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バザー開催 1
しおりを挟む子供達に連れられて行った先には、色々なバザー品が纏められていた。
子供達が運びやすいように小分けにされている。
孤児院の子達は、今はいないが下は0歳から上は成人前の15歳まで。
魔獣や事故、病気などで親や身内が亡くなったせいで保護者のいなくなった子供がほとんどだそうだ。
中には少数だが、望まぬ子や、親が経済的に育てられないからと預けられることもあるそうだ。
成人までに養子になったり、就職先を見つけたり、冒険者になる子もいるそうだ。
「冒険者・・・僕、見たことないなぁ」
「そうなの? ココも魔獣や魔物がいっぱいいるから、冒険者も結構いるよ?」
「ああ、でも、ココは辺境騎士団様が強いからあんまり目立たないのかも!」
「---へえ、そうなんだ? ヒューズ達ってやっぱり凄いんだね」
そんな話をしながら荷物を運ぶ。
「稀人様、品物を並べるから手伝ってくれる?」
「良いよ。あと、僕のことはルカって呼んでね?」
「えー、うん、分かったルカ様!」
「様は要らないんだけどな」
苦笑しながら、まあ良いかと思い直す。
子供だから名前呼びをすんなりしてくれたが、大人は恐縮しちゃって呼んでくれない。
これでも十分だ。
困らせたい訳じゃない。
子供達に頼まれて言われた荷物を棚まで持っていくと、慣れているのか、手際良く綺麗に並べていく。
「どこに何を並べるのか決めているの?」
「うん。商品を見て、どこに置けば目に付くかなとか考えておいたの!」
「品物の並べ方も自分達で考えたの?」
「うん! 綺麗に並んでるでしょう? どう並べれば綺麗に見えるかなって、皆で話したの」
「立派だね。君達は何でも相談できる仲間がたくさんいるんだね」
「うん。仲間っていうか、家族みたいなものだよ!」
「「「ねー!」」」
和気あいあいと仲良く並べていく子達を眩しそうに見つめるルカ。
自分には家族がいたが、形だけで、こんなに楽しそうにする事はなかった。
かつての自分だったら、羨んだだろう。
妬ましかったかもしれない。
絶望感に苛まれたかも・・・。
でも今は本当の家族がいる。
友達が、仲間がいる。
これからも増えることはあっても、きっと減ることはない。
そんな事を改めて実感した。
「---ルカ、楽しそうだな」
「そうだね。良かった」
ヒューズとダグラスがルカの様子を窺っていると、子供達に混じって品物を並べて笑っていた。
「なんか、こうしてみると子供だな」
「あの子達に混じっていると、小柄な大人じゃなくて普通に子供に見える。ていうか、最年長の14歳の男の子より小さくないか?」
「・・・・・・本人には言うなよ。気にする」
なんて会話をしていたら。
「ルカ様って18歳なんでしょ? 小さくない?」
「俺より小さいよね?」
「アタシと変わんないねー!」
「・・・・・・そうだね・・・ヒューズの10歳の時の服でサイズピッタリだったなあ・・・」
「でも可愛いよ!」
「これから伸びるって!」
「そうそう、気にしないで!」
・・・・・・ごめんね。
たぶんもうそんなに伸びないと思うよ。
今までの成長具合でみると、良くてあと数センチ・・・。
そんな事を考えながら言った。
「僕の種族は元々小柄な人が多いんだ。その中でも大きい方なんだよ。だからもう伸びないと思うよ」
苦笑しながら応えていたルカを見てヒューズ達は・・・。
「子供って、残酷だよね」
「・・・・・・悪気はないんだが・・・」
「ルカ、気にするな・・・」
あとでいっぱい慰めてあげようと誓うヒューズ達だった。
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