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王都観光 市場でお買い物

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ケーキでお腹が膨れたルカは、ヒューズと手を繋いで市場へと歩いていた。

道すがら、可愛い雑貨屋さんを覗いたり、見慣れない屋台で売られている飲み物をヒューズに聞いたりして、あっと言う間に今日の一番の目的地に着いた。

「うわあ・・・凄い人・・・」

まずルカが驚いたのは、買い物客の多さだった。
道の両脇に様々なお店が建ち並び、そこに来る買い物客の多いこと。

これ、手を離したら絶対迷子になるヤツだ。

思わず震えてヒューズの手をギュッと握り返してしまった。
それに気付いたヒューズはルカをヒョイッと片腕で縦抱っこをした。

「あわわ・・・っ」

びっくりしてヒューズの首にしがみつく。

「迷子防止にずっとこうしてような」
「う、ん。ありがとう、ヒュー。でも重くない?」
「羽根のように軽いから問題ない」
「・・・実際に言う人、いるんだ・・・」

ルカは恥ずかしかったが迷子になって大騒ぎになるよりもいいかと諦めた。
もちろん、ヒューズにギュッと抱きつける事が嬉しかったのだが。

抱っこはされたが、さすがに護衛騎士達が周りを固めて人混みを進んでくれた。
ルカは抱っこで高くなった視線であちこち物珍しく見回していた。

「凄いね。ヒューは何時もこんな風に見えてるんだねえ。羨ましい!」

ルカはこちらでは子供サイズなので、立っていると周りが大きすぎて何も見えないのだ。

瞳がキラキラと輝いているのが誰の目にも明らかで・・・。

その様子を買い物客や店の店員が微笑ましそうに見ていたのだが、ルカはキョロキョロしていて気付かなかった。



市場は急に現れたお忍び貴族らしい集団にザワついていた。

広場でひと騒動あったらしいと聞き、その後、人気の喫茶店でも騒ぎが起こったと耳にした。

それから間もなく現れたこのお忍び集団だ。

騒ぎは確実にこの方達だろう。

しかしよく見れば、辺境伯家の紋章に稀人らしき小柄な美少年。

抱き上げ護っているのは噂の辺境伯騎士団長。
そしてお互いの色を纏い、それぞれの薬指には婚姻の指環・・・。

申し合わせたように市場全体が一つになった。

『彼の方方を煩わせないように見守ろう!』と。



そして現在、周りの人達の見えない協力のお陰もあって順調に市場を見て回るルカ達。

ヒューズはルカが目にしたモノを目聡く確認しては遠慮なく購入していった。
たぶん、ルカはそこまで欲しいわけでは無いと思うが。

「ねえ、ヒューズ。邸や騎士団の人達に何かお土産買って帰りたいんだけど、日保ちする食べ物とかあるかなあ?」
「うーん、ドライフルーツとか?」
「ああ、ここで珍しいドライフルーツや木の実を買って帰って、邸でクッキーやケーキに混ぜて焼けば? 人数が人数だし、その方が喜びそうだよ。ルカ、時々作ってたよな?」

ダグラスがそういってきた。
確かに良いかもしれない。
それなら焼きたてを食べて貰えるし。

「ありがとう、ダグラス! じゃあそうしよう。ヒュー、一緒に探してくれる?」
「当然だ。よし、まずはそういう店を探そう」

そういって見つけたお店で大量に購入して、タウンハウスに届けて貰うように頼んだ。

その時に見かけた屋台で気になった食べ物をたくさん購入したので、広場の休憩スペースに移動して、皆で食べようということになった。




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