20 / 50
王都までの道のり 3
しおりを挟む
次の日も順調に進み、日が傾いてきた頃にリリスの街に無事着いた。
否、ヒューズはあまり無事とは言えなかった。
案の定、テントの中で寝惚けたルカにピーな事やピーな事を強請られたようで、耐えるのに必死で寝不足気味だった。
馬車の中でルカに心配されていたが、当人は憶えておらず、ケロッとしているのがまた笑いを誘っていて、ヒューズとルカ以外は含み笑いをしていた。
「---何か?」
ルカが聞いても皆笑って口を濁すばかりだった。
それ以外はほぼ順調に事が運び、現在に至る。
リリスの街の領主であるタイラー子爵が夫人と共に出迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました。お待ちしておりました、ノースライナ辺境伯殿」
「久しいな、タイラー子爵。今日は急な申し出を受けてくれて助かった」
「イヤイヤなんの、私と卿の仲ではないですか。それにしてもいつもより大人数でどうしたので?」
気の置けない仲のタイラー子爵なら大丈夫だろうと話をする事にした。
「それは中で・・・取りあえず挨拶を。ヒューズ、こちらへ」
「はい、父上。・・・ルカ、足元に気を付けて」
「ありがとう、ヒューズ」
そういって馬車から降りたルカにポカンとする子爵家の面々。
使用人も呆気にとられて頭を下げるのを忘れて固まっていた。
「ごぶさたしております、ヒューズです。こちらはミドウ・ルカ。私の妻です」
「初めまして。ノースライナ・ミドウ・ルカと申します。少し前にヒューズと婚姻しました。よろしくお願い致します」
「---ということなんだが、大丈夫か? タイラー卿」
挨拶にも固まってしまい、イライアスが声がけをするが、暫く微動だにしなかった。
「---やっぱり、僕、迷惑だったかな」
「そんなことはない。びっくりしただけだよ」
「・・・そう?」
ルカが戸惑っているがヒューズに宥められて少しホッとしたようだ。
「---は、す、すまない! タイラー・エドワード子爵と申します。あの、こちらこそよろしくお願い致します。私の事はエドワードと。あの、ルカ殿と呼んでも?」
「はい、よろしくお願いします、エドワード殿」
当主のエドワードが復活したのに合わせて使用人も動きだす。
屋敷の中へ案内される。
護衛の騎士達は賓客用の別館へ案内されたようだ。
この後晩餐会が開かれ、騎士達は別館で別に食事をとるらしい。
いったんサロンへ通されてお茶を頂く。
ヒューズはルカとソファへ座り、隙間なくくっ付いていた。
信じられないモノを見る目で凝視していたタイラー夫妻だが、視線をイライアスに移すと、一言断ってから防音の魔法をかけた。
「---どういう事だ?」
気安い間柄なのだろう。防音をしたのでだいぶ砕けた口調に切り替わった。
しかし声音も顔もまだ動揺が窺える。
「まだ他言無用で頼む。実はな、王に謁見する事になったのだが、その理由が彼・・・ルカなんだ」
「・・・まさかと思うが」
「そのまさかだ。ルカは稀人なんだ。噂が王の耳に入ってな、今回その確認で召喚されたんだ」
「どうせ呼ばれるならいっぺんに済ませようとルカが言うので連れて来たわけだ」
視線を向けられたルカは営業用スマイルでにっこり笑った。
「---狙われるぞ?」
「だからさっきも言ったようにヒューズの妻になった。そもそも相思相愛だけどな。アルカエラ神からも祝福されているから引き離されたりしたらどうなるか・・・」
「---はあ?!」
「ルカはアルカエラ神の愛し子でもある」
「・・・・・・まてまて、情報過多!」
エドワードもエドワードの妻も頭が追いつかずに難しい顔をしている。
「とにかく、謁見が終わったらまた泊まらせて貰うことになるだろうから、よろしく頼むよ」
イライアスが軽く言ったが、エドワードは夜にでも詳しく聞きに来るだろう。
それでいい。
取りあえずはルカをゆっくり休ませたい。
否、ヒューズはあまり無事とは言えなかった。
案の定、テントの中で寝惚けたルカにピーな事やピーな事を強請られたようで、耐えるのに必死で寝不足気味だった。
馬車の中でルカに心配されていたが、当人は憶えておらず、ケロッとしているのがまた笑いを誘っていて、ヒューズとルカ以外は含み笑いをしていた。
「---何か?」
ルカが聞いても皆笑って口を濁すばかりだった。
それ以外はほぼ順調に事が運び、現在に至る。
リリスの街の領主であるタイラー子爵が夫人と共に出迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました。お待ちしておりました、ノースライナ辺境伯殿」
「久しいな、タイラー子爵。今日は急な申し出を受けてくれて助かった」
「イヤイヤなんの、私と卿の仲ではないですか。それにしてもいつもより大人数でどうしたので?」
気の置けない仲のタイラー子爵なら大丈夫だろうと話をする事にした。
「それは中で・・・取りあえず挨拶を。ヒューズ、こちらへ」
「はい、父上。・・・ルカ、足元に気を付けて」
「ありがとう、ヒューズ」
そういって馬車から降りたルカにポカンとする子爵家の面々。
使用人も呆気にとられて頭を下げるのを忘れて固まっていた。
「ごぶさたしております、ヒューズです。こちらはミドウ・ルカ。私の妻です」
「初めまして。ノースライナ・ミドウ・ルカと申します。少し前にヒューズと婚姻しました。よろしくお願い致します」
「---ということなんだが、大丈夫か? タイラー卿」
挨拶にも固まってしまい、イライアスが声がけをするが、暫く微動だにしなかった。
「---やっぱり、僕、迷惑だったかな」
「そんなことはない。びっくりしただけだよ」
「・・・そう?」
ルカが戸惑っているがヒューズに宥められて少しホッとしたようだ。
「---は、す、すまない! タイラー・エドワード子爵と申します。あの、こちらこそよろしくお願い致します。私の事はエドワードと。あの、ルカ殿と呼んでも?」
「はい、よろしくお願いします、エドワード殿」
当主のエドワードが復活したのに合わせて使用人も動きだす。
屋敷の中へ案内される。
護衛の騎士達は賓客用の別館へ案内されたようだ。
この後晩餐会が開かれ、騎士達は別館で別に食事をとるらしい。
いったんサロンへ通されてお茶を頂く。
ヒューズはルカとソファへ座り、隙間なくくっ付いていた。
信じられないモノを見る目で凝視していたタイラー夫妻だが、視線をイライアスに移すと、一言断ってから防音の魔法をかけた。
「---どういう事だ?」
気安い間柄なのだろう。防音をしたのでだいぶ砕けた口調に切り替わった。
しかし声音も顔もまだ動揺が窺える。
「まだ他言無用で頼む。実はな、王に謁見する事になったのだが、その理由が彼・・・ルカなんだ」
「・・・まさかと思うが」
「そのまさかだ。ルカは稀人なんだ。噂が王の耳に入ってな、今回その確認で召喚されたんだ」
「どうせ呼ばれるならいっぺんに済ませようとルカが言うので連れて来たわけだ」
視線を向けられたルカは営業用スマイルでにっこり笑った。
「---狙われるぞ?」
「だからさっきも言ったようにヒューズの妻になった。そもそも相思相愛だけどな。アルカエラ神からも祝福されているから引き離されたりしたらどうなるか・・・」
「---はあ?!」
「ルカはアルカエラ神の愛し子でもある」
「・・・・・・まてまて、情報過多!」
エドワードもエドワードの妻も頭が追いつかずに難しい顔をしている。
「とにかく、謁見が終わったらまた泊まらせて貰うことになるだろうから、よろしく頼むよ」
イライアスが軽く言ったが、エドワードは夜にでも詳しく聞きに来るだろう。
それでいい。
取りあえずはルカをゆっくり休ませたい。
312
お気に入りに追加
1,278
あなたにおすすめの小説

花屋の息子
きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。
森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___?
瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け
の、お話です。
不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。
攻めが出てくるまでちょっとかかります。

スキルも魔力もないけど異世界転移しました
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!!
入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。
死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。
そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。
「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」
「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」
チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。
「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。
6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

箱庭
エウラ
BL
とある事故で異世界転生した主人公と、彼を番い認定した異世界人の話。
受けの主人公はポジティブでくよくよしないタイプです。呑気でマイペース。
攻めの異世界人はそこそこクールで強い人。受けを溺愛して囲っちゃうタイプです。
一応主人公視点と異世界人視点、最後に主人公視点で二人のその後の三話で終わる予定です。
↑スミマセン。三話で終わらなかったです。もうしばらくお付き合い下さいませ。
R15は保険。特に戦闘シーンとかなく、ほのぼのです。


【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる