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婚姻の証
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「母の形見なんです」
そういって首から提げたチェーンを持ち上げると、大きさの違うペアリングが通されていた。
助けたときに首からチラッと見えていたプラチナのチェーン。それに指環がついてたのか。
チラッとセバスを見ると、小さく頷かれた。
そういえばセバスが清払していたが、セバスはその時に見ていたのだな。
「母は亡くなる前に、僕にこれを託しました。代々母の実家に伝わるモノだと。母は父とは政略結婚で愛はなかったようです。仮面夫婦でした。だからか、父は早々に他所に愛人を作って・・・」
ルカは辛そうな悔しそうな表情で。
「母亡き後直ぐに愛人と再婚して、僕と1歳違いの義弟を後継者にして僕を・・・外の家に政略結婚で婿養子に・・・・・・それを聞いて、家を飛び出したんです。その後は、昨日のあれです」
おめでたい空気が一瞬で重くなってしまった。
「あの、すみませ・・・」
「謝るな。ルカは悪くない。その父親がクズなだけだ。それよりも指環をくれないか?」
「・・・はい。じゃあヒューズのは僕が嵌めるね。僕のはヒューズが嵌めて?」
「は、嵌めっ・・・いやいや、これは指環の話で」
ブツブツ呟くヒューズの言葉に呆れている3人と意味が分かっていない一人。
神官長の咳払いでハッとしたヒューズが真面目な顔でルカの左手の薬指に指環を嵌める。
ルカもヒューズの左手薬指に嵌めた。
お互いに手を取り合い、どちらともなく誓う。
『共に生きることが互いの幸せ。愛し慈しむ事を誓う』
こうして今日、一組の夫婦が誕生した。
「じゃあ、早く邸に戻ってお祝いをしよう」
イライアスが軽い感じで言った。
そういえばもうすっかり日が傾いている。
「お祝いもそうだけど、ルカの身の回りの物を揃えたりとやることはたくさんあるよ」
「そうですな。取り急ぎ、服を仕立てませんと! 忙しいですぞ」
「騎士団の皆にも報告をせねば」
皆がわいわいと賑やかに話すのをキョトンと見ていたルカだが、おずおずと輪の中に加わっていった。
「あの、服はヒューズのを手直ししてくれれば構わないですけど・・・」
「それはそれで嬉しいが、古いし、ルカに似合うものを作って着せたい。それに職人達も仕事が増えて経済も回るからな」
ヒューズがそういうので、それもそうかとお任せした。
なにぶん、今までもいわれた物を身に着けていたので、個性というか自分の意見などなかったのだ。
興味もなくて、自分でも何がよくて何が好きなのか分かっていなかった。
ジッとヒューズを見る。
青みがかった銀髪に琥珀色の瞳。
ダグラスさんも同じ色だけど、瞳はペリドットに近い。
お父上の辺境伯は同じ銀髪だけど、瞳は金色に近かった。
「あ、でも、ヒューズの髪や瞳の色が好きかも・・・差し色で良いから入れてくれると嬉しいかな?」
ポツリと零した声に皆が反応して一瞬固まった。
あれ?
何かおかしかった?
