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いきなりの孤児院訪問 1
しおりを挟む「ねえねえ、どういう事なの、ヒュー?」
昨日、焼き菓子をたくさんって言われて作ったのは良いんだけど、今日外出っていうのは聞いてないんだけど?!
「今日外出って予定言われたっけ? 僕が聞き忘れてた? ねえねえ?」
ルカが思わずヒューズの胸元を掴んで揺さぶる。
無意識なのだろうが、ルカにしては珍しく手荒な動きなので結構混乱していると思われる。
もちろんヒューズはこれぐらいではびくともしない。
そんなルカの行動に笑いを堪えつつ、イライアスが説明をした。
「ルカ、ルカは何も知らないはずだよ。皆で内緒にしていたからね。ああ、仲間外れとかじゃないよ。驚かせようと思って黙ってたんだ」
「そうそう。実際、驚いたろう? ヒューズに黙ってて貰うの大変だったんだぜ?」
ダグラスの言い様に納得。
ヒューズは普段の氷のような無表情は何処へやらってくらい僕の前ではデレデレだからなあ。
「・・・そっか、良かった・・・。何か粗相でもしたのかと思った」
「ルカに限ってそんな事は無い。あっても気にしないが」
「気にしてよ!」
相変わらず砂を吐きそうな溺愛ッぷり。
ダグラス達もゲンナリした。
「で、結局、どういう事?」
やっと落ち着いたルカにイライアスが説明をする。
「実は今日はな、孤児院でバザーをする日なのだ。だから神殿でアルカエラ神にお祈りしたあと、隣の孤児院に行ってバザーの手伝いをしたらどうかと思ってな」
「時々、焼き菓子を孤児院に差し入れしたと言ったろう? アレ、かなり好評でね、今日はルカのを売るけど、後で作り方を子供達に教えて欲しいって頼まれててさ」
「そうなの? 特別な材料なんて使ってないけど・・・じゃあ、頑張って売って、レシピを教えないとね!」
そういうことなら幾らでも協力しちゃうよ!
「ひとまず、神殿な」
「うん」
そうして神殿で神官長のスワロス様にお会いして、アルカエラ神に祈りを捧げる。
「お久しぶりです、アルカエラ神様。今日は孤児院のバザーだそうですね。僕、頑張ってお手伝いします。見守って下さいね」
〈本当に久しぶりだよ! もっといっぱい来てよ! ・・・そうだ、ルカにこれあげるから、何処でも良いからソレに祈って? そうしたら何時でも行くよ!〉
そう言って神殿の紋章を象ったペンダントヘッドをルカの手の中に落とした。
〈指環を通してたネックレスにかけておくと良いよ。そうそう、この後のバザーもちゃんと見てるから安心して。頑張ってね!〉
「ありがとうございます!」
〈じゃあね〉
相変わらず言うことを言って消えてしまった。
「---だって。良かったね、皆」
どうやらこれで、ここまで来なくても何時でもお祈り出来るらしい。
もちろん神殿にもマメに来るつもりだけどね。
「相変わらず凄いな、アルカエラ神」
「さすが神様」
「良かったな、ルカ」
神官長にも微笑ましい目で見守られながら、併設された孤児院に向かうのだった。
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