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28 もう一つの報告
しおりを挟む「さて、その話はもうお終い。今度はコッチの話です!」
急にエヴァルドが明るい声でパンッと手を合わせる。
俺もアルヴァもエヴァルドに注目した。すると隣に座るアディスにも自然と視線が向く。
ちょっと頬を赤らめるアディスに、俺はピンときた。
昨日アディスが言ってたヤツじゃないか!?
「えー、まず、私の亡くなった番いの生まれ変わりがアディスというのはここにいる者全員が知っていると思うが・・・・・・だよね、アディス?」
「ええ、話してありますよ」
アディスがそう言うとにっこり笑うエヴァルド。ご機嫌で続きを話し出す。
「父上達にも話をして家族会議をした結果、アディスはダスク公爵家の当主で後継者を残さないといけない身だから、私がダスク公爵家に婿入りすることになった」
「・・・・・・あー、やっぱり?」
「まあ、ソレが妥当だろうな」
昨日話したとおりに婿入りか。・・・・・・ということは・・・・・・?
「その代わり、アルヴァがドーン家の次期当主となるため、セラータ君がドーン家に嫁入りしてもらうことになるんだけど・・・・・・」
ちょっと気遣わしげに見ながらそう言われたけど、俺は嫁に行くことに何とも思ってないよ。何か問題が?
「あー、いや・・・・・・。アディスが猫可愛がりしている君を手放すのは辛いかなと。これは一方的な私達の都合だし・・・・・・」
「え? いや別に何にも問題ないよ? そもそもお隣さんだし昔から家族ぐるみだし」
そりゃあ他領のことだから知らないことも多いし、知り合いもいないし。でも俺は元々友人と呼べるヤツはアルヴァしかいなかったからなあ・・・・・・。
そういう点では特に困ることはない。
俺は本気でそう思ってたんだけど・・・・・・。
「そ・・・・・・そんな・・・・・・簡単に・・・・・・親離れ」
アディスが青い顔で呆然と呟いた。え!? そんなにショック!?
「だって・・・・・・セラータは、私の子なんだよ? 大切に大切に愛して育てたのに、こんなにあっさり・・・・・・!?」
「え、いや確かにそうなんだけど・・・・・・そんなに!?」
「だってだって! セラは私とエヴァルドの子なんだよ! そりゃあ愛おしいに決まってる! ソレが、叔父に嫁入りなんて・・・・・・ううっ・・・・・・」
「───は?」
「「「えっ!?」」」
アディス以外の全員が素っ頓狂な声を上げた。
ちょっと待て待て! 何か聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど!?
「ととと父様、あの、ソレって父様とエヴァルドお兄さんが番うから義理の親子って意味だよね!?」
「ううん、違うよ。セラータは前世で私の腹に宿っていたエヴァルドとの子の生まれ変わりなんだよ」
「・・・・・・・・・・・・へぁっ!?」
今度こそ全員固まった。
俺が、前世のアディスとエヴァルドの子だった? 生まれる前にその前世のアディスが死んで、俺もそのまま死んじゃったってこと?
「・・・・・・私に記憶があると言ったろう? だから腹に宿った小さな命の気配や魔力も覚えていた。それであの日、魔法を発現したセラータを見て、もしかしてというのはあったんだ」
ソレからすくすく育って、自分とエヴァルドの魔力に似ている俺が自分と同じように魔法を使い、戦闘力も似てきて絶対にあのときの子だと確信したらしい。
「・・・・・・・・・・・・本当に?」
「うん。絶対に私達の子だ」
そう言いきるアディスに、俺は死ぬまで言うまいと思っていた前世の記憶を自然と口に出していた。
「俺、俺も前世の記憶があって・・・・・・、でもココじゃない世界で育った、魔法とかない平和な世界で、ごく普通の、格闘とか好きなだけの平凡な人間で・・・・・・早くに事故で死んで」
皆が息を飲むのが分かったが、俺はそのまま続けた。
「俺、父様に会ったあのときに初めて記憶が戻って、何でこんな世界に生きてるんだろうってずっと疑問に思ってたんだけど、そっか・・・・・・父様達の世界に生まれ直してたんだね」
───父様達や、アルヴァに出逢うために・・・・・・。
「やっと分かった。俺は、ココにいていい人間だったんだ」
そう言ったらアルヴァにぎゅっと抱きしめられて、そのあとすぐにアディスとエヴァルドにも抱き付かれて。
ぎゅうぎゅうと潰されながら、俺はほろほろと涙を溢した。
※たぶん次が本編最終話で、そのあと番外編予定。
番外編は書き溜めてから投稿する順番を考えるのでちょっと遅くなります。
また忙しくなるので。
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