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王都観光 初日 1
しおりを挟む「準備出来たか?」
先に支度を済ませたイライアスがダグラスと共に待っていた。
「遅くなってすみません、義父様、ダグラスさん」
「お待たせしました、父上、ダグラス」
「本当だよ。どうせまたいちゃいちゃしてたんだろう?」
「う・・・」
「まぁ、否定はせん」
ダグラスに突っ込まれてバツが悪そうなルカとは対称的にケロッとしているヒューズ。
「まあまあ。これから出かけるんだ、浮かれても仕方がないだろう。それじゃあ行こうか」
今日は義父様、僕、ヒューズとダグラス、セバスの他に、私服姿で騎士さんが5人付くそうだ。
ヒューズとダグラスは護衛が要らないくらい強いので、離れたところから見守っているとのこと。
アレだよね、前の世界でのSPみたいなこと。
黒ずくめじゃあ無いけど。
ご苦労様です。
よろしくね、と挨拶しておいた。
直ぐそこに出かけるのに仰々しい警備が付くのは何処の世界でも身分の高い人あるあるだ。
極力迷惑をかけないようにしよう。
馬車で、時間にして30分くらい。
ゆっくり進んで着いたのは馬車置き場。
向こうでいう駐車場だね。
街中は人通りも多くて危ないので、馬車が必要な用事が無ければ大抵はここに停めて歩いて散策するんだって。
だからSPな護衛が付くんだね。
「ルカ、俺の手を離すなよ」
「うん。はぐれたら絶対迷子になる自信しか無い」
それくらい人が多くて、街も大きい。
もちろんあちらの世界の方が混雑していたけど、保護されてから辺境伯領を出たことが無かった僕は、ここの住人の人混みに慣れていない。
整備された大きな道を歩行者や乗り物に分けて進んでいたのに慣れていた僕は、たくさんの人や物が入り乱れて混沌としたこの場所をどう進めば良いのか、全く分からずにいた。
だが、立ち止まっている方が危ないし、何より邪魔だった。
ヒューズに促されて歩き出した僕にダグラスが声をかけてきた。
「びっくりした? 辺境伯領よりももっと人が多いもんな」
「うん。凄い人で、何処をどう歩けば良いのかって感じで・・・僕のいたところは人や乗り物は区分が別れてて、こんなにごちゃごちゃと歩かないから・・・」
「へえ、決まりがあるんだ?」
「歩行者専用道路は乗り物は入ってはいけなくて、破れば相応の罰を受けるよ」
「ああ、こちらも一応、馬車は道の左側を通行する決まりがある。間違ってぶつかると大変だからな」
でもそれくらいなんだって。
ずいぶん緩いね。
でもそれなら、馬車が来たときには気を付けよう。
少し歩くと、大きい噴水のある広場に出た。
待ち合わせは大抵ここでするんだって。
「ここから大まかに東西南北に店構えが違っているんだ」
「俺達の最初の目的地は南にある市場だ」
「市場! どんな物があるのかな?」
「それは着いてのお楽しみだ。王都にしかない物もある」
「あの、何か買ってもいい?」
ルカが心配そうに上目遣いでお強請りをする。
ぐっ!
可愛い---じゃ無くて!
「もちろんだ。気に入った物を購入すると良い。値段とか気にしなくて良いからな」
「ええ? あんまり高いのは買わないよ?」
「大丈夫、ヒューは甲斐性無しじゃ無いからね。せっかくだから、うんと甘えてお強請りすると良い。喜ぶぞ」
ダグラスがコソッと耳打ちした。
そうなのかな?
じゃあ今回はヒューにうんと甘えようっと。
とりあえずは繋いでない方の手でヒューズの腕をぎゅむっと抱き締めた。
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