上 下
8 / 50

稀人様は可愛らしい美人(sideセバス)

しおりを挟む
年に一度の二つの月が満月になる日。

ここ辺境伯領では毎年、この時期になると魔物や魔獣対策の為に騎士団を送り出す。

辺境伯の次男であるヒューズ様を団長に据え、今年も森で野営して監視していた。

その騎士団が満月の次の日の午後に帰城した。

---一人の稀人を連れて。



「怪我で体力が落ちているから、このまま寝かせてやりたい。セバス、俺の寝室に寝かせるから準備を頼む」

そういって自ら抱き上げて運ぶヒューズ様に、一体何を見せられているのかと一瞬、呆然としたが、とにかく急いで準備を整えた。

そして寝かせるためにコートを外せば・・・。

恐ろしく整った美しいかんばせ
そして何より、この艶やかな黒髪・・・。

「坊ちゃま、この方は・・・」
「ああ、稀人だ。夕べ魔狼に追われていたのを保護した」
「・・・左様でございましたか。どこをお怪我なさっておいでで?」
「ああ。背中と右足首が特に酷かった。手足にも擦り傷や切り傷がある。治癒魔法を酷かった箇所に使った。それで疲れが出たのだと思う。だからこのまま寝かせてやりたい」


細々とした準備をするため、一旦側を離れたが、何かを耐えるようなヒューズ様にダグラスが頭を叩いて用事を促していた。

大丈夫だろうか?

ヒューズ様方が旦那様の執務室に行っている今のうちに、稀人様の身の回りの物を揃える。

先程見た服は新団員の物でしょうが、いかんせん大きすぎますね。
確か坊ちゃまのお小さい時の服が残っていたはず。
10才頃のサイズなら着られるでしょうか。
・・・肩幅や腰周りが余りそうではありますが。


報告を終えたヒューズ様方が着替えを済ませて稀人様のところに戻って参りました。

少しして稀人様が目を覚ましたようです。
坊ちゃまがお声がけされて、清拭と着替えの用意をと指示されましたので準備していた服とお湯をお持ちしました。

おもむろに服に手をかけた稀人様の様子に慌てて回れ右をした坊ちゃまに、『おや?』と様子を窺うと、耳まで真っ赤です。

---これは・・・。

密かに口元に笑みを浮かべて稀人様のお世話を致しましたが、この方は高位貴族階級の方ですね。
お世話をされることに慣れてらっしゃる。

上品で物腰も柔らかい。

ますます坊ちゃまにお似合いです。
これで成人してらっしゃるのならば・・・。

そう思っておりましたが、その後の話を聞いていると雲行きが怪しくなって参りました。

何やらその生活環境に些か、いえ、かなり問題のある発言が飛び出して、我ら4人とも思わず殺気だってしまいました。

その話が強烈過ぎて聞き流してしまいましたが、先程、有り得なさそうな事を口にされてましたよね?!

二年前、15才・・・。

え? それでは今は17才?!

エマと2人で驚愕していると、ヒューズ坊ちゃまがさり気なく愛の告白のような台詞を吐いておりました。

どう捉えたのかは分かりかねますが、稀人様-ルカ様はうれし涙を流しておられました。

この方はおそらく、余り愛されずに育ったのでしょう。
必死に勉学や仕事を頑張って、しかしそれを当然のようにされ、認めて貰えなかった。

捨てられた・・・そうおっしゃってましたが、きっと捨てられたのはその家族の方でしょう。

今頃、向こうの世界で後悔していればよいのですよ。


私達は、ルカ様とヒューズ坊ちゃまの応援をいたします!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】雨を待つ隠れ家

エウラ
BL
VRMMO 『Free Fantasy online』通称FFOのログイン中に、異世界召喚された桜庭六花。しかし、それはその異世界では禁忌魔法で欠陥もあり、魂だけが召喚された為、見かねた異世界の神が急遽アバターをかたどった身体を創って魂を容れたが、馴染む前に召喚陣に転移してしまう。 結果、隷属の首輪で奴隷として生きることになり・・・。 主人公の待遇はかなり酷いです。(身体的にも精神的にも辛い) 後に救い出され、溺愛されてハッピーエンド予定。 設定が仕事しませんでした。全員キャラが暴走。ノリと勢いで書いてるので、それでもよかったら読んで下さい。 番外編を追加していましたが、長くなって収拾つかなくなりそうなのでこちらは完結にします。 読んでくださってありがとう御座いました。 別タイトルで番外編を書く予定です。

追放されたボク、もう怒りました…

猫いちご
BL
頑張って働いた。 5歳の時、聖女とか言われて神殿に無理矢理入れられて…早8年。虐められても、たくさんの暴力・暴言に耐えて大人しく従っていた。 でもある日…突然追放された。 いつも通り祈っていたボクに、 「新しい聖女を我々は手に入れた!」 「無能なお前はもう要らん! 今すぐ出ていけ!!」 と言ってきた。もう嫌だ。 そんなボク、リオが追放されてタラシスキルで周り(主にレオナード)を翻弄しながら冒険して行く話です。 世界観は魔法あり、魔物あり、精霊ありな感じです! 主人公は最初不遇です。 更新は不定期です。(*- -)(*_ _)ペコリ 誤字・脱字報告お願いします!

【本編完結】まさか、クズ恋人に捨てられた不憫主人公(後からヒーローに溺愛される)の小説に出てくる当て馬悪役王妃になってました。

花かつお
BL
気づけば男しかいない国の高位貴族に転生した僕は、成長すると、その国の王妃となり、この世界では人間の体に魔力が存在しており、その魔力により男でも子供が授かるのだが、僕と夫となる王とは物凄く魔力相性が良くなく中々、子供が出来ない。それでも諦めず努力したら、ついに妊娠したその時に何と!?まさか前世で読んだBl小説『シークレット・ガーデン~カッコウの庭~』の恋人に捨てられた儚げ不憫受け主人公を助けるヒーローが自分の夫であると気づいた。そして主人公の元クズ恋人の前で主人公が自分の子供を身ごもったと宣言してる所に遭遇。あの小説の通りなら、自分は当て馬悪役王妃として断罪されてしまう話だったと思い出した僕は、小説の話から逃げる為に地方貴族に下賜される事を望み王宮から脱出をするのだった。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

【完結】ねこネコ狂想曲

エウラ
BL
マンホールに落ちかけた猫を抱えて自らも落ちた高校生の僕。 長い落下で気を失い、次に目を覚ましたら知らない森の中。 テンプレな異世界転移と思ったら、何故か猫耳、尻尾が・・・? 助けたねこちゃんが実は散歩に来ていた他所の世界の神様で、帰るところだったのを僕と一緒に転移してしまったそうで・・・。 地球に戻せないお詫びにとチートを貰ったが、元より俺TUEEをする気はない。 のんびりと過ごしたい。 猫好きによる猫好きの為の(主に自分が)猫まみれな話・・・になる予定。 猫吸いは好きですか? 不定期更新です。

教室ごと転移したのに陽キャ様がやる気ないのですが。

かーにゅ
BL
公開日増やしてからちょっと減らしました(・∀・)ノ ネタがなくて不定期更新中です…… 陽キャと陰キャ。そのくくりはうちの学校では少し違う。 陰キャと呼ばれるのはいわゆるオタク。陽キャはそれ以外。 うちのオタクたちは一つに特化していながら他の世界にも精通する何気に万能なオタクであった。 もちろん、異世界転生、異世界転移なんてものは常識。そこにBL、百合要素の入ったものも常識の範疇。 グロものは…まあ人によるけど読めなくもない。アニメ系もたまにクソアニメと言うことはあっても全般的に見る。唯一視聴者の少ないアニメが女児アニメだ。あれはハマるとやばい。戻れなくなる。現在、このクラスで戻れなくなったものは2人。1人は女子で妹がいるためにあやしまれないがもう1人のほうは…察してくれ。 そんな中僕の特化する分野はBL!!だが、ショタ攻め専門だ!!なぜかって?そんなの僕が小さいからに決まっているじゃないか…おかげで誘ってもネコ役しかさせてくれないし…本番したことない。犯罪臭がするって…僕…15歳の健全な男子高校生なのですが。 毎週月曜・水曜・金曜・更新です。これだけパソコンで打ってるのでいつもと表現違うかもです。ショタなことには変わりありません。しばらくしたらスマホから打つようになると思います。文才なし。主人公(ショタ)は受けです。ショタ攻め好き?私は受けのが好きなので受け固定で。時々主人公が女に向かいますがご心配なさらず。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

処理中です...