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国王陛下と王太子 2

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翌朝、早くからお風呂に入れられて磨き上げられたルカは、身に着けている衣装こそ男性の物だが、さり気なく散りばめられたレースやフリルで中性的な容貌が更に際立っていた。

ここふた月ほどで伸びた黒髪のサイドを丁寧に編み込んで、顔がスッキリと見える。

薄化粧を施した顔は見ようによっては男装の麗人だった。

「---ああ、ルカ、綺麗だ」
「ヒューズも格好いいよ! さすが僕の旦那様だね!」
「---っ抱き締めたいが、衣装が崩れる・・・! 口づけしたいが化粧が崩れる・・・っ!」
「はいはい、さっさとエスコートして馬車に乗り込む!」

収拾がつかなくなったヒューズをうまく誘導して馬車に乗り込み、タウンハウスをあとにした。

「行ってきます!」

ルカは窓から使用人達に手を振った。



「---さて、30分もすれば王城に着く。良いか、とにかくルカはヒューズにくっ付いていろ! ヒューズも絶対に、指一本も触れさせるな。不敬と言われようと払いのけて良いからな。はそれが許される立場だからな」

イライアスが強調する。

「そうだよ、ルカ。稀人ってだけでも王族と同等に扱われるのに、アルカエラ神の愛し子ってなったら王族よりも上の立場だからね! 毅然と振る舞って良いんだからね!」

ダグラスも力説している。
どちらかというとという立場のほうがヤバそうだ。

「「後はとにかくヒューズといちゃいちゃしてれば良いからな!」」

イライアスとダグラスがハモって言った。

「---はい、分かりました・・・」

義父様とダグラスさんの勢いに押され気味なルカだった。

馬車の中でヴェールを渡されたルカは、王城の手前で被るように言われて首を傾げる。

「ルカは目立つからな。陛下との謁見前にその姿をむやみにさらさない方が良い」
「---と言うのは建前で、単にルカを周りのヤツらに見せたくないだけだ」
「ヒューズの醜い独占欲だな」
「煩い」
「・・・ありがとう、ヒューズ!」
「「そこで御礼を言うルカも大概だな・・・」」

二人は呆れていた。


そんな話をしているとあっという間に着いた。

城門の前でイライアスが召喚状を提示し、門衛が中を検める。

その後に馬車の中を覗くと、ヴェールを被った人影が一つ。
確認のために捲って貰おうとした門衛にイライアスがサッと口を挟む。

「彼は『稀人』なのだよ。これから陛下に謁見するので、顔を見せるわけにはいかないのだが・・・そうだね、髪色ぐらいは良いかな? ヒューズ?」
「父上、髪だけですよ。・・・ルカ、良いか?」
「私は構いません」

涼やかな声で応えた『稀人様』はほんの少しヴェールをあげてその黒髪を見せた。


---何とも色気漂う仕草に、門衛は顔を真っ赤にして固まったがイライアスに声をかけられハッとして城内へ促す。

パカパカと馬はゆっくり進んでいった。


「---あの門衛、鍛錬がなってないな」
「全くだ。あれくらいで動揺しおって」
「いや、あの、辺境伯領と比べなくても・・・」
「ルカは優しいなあ」

最後のヒューズの言葉はちょっとズレているが、概ね穏やかに入城出来てほっとした。

ロータリーでは近衛騎士と陛下の側近の一人、そして侍従長が出迎えていた。

到着して最初にイライアスが、次にダグラス、そしてヒューズと降り立ち、ヒューズのエスコートで最後にルカが降りた。

ちなみにセバスは御者台に御者と一緒に座っていて、すでに降り立っている。

ヒューズにエスコートされて優雅に降り立った『稀人様』はヴェールでその顔を隠しており、容貌はうかがい知れなかったが身に纏う気品が高位貴族のようで、近衛騎士達は一層ビシッと背筋を伸ばした。

「お待ちしておりました、稀人様。私、国王陛下の側近をしております、サンクス・フレドリックと申します。こちらは近衛騎士のルベールとタングート、侍従長のサルエルです」

イライアスが代表して挨拶を交わす。

「お出迎えご苦労様です」
「控えの間にご案内致します。こちらへどうぞ」

促されてぞろぞろと歩いて行く。
必然的に一番小さいルカに合わせてゆっくりになる。

近衛騎士達は、まさか稀人様がこんなにお小さい方とは・・・と内心驚きながらも、身のこなしや高い身分の者にも動じない事から、元のお生まれが高貴なお方なのだろうと察した。

そもそも、稀人様の情報がほとんど無い状態での召喚だっただけに、今日の謁見は荒れるぞ・・・と戦々恐々としていた。

















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