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リナリアside
しおりを挟むどうやらウチの家系は、ご先祖様に猫神様の加護を授かった人がいて、あの猫耳尻尾の魔導具は代々子孫へと受け継がれていたようで。
当然、父も口伝と共にその魔導具の入った御守り袋の事を知っていたが、不慮の事故により僕には何も伝えられず、御守り袋だけが首にかけられた。
その時の事だけは覚えている。
『直系の者だけが触れる、大切なモノ』
そういって事切れた父様。
最後までぎゅっとしてくれていた母様。
その後は、母方の叔父という人達に酷い目にあわされていた事しか覚えていない。
父様の残した魔導具の本や道具を懸命に使って、魔導具を作ったり修理したり・・・。
殴られたり蹴られたり御飯抜きとか、もうどうでも良かった。
僕には魔導具とこの御守り袋だけ。
その内、僕が要らなくなったようで、孤児院に捨てられた。
神父さんは優しかったけど、他の子供達は遠巻きにして近寄らなかった。
僕もどうしたら良いのか分からないから別に気にしなかった。
一年くらいして、学園というところに通わされた。
その時、同室になったアトリウムを初めて見て、綺麗な子だと思った。
貴族だって言ってた。
僕を閉じ込めて殴ってた叔父さんと同じ貴族。
正直怖かったしどうでも良かった。
だから愛想笑いをして過ごした。
でもアトリウムは優しかった。
言い方とかはキツかったけど。
僕はアトリウムの前では本当に笑えていたと思う。
何くれとなく声をかけて世話を焼いてくれるアトリウムに少しずつ気持ちが傾いていった。
でもそれだけ。
やっぱり僕は他人が怖い。
だから一線を引いていた。
一人で魔導具を作ったりする事に没頭して、気持ちに蓋をして・・・。
やがてアトリウムが飛び級で高等科も卒業間近となった頃、僕も魔導具製作に特化していることと他の成績も概ね中の上くらいだからと、一緒に飛び級卒業が決まった。
正直、ここでお別れだと思っていたから、何か嬉しかった。
卒業後の就職先も同じ魔塔に決まった。
・・・・・・胸の奥がちりっとした。
仕事の分野は違えども、側にいられると。
たぶんこれが恋心。
それからは好きな魔導具製作に打ち込んで、出来た魔導具を発表する、というのを繰り返し、いつの間にか5年。
職場は同じだけど課が違うアトリウムとは何となく疎遠になっていた。
僕は魔塔の宿舎に住んでいるけれどアトリウムは近くにタウンハウスがあって、そこから通っているんだって。
だから魔塔でもあんまり顔を見なくなった。
それに、活躍するアトリウムは老若男女にモテまくりって聞いた。
恋人だってよりどりみどりなんだって、誰かが言ってた。
僕とは最初から住む世界の違う人。
僕は要らない人間だから、ほんの少しでも魔導具で喜んで貰えれば良い。
そう思ってた。
あの日、アトリウムに『ネコになれ』って言われるまでは。
意味が分からなくて、でもネコってこの魔導具のことかもって思ったら、もう、付けちゃうよね?
結果、一体化して外れないって。
説明書き良く読めば良かった。
僕のバカ。
僕に猫神様の加護があるってことなのかな?
良く分かんない。
実は、この御守り袋と同じように、僕の大切なモノを仕舞う箱も僕の血筋の人しか触れない。
秘密だけど、自分の血を使って魔法陣を描き込んであるんだ。
そうすると他人は触れない。
これは監禁されて殴られて血を流したときに偶然知った事。
だから誰も知らない。
たぶんこれは加護じゃなくて、単に僕んちの特異体質なんだろうな。
猫神様の加護ってイメージ的に招き猫的なヤツかも?
僕はちっとも幸運じゃなかった気がするけど、アトリウムと婚姻したことが幸運だったのかな?
他の人には招福って事?
アトリウムは今、幸せなのかな?
「考え事か? 俺のことだけ考えてろよ?」
「・・・今まさにアトリウムの事を考えてたんだけど? ・・・・・・んん? 何でアトリウムのアレがおっきく・・・?!」
「・・・お前が無意識に煽るからだ」
「えええ?!」
僕はどうやらまた何か間違えたらしい。
どうして僕はポンコツなんだろうな?!
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