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バザー開催 2
しおりを挟む身長の話題で凹んでいたルカだが、品物を並べ終えてバザー開催の時間が近付くとキリッとした顔になった。
どうやら最終チェックに入ったようだ。
「---うん、立派な出来だよ! 凄いね。きっとたくさん売れるよ!」
そういって子供達に笑顔を見せた。
「ありがとう! 一緒に頑張って売ろうね!」
「じゃあ、売り子はこっち、お会計係はこっちね」
「「「はーい!」」」
それぞれ役目も決めていたらしく、皆スムーズに移動した。
「ルカ様はこっちね! アタシとユーリの間に入って!」
「心配しなくても、俺達がフォローするからな!」
「ありがとう、よろしくね」
ユーリと呼ばれた男の子とアリーという女の子に挟まれてにっこりと笑う。
お会計係は14歳の年長のトーマとすぐ下のミリーという女の子。
あとの歳の小さい子達は周りで声をかける宣伝係だ。
シスター達は見守りながらフォローするだけのようで、基本的には手は出さないそうだ。
「それじゃあ、もうすぐ開催するよ! 皆、頑張ろう!」
「「「おー!!」」」
トーマのかけ声にルカも混じって大きな声を出す。
「「「いらっしゃいませー! 恒例のバザーの開催でーす! 皆さん、見ていって下さーい!!」」」
子供達の声を合図に、いつの間にか集まっていた人がわらわらとやって来た。
「こんにちは。いつも綺麗に並んでるね。今日は何がお勧めかな?」
声をかけてきたのは年配のお爺さん。
孫を見る目で見つめている。
「こんにちは、いつもありがとうございます! 今日は刺繍入りのハンカチと、特別に焼き菓子があります! とっても美味しいの! ね?」
そういってアリーがルカの方を見た。
お爺さんが何気に振り向くと、気付いていなかったのか、ルカを見てぽかんとした。
「・・・こんにちは。僕が焼いたんですけど、おひとついかがですか?」
「・・・・・・ま、」
「ま?」
「・・・・・・稀人様?! 何故ここに?!」
お爺さんが叫んだので、周りにチラチラといた人が一斉に振り向いてやっぱり固まった。
「えー、と・・・何か買ってくれると、嬉しいな・・・って。あの?」
「「「皆、元に戻って---!」」」
子供達の叫びにお客さん達が我に返った。
「・・・っは! 一体何が・・・・・・?!」
「もう! ルカ様はルカ様なの! アタシ達と一緒にバザーのお手伝いなの! 普通にしてあげて!!」
「そうそう、ただの小さい大人なんだから!」
「・・・・・・小さい・・・大人・・・えええ・・・」
「トーマ、言い過ぎ! ルカ様、凹んじゃったじゃないの! 小さいけど大人なんだから!」
「・・・・・・小さいけど・・・・・・」
「アリー、更に凹ませてどうするんだ」
何やら場がおかしな事になってきて、誰ともなしに、ぷっと笑う声が漏れていつの間にかソレが広がっていった。
「ふふ、ハハハ! ・・・確かに、稀人様だけど皆と同じだね。うん、ごめんね。ルカ様もすみません」
そういって頭を下げられて、慌てて言う。
「あの、普通で良いので! ただの、ヒューズのお嫁さんって認識でいて下さい・・・僕、見た目でもこの子達と同じくらい(の体格)なので、混じってても気付かれなくて・・・」
自分で言ってて、ちょっと落ち込む。
もう、これ以上大きくはならない。
この子達にもあっと言う間に追い抜かれるのを想像してしまった。
「ルカ様はもう大きくならないんだってさ」
「ユーリ!!」
「・・・・・・うん、ソウダネ・・・」
ルカはめちゃくちゃ死んだ目をした。
静観していたヒューズ達は再び思った。
コレは今日はうんと甘やかして慰めてあげようと。
「・・・最後にトドメを刺されたな、ルカ」
「・・・・・・子供って、本当に残酷だな」
「無邪気に心を抉ってくる・・・」
「・・・・・・スミマセン、子供達がスミマセン・・・」
・・・せめて自分達大人は空気を読んであげよう。
3人と院長はその後、沈黙を守った。
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