『・・・・・・無意識だろうが、人たらしだな』
『お相手の色を身に纏う意味が分かっていらっしゃらない?』
『その服を贈られる意味も分かっていないのでは?』
『唯々諾々と従っていたというから、頓着していないだけでは?』
こそこそと話す4人に?を浮かべているルカ。
「・・・・・・ルカ。その、相手の色を身に纏う意味とかその辺の常識は向こうとは違うのだろうか・・・?」
「うん? ・・・・・・え、あ、ああ!」
うん。どうやら同じようだ。
思い至ったのか、首まで真っ赤に染まったルカを見てホッとした。
後でこの辺りも擦り合わせていかないと。
好いた相手に自分の色を纏わせた服を贈るのは、自分色に染めたい、というほかには自分が脱がせたいという願望もある。
閨を共に・・・・・・。
今夜はいわゆる初夜だ。
本当は着飾って結婚式をあげた後にやりたいが、婚姻はすでに認められた。
すまないが、俺はもう待てそうもない。
まあ、傷に障るから今夜はほどほどに・・・たぶん、そんなにはしないと、思う・・・。
そういって首から提げたチェーンを持ち上げると、大きさの違うペアリングが通されていた。
助けたときに首からチラッと見えていたプラチナのチェーン。それに指環がついてたのか。
チラッとセバスを見ると、小さく頷かれた。
そういえばセバスが清払していたが、セバスはその時に見ていたのだな。
「母は亡くなる前に、僕にこれを託しました。代々母の実家に伝わるモノだと。母は父とは政略結婚で愛はなかったようです。仮面夫婦でした。だからか、父は早々に他所に愛人を作って・・・」
ルカは辛そうな悔しそうな表情で。
「母亡き後直ぐに愛人と再婚して、僕と1歳違いの義弟を後継者にして僕を・・・外の家に政略結婚で婿養子に・・・・・・それを聞いて、家を飛び出したんです。その後は、昨日のあれです」
おめでたい空気が一瞬で重くなってしまった。
「あの、すみませ・・・」
「謝るな。ルカは悪くない。その父親がクズなだけだ。それよりも指環をくれないか?」
「・・・はい。じゃあヒューズのは僕が嵌めるね。僕のはヒューズが嵌めて?」
「は、嵌めっ・・・いやいや、これは指環の話で」
ブツブツ呟くヒューズの言葉に呆れている3人と意味が分かっていない一人。
神官長の咳払いでハッとしたヒューズが真面目な顔でルカの左手の薬指に指環を嵌める。
ルカもヒューズの左手薬指に嵌めた。
お互いに手を取り合い、どちらともなく誓う。
『共に生きることが互いの幸せ。愛し慈しむ事を誓う』
こうして今日、一組の夫婦が誕生した。
「じゃあ、早く邸に戻ってお祝いをしよう」
イライアスが軽い感じで言った。
そういえばもうすっかり日が傾いている。
「お祝いもそうだけど、ルカの身の回りの物を揃えたりとやることはたくさんあるよ」
「そうですな。取り急ぎ、服を仕立てませんと! 忙しいですぞ」
「騎士団の皆にも報告をせねば」
皆がわいわいと賑やかに話すのをキョトンと見ていたルカだが、おずおずと輪の中に加わっていった。
「あの、服はヒューズのを手直ししてくれれば構わないですけど・・・」
「それはそれで嬉しいが、古いし、ルカに似合うものを作って着せたい。それに職人達も仕事が増えて経済も回るからな」
ヒューズがそういうので、それもそうかとお任せした。
なにぶん、今までもいわれた物を身に着けていたので、個性というか自分の意見などなかったのだ。
興味もなくて、自分でも何がよくて何が好きなのか分かっていなかった。
ジッとヒューズを見る。
青みがかった銀髪に琥珀色の瞳。
ダグラスさんも同じ色だけど、瞳はペリドットに近い。
お父上の辺境伯は同じ銀髪だけど、瞳は金色に近かった。
「あ、でも、ヒューズの髪や瞳の色が好きかも・・・差し色で良いから入れてくれると嬉しいかな?」
ポツリと零した声に皆が反応して一瞬固まった。
あれ?
何かおかしかった?
『・・・・・・無意識だろうが、人たらしだな』
『お相手の色を身に纏う意味が分かっていらっしゃらない?』
『その服を贈られる意味も分かっていないのでは?』
『唯々諾々と従っていたというから、頓着していないだけでは?』
こそこそと話す4人に?を浮かべているルカ。
「・・・・・・ルカ。その、相手の色を身に纏う意味とかその辺の常識は向こうとは違うのだろうか・・・?」
「うん? ・・・・・・え、あ、ああ!」
うん。どうやら同じようだ。
思い至ったのか、首まで真っ赤に染まったルカを見てホッとした。
後でこの辺りも擦り合わせていかないと。
好いた相手に自分の色を纏わせた服を贈るのは、自分色に染めたい、というほかには自分が脱がせたいという願望もある。
閨を共に・・・・・・。
今夜はいわゆる初夜だ。
本当は着飾って結婚式をあげた後にやりたいが、婚姻はすでに認められた。
すまないが、俺はもう待てそうもない。
まあ、傷に障るから今夜はほどほどに・・・たぶん、そんなにはしないと、思う・・・。
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