10 / 15
愛が重たい 10
しおりを挟む ――結婚から約一年後。
理仁と結婚しても日常生活に特に変わりのない真彩はいつも通り家事に勤しんでいた。
悠真は小学校へと通い出してから周りの友達の影響もあって朔太郎や真彩にベッタリという事も減りつつあり、最近では強くなりたいと言って空手を習い始めていたりする。
「姉さん、そろそろ買い物行きますか?」
「あ、うん、そうだね。今日は悠真の習い事の日だし、帰ったらすぐおやつを食べられるように準備しなきゃだから今のうちに行こうか」
今日は買い出しに行く日とあって、悠真が帰宅する時間までに済ませてしまおうと買い出しの付き添い担当でもある朔太郎が真彩に声を掛けていざ出掛けようというその時、
「うっ……」
「姉さん?」
「ご、ごめん、ちょっと気分が……」
急な吐き気に襲われた真彩は心配する朔太郎の横を通り過ぎると急いでトイレに駆け込んだ。
実は数日前から度々吐き気に襲われていた真彩。
初めは季節の変わり目で体調を崩したのかもと思ったりしていたものの、熱や風邪の症状がない事、ふと思えば月のものが暫く来ていない事に気付く。
「……これって、やっぱり……」
悠真を身篭った時にも同じような事があり、恐らく妊娠しているのではと直感した。
「……とりあえず、調べてみないとね」
悠真の時は初めての事で戸惑いや不安しか無かったものの、二度目ともなると慌てたりはしない。
トイレから出て部屋に戻った真彩は心配する朔太郎に笑顔を向け、
「ごめんね、もう大丈夫だから行こうか」
「姉さん、具合が悪いなら俺一人で行きますから、姉さんは休んでてください」
そう声を掛けるけれど、具合が悪いなら一人で行くと朔太郎が言う。
「ううん、本当に大丈夫。私も買いたいものがあるから一緒に行かせて?」
「……姉さんが、そこまで言うなら……」
本来ならばお願いしたいし有難い申し出ではあるものの、流石に検査薬を買って来てと頼めるはずもない真彩。
「けど、絶対無理しないでくださいよ?」
「うん、約束するね。ありがとう」
何とか朔太郎を説得して一緒に出掛けることになった真彩は、朔太郎の運転する車でいつものスーパーへと向かう事になった。
その夜、
「……やっぱり」
悠真を寝かせて落ち着いた真彩は昼間買ってきた検査薬を使ってみると、思っていた通りの結果になったのだ。
「……でも理仁さんには、きちんと病院で確かめて貰ってから伝えよう」
実は今、理仁は仕事で毎日帰りが遅く、朝も早い。
何でも傘下組織で問題が発生したり経営の方でも様々な問題を抱えているらしく、常に忙しそうにしていてゆっくり話す時間が取れていない状況の中、万が一間違いだったりして迷惑を掛けたくないという思いから今はまだ話せないと考える真彩。
「とりあえず早めに病院に行って、検査してもらおう……」
そう決めた真彩は今日も遅い理仁の帰りを待ちながらソファーで眠ってしまうのだった。
翌日、真彩が目を覚ますといつの間にかベッドで眠っていたのだけれど、理仁の姿は無い。
「やだ、理仁さんが帰って来たの気づかなかった」
帰宅に気づけなかったどころか、ソファーで眠ってしまった自分をベッドまで運ばせてしまった事にも申し訳なく思う真彩。
急いでリビングへと向かうもやはり理仁の姿は無く、代わりに翔太郎が真彩を待っていた。
「おはようございます、真彩さん」
「おはよう翔太郎くん。理仁さんは……」
「兄貴はもう出ました。何でも今日は九州まで行く用事があるとか。帰りは明後日になるそうです」
「そう……なんだ」
忙しい彼を労う事すら出来ていない真彩は自分の不甲斐なさに気落ちする。
それに気付いた翔太郎が何かを言いかけた、その時、
「姉さん!」
いつになく慌てた表情の朔太郎が、
「悠真、熱があるみたいで、姉さんを呼んでるッス」
一緒の部屋で寝ていた悠真の体調が悪くて呼んでいると真彩に伝えに来た。
理仁と結婚しても日常生活に特に変わりのない真彩はいつも通り家事に勤しんでいた。
悠真は小学校へと通い出してから周りの友達の影響もあって朔太郎や真彩にベッタリという事も減りつつあり、最近では強くなりたいと言って空手を習い始めていたりする。
「姉さん、そろそろ買い物行きますか?」
「あ、うん、そうだね。今日は悠真の習い事の日だし、帰ったらすぐおやつを食べられるように準備しなきゃだから今のうちに行こうか」
今日は買い出しに行く日とあって、悠真が帰宅する時間までに済ませてしまおうと買い出しの付き添い担当でもある朔太郎が真彩に声を掛けていざ出掛けようというその時、
「うっ……」
「姉さん?」
「ご、ごめん、ちょっと気分が……」
急な吐き気に襲われた真彩は心配する朔太郎の横を通り過ぎると急いでトイレに駆け込んだ。
実は数日前から度々吐き気に襲われていた真彩。
初めは季節の変わり目で体調を崩したのかもと思ったりしていたものの、熱や風邪の症状がない事、ふと思えば月のものが暫く来ていない事に気付く。
「……これって、やっぱり……」
悠真を身篭った時にも同じような事があり、恐らく妊娠しているのではと直感した。
「……とりあえず、調べてみないとね」
悠真の時は初めての事で戸惑いや不安しか無かったものの、二度目ともなると慌てたりはしない。
トイレから出て部屋に戻った真彩は心配する朔太郎に笑顔を向け、
「ごめんね、もう大丈夫だから行こうか」
「姉さん、具合が悪いなら俺一人で行きますから、姉さんは休んでてください」
そう声を掛けるけれど、具合が悪いなら一人で行くと朔太郎が言う。
「ううん、本当に大丈夫。私も買いたいものがあるから一緒に行かせて?」
「……姉さんが、そこまで言うなら……」
本来ならばお願いしたいし有難い申し出ではあるものの、流石に検査薬を買って来てと頼めるはずもない真彩。
「けど、絶対無理しないでくださいよ?」
「うん、約束するね。ありがとう」
何とか朔太郎を説得して一緒に出掛けることになった真彩は、朔太郎の運転する車でいつものスーパーへと向かう事になった。
その夜、
「……やっぱり」
悠真を寝かせて落ち着いた真彩は昼間買ってきた検査薬を使ってみると、思っていた通りの結果になったのだ。
「……でも理仁さんには、きちんと病院で確かめて貰ってから伝えよう」
実は今、理仁は仕事で毎日帰りが遅く、朝も早い。
何でも傘下組織で問題が発生したり経営の方でも様々な問題を抱えているらしく、常に忙しそうにしていてゆっくり話す時間が取れていない状況の中、万が一間違いだったりして迷惑を掛けたくないという思いから今はまだ話せないと考える真彩。
「とりあえず早めに病院に行って、検査してもらおう……」
そう決めた真彩は今日も遅い理仁の帰りを待ちながらソファーで眠ってしまうのだった。
翌日、真彩が目を覚ますといつの間にかベッドで眠っていたのだけれど、理仁の姿は無い。
「やだ、理仁さんが帰って来たの気づかなかった」
帰宅に気づけなかったどころか、ソファーで眠ってしまった自分をベッドまで運ばせてしまった事にも申し訳なく思う真彩。
急いでリビングへと向かうもやはり理仁の姿は無く、代わりに翔太郎が真彩を待っていた。
「おはようございます、真彩さん」
「おはよう翔太郎くん。理仁さんは……」
「兄貴はもう出ました。何でも今日は九州まで行く用事があるとか。帰りは明後日になるそうです」
「そう……なんだ」
忙しい彼を労う事すら出来ていない真彩は自分の不甲斐なさに気落ちする。
それに気付いた翔太郎が何かを言いかけた、その時、
「姉さん!」
いつになく慌てた表情の朔太郎が、
「悠真、熱があるみたいで、姉さんを呼んでるッス」
一緒の部屋で寝ていた悠真の体調が悪くて呼んでいると真彩に伝えに来た。
826
お気に入りに追加
1,146
あなたにおすすめの小説
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。

龍は精霊の愛し子を愛でる
林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。
その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。
王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。

稀代の英雄に求婚された少年が、嫌われたくなくて逃げ出すけどすぐ捕まる話
こぶじ
BL
聡明な魔女だった祖母を亡くした後も、孤独な少年ハバトはひとり森の中で慎ましく暮らしていた。ある日、魔女を探し訪ねてきた美貌の青年セブの治療を、祖母に代わってハバトが引き受ける。優しさにあふれたセブにハバトは次第に心惹かれていくが、ハバトは“自分が男”だということをいつまでもセブに言えないままでいた。このままでも、セブのそばにいられるならばそれでいいと思っていたからだ。しかし、功を立て英雄と呼ばれるようになったセブに求婚され、ハバトは喜びからついその求婚を受け入れてしまう。冷静になったハバトは絶望した。 “きっと、求婚した相手が醜い男だとわかれば、自分はセブに酷く嫌われてしまうだろう” そう考えた臆病で世間知らずなハバトは、愛おしくて堪らない英雄から逃げることを決めた。
【堅物な美貌の英雄セブ×不憫で世間知らずな少年ハバト】
※セブは普段堅物で実直攻めですが、本質は執着ヤンデレ攻めです。
※受け攻め共に、徹頭徹尾一途です。
※主要人物が死ぬことはありませんが、流血表現があります。
※本番行為までは至りませんが、受けがモブに襲われる表現があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる