荒れ地に咲く一輪の花

エウラ

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13 エルフの里探検 1

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ヨウガが目を覚ましたのは翌日の夕方頃。

ルーカスに介護されながらお風呂に入り、漸く夕御飯にありつけた。

「・・・・・・昨日はスミマセンでした」

夕御飯の席でヨウガは顔を若干赤くしてルーカスのご両親に頭を下げた。
色々とやらかした記憶しかないからだ。

「そんなっ!! こちらこそごめんなさい。あんなに強いお酒だって気付かなくて・・・ルーカスにも怒られたのよ?」
「そうそう。謝るのはこちらの方だ。ソレにルーカスがその・・・かなり無理をさせたようで・・・すまなかった」
「いえっあの・・・その」
「はいはい。お互い様と言うことで、終わりにしよう」

二人にそう言われて思い出したのか、ヨウガは更に顔を赤くしてあわあわとしてしまい、ルーカスに締められてこの話はこれでお終いとなった。

「「さあ召し上がれ」」
「ヨウガ、好きなだけ食べろよ」
「頂きまーす! お腹ぺこぺこだったんだ!」
「・・・丸一日、食べてなかったな。スマン」
「あーいや、もう良いって。あーん」
「あーん、美味いか?」

頂きますのあと、ヨウガはなんの躊躇も無く口を開けた。
なんの躊躇も無くそこにスプーンを差し込むルーカスに両親は唖然としながらも、仲が良いねえとほのほのとしたのだった。

夕御飯も食べ終わり、まだ疲れの残るヨウガがこくりこくりと舟を漕ぎ出したので部屋に戻る。

ベッドに横たえると、既に半分夢の中。

「・・・・・・ルーカス、明日も・・・いるの?」
「ああ、数日間はいるつもりだ。だから好きなだけゆっくり寝てて大丈夫だよ」
「ぅん、じゃあ、明日・・・里の・・・・・・案内して欲し・・・るー・・・」
「・・・・・・ああ、って、眠ったか」

話すだけ話してあっと言う間に寝入ったヨウガの服を着替えさせてから掛布をかけて寝かせる。

「───さて、じゃあ明日は何処を見せてやろうかな?」

独りごちて、色々と案内する場所を選考するルーカスだった。


───翌日、朝日を浴びてすっきり目覚めたヨウガは、隣で微笑んでいるルーカスにちゅっと口付けをするとむぎゅっと抱き付いた。

「───おはよう」
「うん、おはよう。えへへ」

やや困惑気味に挨拶をするルーカスに抱き付いたまま返事を返すヨウガ。

「・・・どうしたんだ?」
「ううん。やっぱりルーカスが好きだなって思っただけ」
「───っ俺もヨウガを愛してるよ」
「───俺も、ルーカスを、あい、愛してるっ! ひゃあ、恥ずかしい!」
「ふふっ、ありがとう」

照れて中々言えない言葉だけど、ルーカスに伝わるように、精一杯、ルーカスといるときだけでも言葉にしようと思ったヨウガだった。

───だって、もの凄く嬉しそうに笑うんだもん。
でも元日本人としてはこういうストレートな言葉はめちゃくちゃ恥ずかしいので、たぶん真っ赤な顔になってると思う。

「・・・・・・可愛いな、ヨウガは」

しがみ付いてるせいで、耳から首筋、その下の襟ぐりの開いた鎖骨辺りまで桃色に染まっていて、煽情的だった。

「・・・・・・ん? 何か腰に当たってる・・・?」
「───スマン。朝から良いモノを見せられてつい俺のオレが元気に・・・」
「・・・・・・ああ、朝は生理現象で男は元気になっちゃうもんね・・・・・・って、いやいや? 元気すぎるよね、ルーカスさん?! 今日は里の探検でしょ?!」
「・・・・・・」
「何か言って!! 返事して?! 何時ぞやの焼き増しみたいなのは止めて───っ!!」
「・・・・・・ちょっとだけ」
「───いーやーっ!!」

───必死の抵抗も虚しく、朝から美味しく頂かれてしまうヨウガだった。

あの後結局、起きられたのは10時過ぎ。
両親に揶揄われながら遅いブランチを食べて、漸く里の案内をして貰えることになった。

「最初は何処に行くのー?」

すっかり機嫌の直ったヨウガにホッとしつつ、昨日から考えていた場所にひとまずは案内をするかと動き出す。

「そうだな。まずは昨日ヨウガが揺られて寝ていた樹に行こうか。あそこはこの里で一番大きく古い大樹なんだ。さすがに世界樹イルミンスールではないんだけど、それに近しい種類だと言われている」
「───へえ。だからかな、ココは空気があの島に近いなって思ってたんだよ」
「そう思う」

ルーカスとヨウガは話ながらゆっくりと歩いていった。














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