12 / 40
12 海老で鯛を釣る? 2
しおりを挟むそんな感じで合同訓練が始まったが、何度も訓練をしているので皆手慣れたモノで。
特に指示を出さずとも何時ものフォーメーションを組んで模擬戦が始まった。
───ちなみにこの合同訓練は対魔物討伐を想定して行うので、当然、魔物役が必要になる。そういう訳で魔物役はアディスとカーティス補佐官、あとエリアス団長とディート団長補佐官。
アルヴァは俺と同じで補佐官がいないし、何時も討伐任務の指揮官は、魔導師団は俺で騎士団はアルヴァだから当然討伐隊の方だ。
何時もは俺達のレベルを鑑みて、アディス達は小ボスから徐々にラスボスレベルまで多種多様な攻撃をしていくのだが・・・・・・。
「本日は最初からクライマックスでーす!!」
気の抜けるようなかけ声にそぐわない不穏な台詞に討伐隊側は戦慄した。
だっていきなりラスボスだよ!? それって今回のドラゴンクラスだよ!
「マージーでー!?」
俺はもうダスク公爵子息だとか副師団長の仮面なんかとっくに脱ぎ捨てて、すっかり素で話していた。
だって構ってられないでしょ!
そうこうしてる間にドラゴンブレスっぽい火炎魔法を放ってきたアディスに悪態をつく。
「まさかずっとクライマックス!? 父様、巫山戯てる!?」
「まーさかー。終わりまでずっとクライマックスだけど巫山戯てないよ?」
「嘘つけー!」
もはや親子喧嘩のようなやり取りをしながら俺は味方に結界魔法を張り、全員に攻撃力・魔法威力向上、俊敏向上のバフをかける。
更に魔物役のアディス達にも攻撃力・魔力威力・防御力低下のデバフをかけるが、さすがにアディスとカーティス補佐官の魔法で弾かれた。
「『麻痺魔法』! あーくそ、魔法耐性強すぎ! ちょっとくらい効きなよー! それともまさか状態異常無効のスキル持ってる!?」
「ソレは教えられねえなあ!」
「手札は隠さないとね」
俺がそう喚けばエリアス団長とディート補佐官がニヤリと笑いながらそう言う。分かってるけど!
だってアディス達や団長達レベル高すぎて『鑑定魔法』弾かれちゃうんだもん。
鑑定魔法は当人が許可しないと自分より高レベルな人は弾いてしまってステータスを見ることが出来ない。
もちろん暗黙のルールで魔物やモノ以外は勝手に見てはいけないことになってる。そりゃあプライベート丸裸ってやだよね。
「いかなセラでも味方に広範囲の多重魔法使って更にこっちにも広範囲のデバフはキツいだろう?」
「チッ! ダメ元だから別にいい!」
さすがに俺だってこれだけの魔法を使いながらアディス達にデバフは無理と分かってるけど、討伐任務の時の癖で何時もやっちゃうんだよね。
でもあわよくばってのもあったし、のっけからクライマックスなら全力でヤれるから───。
「じゃあコッチもクライマックスでイかせて貰う」
「っセラ!」
あ? 何、ヘンな意味じゃないよ!?
だからアルヴァ、戦闘に集中して! 顔を赤くしてるんじゃない!
「『煉獄魔法』!」
「『絶対零度魔法』」
熱風と冷気が入り乱れてぶつかり合い掻き消されたので間髪入れず次を放つ。結界魔法でお互いとも防御してるから被害はない。・・・・・・地形は変わったが。
「『暴風雨魔法』!!」
「『暴風雨魔法』」
竜巻と豪雨を合わせたような大規模魔法をほぼ同時に放ち、やはり打ち消される。
次々くり出す俺の魔法に反対属性の魔法や同魔法で相殺してくるアディスにムッとする。そりゃあ俺の師匠だから読まれるのは分かるけど!
魔力量なら国一番の俺だが、魔法の腕はさすがにアディス父様が上だ。年季が違う。悔しい!
俺達が魔法戦メインでやり合っているときに残りの団員達は何時もの体制で団長や団長補佐官とヤりあっている。
あちらもバフがかかっているのだろうが、元々の身体能力が獣人の中でも高いから倍以上の威力が出てるっぽい。
・・・・・・ところで何か、アディスに攻撃が集中してない?
そもそも俺と対峙しながらアルヴァにも口撃&攻撃してるアディス・・・・・・マジか。そんな余裕あんのか、くそう。
「セラにあんまり近付くんじゃないよ、脳筋!」
「───っ嫉妬ですか!? ダスク師団長!」
「ったり前だろ! 今まであんな根も葉もない噂を鵜呑みにして避けてたくせに! 無垢だって知った途端コロッと掌返ししやがって!」
「ソレは、申し訳ないと思っておりますが! でも俺の番いなんだから親しくしてもいいでしょう!」
「あんな噂で距離置いてセラを悲しませてたことが許せないんだよ! だから一発殴らせろ!」
「・・・・・・は?」
アディスが身体強化魔法を自身にかけると目に見えないほどの速さでアルヴァに肉薄し、アルヴァの鳩尾をグーパンした。
「───っぐ!」
「やりぃ! クリティカルヒット───!!」
「アルヴァ!?」
ドゴッという鈍い音と共に訓練場の壁にめり込んだアルヴァ。いや訓練場にガッツリ強化した結界魔法張ってんだけどめり込むって何っ!?
その場にいた全員が唖然として固まってしまい、模擬戦闘は唐突に終わった。
「・・・・・・マジ?」
俺も呆然。何度も合同訓練してるけどこんなの初めて見た。
だっていくらアディスが鍛えてるっていっても相手は竜人だよ? 身体強化魔法で底上げしてもアディスは俺と同じ人族だよ?
「アチャー。ガチだった」
「・・・・・・相変わらずですね、ダスク師団長殿」
「なんでアイツは騎士団所属じゃないんだ?」
「魔導師としても優秀だから?」
エリアス団長とディート補佐官が呆れたようにぼやいている中、カーティス補佐官は微笑んでいて、アディスは勝ち誇った顔で指を立てるという公爵にあるまじき仕草をしながらドヤった。
「フン! セラが欲しかったら私を倒していけ!」
「・・・・・・いやそれ、どんな無理ゲー・・・・・・」
俺ですら魔法で勝てないのに、武力でも勝てないって・・・・・・。てか、鍛えてんのは知ってたけど、身体強化だけでステゴロで騎士団副団長を伸しちゃうって・・・・・・アディス凄過ぎん?
「とりあえず一回戦は魔物役の勝ちー! 次も暴れるぞー」
「ダスク副師団長、訓練場にリペア頼む。残りは15分休憩で次はバトルロイヤルをやるから準備しておけ」
正気に戻って辺りが騒然とする中、アディスの気の抜けた声とエリアス団長の次の予定を告げる声がよく響いて再び戦慄する団員達だった。
※次は二回戦。色っぽいところがなくてスミマセン。
897
お気に入りに追加
1,040
あなたにおすすめの小説
婚約破棄?しませんよ、そんなもの
おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。
アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。
けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり……
「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」
それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。
<嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
メランコリック・ハートビート
おしゃべりマドレーヌ
BL
【幼い頃から一途に受けを好きな騎士団団長】×【頭が良すぎて周りに嫌われてる第二王子】
------------------------------------------------------
『王様、それでは、褒章として、我が伴侶にエレノア様をください!』
あの男が、アベルが、そんな事を言わなければ、エレノアは生涯ひとりで過ごすつもりだったのだ。誰にも迷惑をかけずに、ちゃんとわきまえて暮らすつもりだったのに。
-------------------------------------------------------
第二王子のエレノアは、アベルという騎士団団長と結婚する。そもそもアベルが戦で武功をあげた褒賞として、エレノアが欲しいと言ったせいなのだが、結婚してから一年。二人の間に身体の関係は無い。
幼いころからお互いを知っている二人がゆっくりと、両想いになる話。
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる