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その日、僕は人生をRestartした

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僕の名は御堂瑠華みどうるか。17才。



---暗い森の中、僕はひたすら走っていた。



・・・もうあの家にいるのはイヤだった。

僕の家は古くからある旧華族の名家で、資産家だ。
跡取りとして、生まれた時から全てを言われたとおりに熟して言われた以上の成果をあげて。
愛情なんてお互い無かったけど。
家の為って言われて頑張ってきたのに。

母が病気で亡くなると直ぐに後妻と僕より一つ下の少年を家に入れて。

『お前の腹違いの弟が跡取りだ』
『お前は外に出す。家同士の繋がりのためにな』

そういって勝手に婿養子先を決めるだなんて。
いくら政略結婚で愛がない女の子供だからってあんまりじゃないか。
それなら最初からその子を認知して教育すれば良かったんだ。

静かに怒っていたから周りは気付かなかった。
この時すでに、僕の心は折れたんだ。

もうこんな家の為に生きてやるものか!

大人しく部屋に戻ったふりをして、動きやすいデニムにパーカー、スニーカーを身に着けて。
ポーチにサイフとスマホ・・・はGPSで居場所が知られるから置いていく。

鍵の付いた引き出しから二つの指輪を通したプラチナのチェーンを取り出す。
これは母さんが実家から持ってきた、母さんの家で代々受け継ぐ指輪だ。

『大切な人が出来たら、その人に渡しなさい』

そういって、死ぬ間際に僕にくれた。
・・・母さん、二つ揃ってるって事は、父さんは母さんにとって大切な人じゃ無かったんだね。

・・・まあ、政略結婚で愛してくれずに浮気してるヤツなんて大切じゃ無いよね。

母さんだけは僕を確かに愛してくれていた。
僕を可愛がると父さんが不機嫌になるから人前では顔に出さなかったけど。

亡き母の形見のチェーンを首にかけてこっそり部屋を出る。

警備の目をかいくぐって屋敷を出ると、往来でタクシーを拾い、街外れの神社に向かった。

神隠しの神社として有名なところだ。

鳥居を潜って石段を登っていく。
息を弾ませながら登り切り、もう一つの鳥居も潜って・・・・・・。



顔をあげたら、そこは見たことのない薄暗い森だった。
咄嗟に振り向けば、今しがた潜った鳥居の影も形も無く、鬱蒼と生い茂った木々のみ。

「・・・・・・深い森だから暗いのか? うん? なんか月らしいものが二つあるような・・・夜??」

あれ、さっきまでは遅くても夕方だったはず。
そもそも月が二つって時点でおかしい。

でも僕にはそんなな事より、二度とあの家には戻らなくてすむかも、という事の方が重要だった。

とにかくこのままここに留まって居ても仕方がない。

噂通りの神隠しなら、ここは僕が居た世界とは違うところかもしれない。
だとすると常識が当て嵌まらない方が可能性としては高い。

方角は北極星を目標に、とか。
当て嵌まりそうもないかな。
そもそも北極星なんて見当たらないから。

仕方なく、月を目標に歩き出す。
月が地球と同じく東から南経由で西に沈む事を祈ろう。



やがて小さな沢にあたり、おそるおそるひと舐めすると普通に美味しい水のようだったので、意を決して飲んだ。

ひと心地ついて少し休憩していると、遠くで狼のような遠吠えが聞こえた。
ハッとして足を動かして沢から離れる。

動物たちも利用するだろうここに肉食獣が来るのは当然だ。
そこを狙われてはたまったもんじゃない。

足早に立ち去るが気付かれたようだ。

「っマズい」

そこからは無我夢中だった。
慣れない森の中、後ろを気にしながら闇雲に走る。

狼は何頭か居て、徐々に僕の周りを取り囲むように追い詰めてきた。

思わず後ろを振り返った瞬間。

「!!」

僕の踏み出した足は空を切り、ガクンと自由落下した僕は咄嗟に頭を抱え込んだ。

茂みに隠れてなだらかな崖になっていたようだ。
逃げるのに必死で気付かなかった!

体のあちこちを転がりながらぶつけ、痛みに呻く。
幸い狼は追ってこないようだ。
助かった・・・。

しばらく転がって、最終的に何処かの木の根元に背中を強打して止まったようだ。

その時にはすでに、瑠華の意識はほとんど無かった。


狼の遠吠えではない誰かの声が聞こえた気がした・・・・・・。

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