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いきなりの孤児院訪問 2
しおりを挟む神殿で祈った後、隣の孤児院に行くと、すでにバザーの準備が始まっていた。
「神殿の入口の側に低い棚が並んでいたでしょう? あそこに色々な品物を並べて売るのです」
「神殿は場所を提供するだけなんですか?」
「ええ。その代わり、売り上げは全て孤児院の物になりますよ。子供達も、自分達で工夫して、どうやったらたくさん買って貰えるのか、とか考えてやっていて勉強になるようですよ」
スワロス神官長がそう言って教えてくれた。
なるほど。
子供達が大きくなって仕事を探すときに、こういう経験が生きるのだな。
そういう意味では、僕も似たようなものだ。
衣食住の心配がないぶん、この子達より恵まれていたんだな・・・。
うん、子供達の為にも頑張ろう!
「院長、おはよう。準備はどうかな?」
「これは辺境伯様方、おはよう御座います。ええ、順調ですよ。今日はお天気もよくて助かります」
「そうだな。今日は一緒に売って貰おうと思って、焼き菓子を持ってきたんだ。一緒に置いてくれるか?」
「・・・! あのお菓子ですか?! ええ、ええ、是非! お客様もきっと喜びますわ!」
院長も他のシスターも大はしゃぎだ。
そんなに美味しいのかな?
ごく普通のお菓子なんだけどな。
「それで、今日は助っ人を連れて来たんだ。良かったら仲良くしてやってくれるか?」
「まあまあ、どなたでしょうか。大丈夫ですよ、どなたでも仲良く出来ますから、うちの子達は!」
ねー?
と、子供達に声をかける。
「良かった。じゃあほら、ルカ」
イライアスにそう言われて、後ろからおずおずと顔を出すルカ。
念の為にと被っていたフードを取って挨拶をする。
「・・・はい。あの、初めまして。ルカと申します。今日はよろしくお願いします。・・・あの?」
「「「・・・・・・」」」
院長達がポカンと固まってしまった。
「・・・まあ、そうなるよな」
ダグラスはうんうん頷いている。
ヒューズは黙ったままだ。
「えーと? 院長さん達?」
ルカが再度、声をかけると、我に返って叫んだ。
「---はっ! い、今、幻覚が・・・!!」
「そそっ、そうですわ!! 稀人様がこんなところに・・・!」
「あの、いますけど」
「「「まさか、そんな---?!」」」
院長達がム○クの叫びのようになった。
叫び声を聞いた子供達は何事かと一斉に振り向いて・・・。
「あ---!! 稀人様だ---!!」
「本当に真っ黒だ---、凄ーい!」
「何しにきたの?!」
「ああ、バザーのお手伝いだよ。一緒に良いかな?」
「「「「もちろん!!」」」」
「ねえ、こっちこっち!」
「あ、待って、今行くから。ヒューズ、ローブお願い!」
「ああ、行っておいで」
わいわいと子供達に連れられてルカが去った後、再び我に返る院長達。
「わわわ、どうしましょう?!」
「とにかく子供達のところへ!」
などなど言いながら駆けていった。
「子供達の方が受け入れやすいな」
「ルカ、楽しそうで良かった」
「---スミマセン。取り乱しました・・・」
院長が顔を赤くしながら頭を下げた。
「いやいや、こちらこそ急にすまなかった。あまりルカを外に出してやれぬのでな、今日がバザーと聞いてサプライズしたのだ」
「今日は一日、頼むよ」
「畏まりました」
「いつも通りに、特に畏まらずに子供達と同じように接してやってくれ。まあ難しいだろうがな。・・・彼はあまり子供らしいコトをしてこなかったようなのだ。せめて今だけでも、思い出に残るようにな」
「・・・・・・そういうことでしたら。不敬とかは無しですよ?」
お茶目にそう言って、院長もバザーの場所に向かって行ったのだった。
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