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10 エルフ族ってこんな人
しおりを挟む爆睡していたヨウガが次に目覚めたとき、一瞬、ココが何処か分からなくて困惑した。
場所は自宅のツリーハウスと同じ木の枝の上の家。
しかしさっきツリーハウスでルーカスに声をかけられたときに乗っていたハンモックとは違う、大きい卵形のようなブランコみたいな籠に丸くなって入って揺られていたから。
しかもめっちゃ見られてる。
ヨウガは目を見開いたまま、身じろぎもせずに固まっていた。
───目の前にはほっそりした美人さんとややガッチリ体型のこれまた美人さん。
チラリとその後ろを見ると、似たような美人さんが数人、更にそのまま目線を上に向ければ、たくさんの美人、美人、美人・・・。
木の枝に座っていたり、逆さまにぶら下がってたり、ロープでプランプランと揺れていたり・・・。
しかも皆、耳が長くて尖っている。
───エルフ?!
固まったまま導き出されたのは『寝ていたらいつの間にかエルフの里に転移してた件』なんてタイトルが付きそうな状況だった。
「───ルーカス・・・・・・? 何処?」
思わず涙目でそう呟くと、目の前にパッと現れた。
「すまない、ヨウガ! 一人にして・・・」
「・・・っうう、何ココ、どういう状況?! 俺、また何処か知らないところに独りかと思った」
思わずしがみ付いてべそべそ涙を溢すヨウガに、ルーカスも胸が痛んだ。
「本当にすまない。良く寝ていたから、つい・・・。せめて一言断ってからにすれば良かった」
「うん、今度はそうして・・・。さすがにコレは・・・怖い」
「ああ。・・・そういうわけだからサッサと退いてくれるか? 皆」
振り返りもせずに後ろに向かってそう言うルーカスの声に刺々しさが含まれていて、周りの気配がざざっと遠ざかるのがヨウガにも分かった。
「───・・・あの、ごめんなさい・・・」
おずおずといった感じで謝罪の言葉がルーカスの背中から聞こえて、ヨウガは袖で涙を拭って顔をずらした。
───が・・・。
「オイコラ、ルーカス、見えないってば!」
見ようと首を伸ばせば、すかさず逞しい胸板で隠されて何も見えないんだが?!
「・・・・・・ルーカス?」
「見なくて良い」
「いやいや、そういう訳にいかないでしょ?」
多分だけど、ルーカスの家族だろ?
木の上の他の方々は違うとしても、覗き込んでいたのはきっとそうだよな?
「───ッチ」
うわあ、舌打ちしたよ!
レアなルーカス、ラッキー・・・じゃ無くて!!
「ルーカス? 俺だってちゃんと挨拶したいんだけど」
「・・・・・・分かった」
めっちゃ渋ってる。珍しいな。
でも抱き上げてブランコから降ろしてくれたのでヨシ。
改めて向き合うと、ソコにはさっき目覚めた時に覗き込んでいた、ルーカスによく似た面影の二人のエルフさんがいた。
少し離れたところにも数人いるけど、ルーカスの親戚のエルフさん達かな?
何処となく似ている。
「初めまして、えーと、こんにちは? 私はカンナヅキ・ヨウガと言います。ルーカスさんの、は、は・・・伴侶です」
そう言ってお辞儀をしたヨウガ。
隣に立つルーカスが溜息を吐きながら言った。
「さっきザッと話したとおり、彼がアステナ神の愛し子で俺の伴侶となったヨウガだ。・・・ヨウガ、こっちの背が低い方が俺の母親でリンク、ちょっと大きい方が父親のラクス。後ろにいるのは両親の兄弟とその息子達で俺の叔父叔母一家、従兄弟達だ」
「よ、よろしくお願いします。ルーカスさんには何時も御世話になってます!」
「こちらこそよろしく。・・・さっきはすまなかったね。あまりにも可愛らしかったもので・・・」
「そうそう! 黒い髪も艶々で綺麗だし、こんな幼げな子がルーカスの伴侶だって、驚いちゃって」
「「「「「ごめんなさい!!」」」」」
ルーカスに紹介を受けたお父さんとお母さんが話し出して、後ろの親戚の人達も一斉に謝罪の言葉を口にして、ポカンとしたヨウガだったが、慌てて声をかけた。
「あの、泣いちゃってこっちこそスミマセン! もう気にしてないんで、頭を上げて下さい!」
恥ずかしくて顔を赤らめてそう言うヨウガに、ルーカスの両親達はおろか、周りで見守っていたエルフ達も心を鷲掴みにされた。
『───かっ、可愛い───っ!!』
「・・・だから来たくなかったんだ」
「え? え?」
困惑するヨウガと憮然とした顔のルーカス。
「エルフは元々子供が出来にくい・・・まあ、性欲が薄くて子作り自体少ないから、幼子が少ないんだよ。そのせいで逆に子供大好きでね・・・。ヨウガは成人してるけど見た目は子供っぽいから、絶対にこうなると思ってた」
「え? 俺、大人なのに? 見た目のせい?」
「見た目もそうだけど、エルフとしては18歳って赤子みたいな感覚だから。人族での18歳は大人だけど、ヨウガはハイヒューマンだから余計に子供に見られるよ。だから里中のエルフに構われると思う。───つまり俺と過ごす時間が減る」
そう言ってブスッとむくれるルーカスにポカンとしたあと、ヨウガは破顔した。
「ルーカス、可愛い───!!」
なにそれ、ヤキモチ?!
「可愛くない。見ただろう? この里で俺ほどガッチリ体型のヤツはいない。何時も言ってたろう? エルフだからって訳じゃ無いって」
「---そうだけど。ルーカスはそのまんまのルーカスで良いよ。最高! カッコいいし可愛いし!!」
「───っかわっ・・・もう良い。好きにしろ」
ぷいっとそっぽを向いたルーカスだったが、耳が赤くなっているのが見えて、照れてると思ったら、ますます可愛いと思うヨウガだった。
※エルフさんは想像通りのほっそりした美人さんでした。
ルーカスみたいなマッチョが珍しいんです。
先日、何も考えずに真っ昼間にぼーっとエロを投稿しました。スミマセン。風邪でぽやぽやしてました。次はせめて夕方に・・・。
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