだ。だから問題が起こったときに対処しやすいように、領主の関係者が代々なっている」

普通はこういう組織って、貴族や国とは分けているんじゃないのか?
癒着とか政治介入とかってマズいでしょ?
って言ったら。

「他はそうかもしれないが、ここフォレスター領ではスタンピードとか災害時に協力しやすいようにしているだけで、政には介入出来ない。今の所問題なしだ」
とのこと。じゃあいいんじゃない? 俺が口出す事じゃない。

「クラビス、ひとまず伝達魔導具で将軍とご家族に連絡をしたから、すぐにでも返事が」

《オイコラ、ザイン!! アルカスが見つかったって本当だろな---!!! 嘘つきやがったらぶっ殺《オヤジうるさいよ!》すっ ゴスッ! ドガッ》


「ぴぎゃっ?!」

いきなりの大音響で、殺気まで漏れそうなドスの効いた声が響いて、しかもすんごい音が聞こえて思わず変な声がでちゃったよ。

涙目でクラビスを見上げると。

「将軍・・・お父上だ。後は、次兄殿だな」
コクンと頷いて、苦笑していた。ザインが魔導具から手を放して耳を塞いでいる。



え、こ、怖いんですけどお・・・・・・。(涙)


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