39 / 50
帰郷
しおりを挟む国王陛下の謁見も済み、王都観光も楽しんで帰宅の途についた。
行きに寄ったタイラー子爵家に再び滞在して、王都でのあれやこれやの土産話を語って大盛り上がりだった。
その後も順調に進み、およそ10日ぶりに辺境伯領へと帰ってきたのだった。
「「「お帰りなさい」」」
邸に着くと、義兄夫婦と甥っ子が出迎えてくれた。
使用人達も総出で、騎士団も手の空いてる人達が集まっていた。
僕は思わず涙ぐむ。
ここに帰ってきた。
僕の居場所はここで、この家に帰って来て良いんだって、改めて認識できて・・・。
「---ッヒューズ、ありがとう・・・僕を見つけてくれて・・・・・・僕を愛してくれて、お嫁さんにしてくれてありがとう」
「俺の方こそ・・・・・・ここに来てくれてありがとう。俺を愛してくれてありがとう」
そういって顔を寄せて口付けを・・・・・・。
「そういうのは二人きりの時にやれ!」
バシッと音がして、ヒューズが呻いた。
僕はハッとして周りを見渡した。
使用人達も騎士団もあらぬ方向を向いている。
義兄夫婦と義父様、セバスも目を逸らしている。
だが甥っ子はガン見していた。
そしてキラキラと目が光っている。
義兄夫婦、子供の目も塞いで下さい!
「---!!」
ダグラスが止めてくれなかったら、またもや公衆の面前で恥ずかしいことになるところだった!
・・・・・・いや、ちょっと遅かった?!
いやいや未遂だから!!
なんて顔を赤くしたり青くしたり忙しないルカを抱え上げて平然と邸に入っていくヒューズ。
ルカは両手でしっかりと顔を隠していたが、耳や首筋は真っ赤だった。
皆はそれ以上はツッコまずに、ほのほのと温かく見守っていたのだった。
旅装を解いて軽装に着替えると、ヒューズはルカの唇に軽く触れるだけの口付けをして言った。
「---我慢出来なくなるから」
「---! うん・・・」
は、恥ずかしい。
何とか落ち着いてサロンへ行くと、他の皆が歓談していた。
「おお、着替えたのか。疲れたろう? ゆっくりしなさい」
「ありがとう、義父様。大丈夫、皆にお土産も渡したいし。セバス、お茶貰える?」
「畏まりました。疲れが取れるように蜂蜜を多めに入れましょうね」
「! ありがとう」
蜂蜜たっぷりの紅茶、好きなんだよね。
僕がほくほく顔をしていると、皆はにこにこ顔だ。
僕は本当にここに来て幸せだな。
もう、向こうの家族の顔も思い出さない。
僕の家族はココにいるから。
「---それでね、王城ではね・・・」
「・・・・・・ええ! そんなことが?!」
「あの時のルカ、格好良かった!」
「ふふふ、照れるなあ・・・・・・」
なんて、王都の話で盛り上がる。
これからどんな楽しいことがあるのかな?
ヒューズもいるし、義父様やダグラス、義兄様達もいる。
騎士団や使用人達も。
僕は今はたくさんの人に囲まれ、愛されているから、心から笑えるんだ。
まだまだ、これからたくさんの思い出を作ろうね、ヒューズ。
270
お気に入りに追加
1,253
あなたにおすすめの小説
恐怖症な王子は異世界から来た時雨に癒やされる
琴葉悠
BL
十六夜時雨は諸事情から橋の上から転落し、川に落ちた。
落ちた川から上がると見知らぬ場所にいて、そこで異世界に来た事を知らされる。
異世界人は良き知らせをもたらす事から王族が庇護する役割を担っており、時雨は庇護されることに。
そこで、検査すると、時雨はDomというダイナミクスの性の一つを持っていて──
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
スキルも魔力もないけど異世界転移しました
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!!
入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。
死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。
そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。
「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」
「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」
チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。
「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。
6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。
気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた
しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される???
家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。
R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。
現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。閲覧ありがとうございます。
(第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)
(第2章の改稿が完了しました。2024/12/18)
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる