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6 休暇初日 2
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※前半セラータ、後半アルヴァ視点。
「ほらセラ、起きてあーんして」
「・・・・・・うう、あーん」
「まずスープな」
うつらうつらしているうちにいつの間にかソファにアルヴァの膝上に横抱きで座っていて、アルヴァに言われるままに半目のまま口をパカリと開いた。
そこに適温に冷ましたコーンポタージュのスープがスプーンで一匙入れられる。反射的にパクッと口を閉じてもぐもぐゴクンと飲み込む。
「おいし」
「よかったな。ほらもう一口」
「あーん」
そうやって雛鳥よろしく給餌されて、時折口端をナフキンで拭われながらサンドイッチも平らげた。
食後の紅茶はさすがに自分で飲んだけど、半分くらい夢の中で、こくりこくりと頭が傾いているのを感じる。
目はすでに瞑っていて開きそうにない。危ないと思ったのかアルヴァに手の中のカップを取り上げられた。
「ほら、ご馳走様。ベッドに横になるか? ソレともこのままか?」
「・・・・・・んー、このまま・・・・・・アルのトコがいい・・・・・・安心する・・・・・・」
「───っそうか。ウン、いいぞ。ゆっくり休め」
目を瞑っているから表情は分からないけど、アルヴァの声が嬉しそうに聞こえる気がした。
出会った最初から世話焼きだったから頼られると嬉しいんだろうか・・・・・・?
うん、ただの幼馴染みでも、これくらい当たり前だったし、いいよね?
そんなことを思いながら、俺は夢の中へ旅立った。
◇◆◇
膝の上で頭を俺の胸に預けて無防備に眠るセラータを見る。
穏やかな、安心した表情だ。
「アルヴァ様に介助して頂けて助かりました。あのままではおそらく一口二口で眠ってしまわれたでしょう」
「あー、うん。本当に起きてるのかと思うほどぼんやりしていたな」
何時もの凜とした雰囲気がなくて幼さが前面に出てる感じで可愛らしい。
いや見た目が可愛らしいのでキリッとしててもあまり変わらないのだが、仕事の時は近寄りがたい空気があるんだよな。
もしかすると自衛のためにワザとそういう雰囲気を作っていたのかも。でないとバカなヤツらが大勢集ってきそうだ。
「セラータ坊ちゃまはどうも甘え下手らしく、普段は大人びておりますが、お酒が入ったり寝惚けておりますと途端に先程のようになりますよ」
お可愛らしいことです、とサイモンは食器を片づけるとほのほのと部屋をあとにした。セラータにしっかりブランケットをかけて。
「私共は席を外しますが、用件がございましたら何時でもお申し付け下さいませ。アルヴァ様もどうぞごゆっくり」
「助かる」
そうしてセラータの寝息以外聞こえない静まり返った部屋で、俺は騎士団入団の頃のことを振り返った。
───俺とセラータはお互い10歳になった年に同時にそれぞれ騎士団と魔導師団に入団した。
年齢を考えるとまだまだ子供だが、俺は竜人で即戦力になるだけの実力があったし、何よりセラータが早く魔導師団に入団したがったために、なるべく離れたくなくて俺も合わせたのだ。
その頃は今まで通り幼馴染みの関係で気さくに付き合いがあったが、年に三度の深淵の森討伐任務を熟していくウチに妙な噂が出回るようになった。
『魔導師団のダスク家の子息って、ビッチなんだって?』
『俺も聞いた。何でも討伐の時は魔法をもの凄く使うから魔力供給のためにヤリまくるらしい』
『来る者拒まずって話だぜ』
『魔力供給っていうんじゃなくて普段から誘ってるらしいし』
『あんな子供みたいな身体で欲情できんのか?』
『いやいや、ヤったら凄いらしいぜ』
そんな下品で下世話な噂話がいつの間にか王宮内で広まっていった。
確かに魔力回復には体液、特に精液に多く含まれるので粘膜摂取が効率がいいということは知っているが・・・・・・。
そんな、まさか・・・・・・?
一度浮かんでしまった疑念はそう簡単に払拭出来ず、気付けばあからさまにセラータを避けるようになっていた。
セラータは噂を気にしていないのか知らないのか、はたまた真実だからと否定しないのか・・・・・・。
お互い顔を合わせて話すこともなくなってはや二年ほど経った今回の討伐任務でのドラゴン襲撃というイレギュラー。
セラータが魔力枯渇寸前になるのを見たのはこれで二度目だった。
一度目は養子になってすぐの魔力循環訓練中の暴走。
俺も一緒に付き合っていてその場にいたが、俺はあまりの衝撃に固まってしまい、何も出来ずにただ呆然としていただけだった。
あのときセラータを護れるように強くなると誓ったのに、セラータを信じて護るどころか噂を鵜呑みにして突き放しただけだった。
今思えば、セラータは俺を見るときは何時も切なそうな瞳だった・・・・・・。
「───これからは、俺が必ず護るからな」
そう囁いてセラータの唇に口吻を贈った
「ほらセラ、起きてあーんして」
「・・・・・・うう、あーん」
「まずスープな」
うつらうつらしているうちにいつの間にかソファにアルヴァの膝上に横抱きで座っていて、アルヴァに言われるままに半目のまま口をパカリと開いた。
そこに適温に冷ましたコーンポタージュのスープがスプーンで一匙入れられる。反射的にパクッと口を閉じてもぐもぐゴクンと飲み込む。
「おいし」
「よかったな。ほらもう一口」
「あーん」
そうやって雛鳥よろしく給餌されて、時折口端をナフキンで拭われながらサンドイッチも平らげた。
食後の紅茶はさすがに自分で飲んだけど、半分くらい夢の中で、こくりこくりと頭が傾いているのを感じる。
目はすでに瞑っていて開きそうにない。危ないと思ったのかアルヴァに手の中のカップを取り上げられた。
「ほら、ご馳走様。ベッドに横になるか? ソレともこのままか?」
「・・・・・・んー、このまま・・・・・・アルのトコがいい・・・・・・安心する・・・・・・」
「───っそうか。ウン、いいぞ。ゆっくり休め」
目を瞑っているから表情は分からないけど、アルヴァの声が嬉しそうに聞こえる気がした。
出会った最初から世話焼きだったから頼られると嬉しいんだろうか・・・・・・?
うん、ただの幼馴染みでも、これくらい当たり前だったし、いいよね?
そんなことを思いながら、俺は夢の中へ旅立った。
◇◆◇
膝の上で頭を俺の胸に預けて無防備に眠るセラータを見る。
穏やかな、安心した表情だ。
「アルヴァ様に介助して頂けて助かりました。あのままではおそらく一口二口で眠ってしまわれたでしょう」
「あー、うん。本当に起きてるのかと思うほどぼんやりしていたな」
何時もの凜とした雰囲気がなくて幼さが前面に出てる感じで可愛らしい。
いや見た目が可愛らしいのでキリッとしててもあまり変わらないのだが、仕事の時は近寄りがたい空気があるんだよな。
もしかすると自衛のためにワザとそういう雰囲気を作っていたのかも。でないとバカなヤツらが大勢集ってきそうだ。
「セラータ坊ちゃまはどうも甘え下手らしく、普段は大人びておりますが、お酒が入ったり寝惚けておりますと途端に先程のようになりますよ」
お可愛らしいことです、とサイモンは食器を片づけるとほのほのと部屋をあとにした。セラータにしっかりブランケットをかけて。
「私共は席を外しますが、用件がございましたら何時でもお申し付け下さいませ。アルヴァ様もどうぞごゆっくり」
「助かる」
そうしてセラータの寝息以外聞こえない静まり返った部屋で、俺は騎士団入団の頃のことを振り返った。
───俺とセラータはお互い10歳になった年に同時にそれぞれ騎士団と魔導師団に入団した。
年齢を考えるとまだまだ子供だが、俺は竜人で即戦力になるだけの実力があったし、何よりセラータが早く魔導師団に入団したがったために、なるべく離れたくなくて俺も合わせたのだ。
その頃は今まで通り幼馴染みの関係で気さくに付き合いがあったが、年に三度の深淵の森討伐任務を熟していくウチに妙な噂が出回るようになった。
『魔導師団のダスク家の子息って、ビッチなんだって?』
『俺も聞いた。何でも討伐の時は魔法をもの凄く使うから魔力供給のためにヤリまくるらしい』
『来る者拒まずって話だぜ』
『魔力供給っていうんじゃなくて普段から誘ってるらしいし』
『あんな子供みたいな身体で欲情できんのか?』
『いやいや、ヤったら凄いらしいぜ』
そんな下品で下世話な噂話がいつの間にか王宮内で広まっていった。
確かに魔力回復には体液、特に精液に多く含まれるので粘膜摂取が効率がいいということは知っているが・・・・・・。
そんな、まさか・・・・・・?
一度浮かんでしまった疑念はそう簡単に払拭出来ず、気付けばあからさまにセラータを避けるようになっていた。
セラータは噂を気にしていないのか知らないのか、はたまた真実だからと否定しないのか・・・・・・。
お互い顔を合わせて話すこともなくなってはや二年ほど経った今回の討伐任務でのドラゴン襲撃というイレギュラー。
セラータが魔力枯渇寸前になるのを見たのはこれで二度目だった。
一度目は養子になってすぐの魔力循環訓練中の暴走。
俺も一緒に付き合っていてその場にいたが、俺はあまりの衝撃に固まってしまい、何も出来ずにただ呆然としていただけだった。
あのときセラータを護れるように強くなると誓ったのに、セラータを信じて護るどころか噂を鵜呑みにして突き放しただけだった。
今思えば、セラータは俺を見るときは何時も切なそうな瞳だった・・・・・・。
「───これからは、俺が必ず護るからな」
そう囁いてセラータの唇に口吻を贈った
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