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王都観光 準備中

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セバスを拾って城を出てタウンハウスに戻った一行は、普段着に着替えてホッと一息吐いた。

「いやあ、王太子の暴走っぷりがあそこまでとは・・・」

そう口火を切ったのはイライアス。

「あんなに馬鹿だったか?」
「おい、仮にも王族だぞ。不敬だ」
「その言いっぷりがすでに不敬」
「それ程でしたか?」
「アルカエラ神が怒るくらいにはね」

ダグラスもヒューズもセバスですらこの言いよう。
まあ、さすがに僕も頭にきたけどね。

「でもお陰でこちらに不干渉という言質を取れたからね。これで煩わしさが減る。良かった良かった!」
「そうだな。それよりも今日はゆっくりして、明日の観光の準備をしないと」

そうだよ!
楽しみにしてたんだ!

「どういうところに行く予定なの?」
「それは内緒だよ。楽しみは取っておかなくちゃね?」

ダグラスがいたずらな顔をしていた。
皆は詳しいのかな?

「僕だけ(王都)初体験?」

首を傾げると、ヒューズが鼻を押さえてダグラスとイライアスは天井を仰いだ。
セバスは普通だったけど。

「・・・ルカの言葉のチョイス・・・」
「---妄想が・・・!!」

ヒューズとダグラスがブツブツと言ってるがよく分からない。

「---アイツらは気にするな。ケーキ食べるか?」
「はい! あ、でもお城で食べちゃった。食べ過ぎだよね・・・?」
「いやいや、もっと体重を増やして欲しいくらいだよ。痩せてるんだから」
「---じゃあ、小さめのを、セバス」
「畏まりました」

そういってケーキを食べようとした時に正気に返ったヒューズがルカに手ずから食べさせていた。

概ね何時もの光景に戻ったようだ。

それからルカはやはり疲れが出て、部屋で横になるとあっと言う間に眠ってしまった。


「ルカも疲れたよな」
「気疲れだろうがな。でもまあ良かった」
「明日は予定をゆっくりに変更しよう」
「余裕を持たせないと、ルカが疲れるからな」

そういってテキパキと予定を組み直して色々と手配をした。

「楽しんでくれるといいな」
「ルカなら何にでもあの瞳をきらきらさせて喜ぶんじゃないか?」

ヒューズの言葉にダグラスは言った。

「確かに」

イライアスやセバスも想像して笑った。
何より辺境伯領から出るのでさえ今回が初めてのルカは、出発してからずっとキョロキョロと目を輝かせていた。

本人はそういうつもりはないのだろうが、小動物のようだった。
可愛らしくて、皆、密かに笑っていたのだ。

「ルカ様がお目覚めになりました」

使用人が告げに来たので、お開きにしてヒューズが部屋へ向かう。

ノックをし、声をかける。

「ルカ、ヒューズだ。起きたのか?」
「・・・ああ、うん。入っていいよ」

部屋へ入るとベッドから立ち上がる所だった。
側へ寄ってエスコートする。

「・・・・・・よく眠っていたな。疲れたか」
「うーん、思ったより疲れてたみたい。寝たらスッキリしたよ。ごめんね?」
「いや、良いんだ。明日の準備もしていたしな」

ヒューズがクロゼットから服を出し、皺になった服を着替えさせて食堂へ連れて行った。

ケーキを食べて眠ってしまった為にお腹の空いてないルカは、スープとパンくらいしか食べられず、料理人達に申し訳なさそうにしながら部屋へと戻って行った。


その後、という名の閨をガッツリしっぽりされたルカは、翌朝、きゅるきゅるお腹を鳴らして食堂へ来て、真っ赤になりながらヒューズに給餌されていた。

それをイライアスを始め、使用人や料理人達が生温かく見つめていた。

「お腹いっぱいにしてしまうと、街で食べられなくなるからこの辺で止めておこうか」
「はぁい。朝の御飯も美味しかったです。ありがとうございます」
「とんでもないことです! ありがとうございます」

にっこり笑って御礼を言う。
料理人達もにこにこだ。

「では、支度が調ったら出かけるから、準備を頼む」

イライアスの言葉で、それぞれ準備を始めた。
もちろんルカはヒューズとセバスが準備してくれた。

裕福な家の御子息っぽい服装だった。
ヒューズもお揃いだ。

これだけですでにルカのテンションは上がっていた。

目に見えてわくわくしている様子が可愛らしくてヒューズとセバスはほっこりしていた。






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