荒れ地に咲く一輪の花

エウラ

文字の大きさ
上 下
10 / 20

10 エルフ族ってこんな人

しおりを挟む

爆睡していたヨウガが次に目覚めたとき、一瞬、ココが何処か分からなくて困惑した。


場所は自宅のツリーハウスと同じ木の枝の上の家。

しかしさっきツリーハウスでルーカスに声をかけられたときに乗っていたハンモックとは違う、大きい卵形のようなブランコみたいな籠に丸くなって入って揺られていたから。

しかもめっちゃ見られてる。

ヨウガは目を見開いたまま、身じろぎもせずに固まっていた。


───目の前にはほっそりした美人さんとややガッチリ体型のこれまた美人さん。

チラリとその後ろを見ると、似たような美人さんが数人、更にそのまま目線を上に向ければ、たくさんの美人、美人、美人・・・。

木の枝に座っていたり、逆さまにぶら下がってたり、ロープでプランプランと揺れていたり・・・。

しかも皆、耳が長くて尖っている。

───エルフ?!

固まったまま導き出されたのは『寝ていたらいつの間にかエルフの里に転移してた件』なんてタイトルが付きそうな状況だった。

「───ルーカス・・・・・・? 何処?」

思わず涙目でそう呟くと、目の前にパッと現れた。

「すまない、ヨウガ! 一人にして・・・」
「・・・っうう、何ココ、どういう状況?! 俺、また何処か知らないところに独りかと思った」

思わずしがみ付いてべそべそ涙を溢すヨウガに、ルーカスも胸が痛んだ。

「本当にすまない。良く寝ていたから、つい・・・。せめて一言断ってからにすれば良かった」
「うん、今度はそうして・・・。さすがにコレは・・・怖い」
「ああ。・・・そういうわけだからサッサと退いてくれるか? 皆」

振り返りもせずに後ろに向かってそう言うルーカスの声に刺々しさが含まれていて、周りの気配がざざっと遠ざかるのがヨウガにも分かった。

「───・・・あの、ごめんなさい・・・」

おずおずといった感じで謝罪の言葉がルーカスの背中から聞こえて、ヨウガは袖で涙を拭って顔をずらした。

───が・・・。

「オイコラ、ルーカス、見えないってば!」

見ようと首を伸ばせば、すかさず逞しい胸板で隠されて何も見えないんだが?!

「・・・・・・ルーカス?」
「見なくて良い」
「いやいや、そういう訳にいかないでしょ?」

多分だけど、ルーカスの家族だろ?
木の上の他の方々は違うとしても、覗き込んでいたのはきっとそうだよな?

「───ッチ」

うわあ、舌打ちしたよ!
レアなルーカス、ラッキー・・・じゃ無くて!!

「ルーカス? 俺だってちゃんと挨拶したいんだけど」
「・・・・・・分かった」

めっちゃ渋ってる。珍しいな。
でも抱き上げてブランコから降ろしてくれたのでヨシ。

改めて向き合うと、ソコにはさっき目覚めた時に覗き込んでいた、ルーカスによく似た面影の二人のエルフさんがいた。

少し離れたところにも数人いるけど、ルーカスの親戚のエルフさん達かな?
何処となく似ている。

「初めまして、えーと、こんにちは? 私はカンナヅキ・ヨウガと言います。ルーカスさんの、は、は・・・伴侶です」

そう言ってお辞儀をしたヨウガ。
隣に立つルーカスが溜息を吐きながら言った。

「さっきザッと話したとおり、彼がアステナ神の愛し子で俺の伴侶となったヨウガだ。・・・ヨウガ、こっちの背が低い方が俺の母親でリンク、ちょっと大きい方が父親のラクス。後ろにいるのは両親の兄弟とその息子達で俺の叔父叔母一家、従兄弟達だ」
「よ、よろしくお願いします。ルーカスさんには何時も御世話になってます!」
「こちらこそよろしく。・・・さっきはすまなかったね。あまりにも可愛らしかったもので・・・」
「そうそう! 黒い髪も艶々で綺麗だし、こんな幼げな子がルーカスの伴侶だって、驚いちゃって」
「「「「「ごめんなさい!!」」」」」

ルーカスに紹介を受けたお父さんとお母さんが話し出して、後ろの親戚の人達も一斉に謝罪の言葉を口にして、ポカンとしたヨウガだったが、慌てて声をかけた。

「あの、泣いちゃってこっちこそスミマセン! もう気にしてないんで、頭を上げて下さい!」

恥ずかしくて顔を赤らめてそう言うヨウガに、ルーカスの両親達はおろか、周りで見守っていたエルフ達も心を鷲掴みにされた。

『───かっ、可愛い───っ!!』

「・・・だから来たくなかったんだ」
「え? え?」

困惑するヨウガと憮然とした顔のルーカス。

「エルフは元々子供が出来にくい・・・まあ、性欲が薄くて子作り自体少ないから、幼子が少ないんだよ。そのせいで逆に子供大好きでね・・・。ヨウガは成人してるけど見た目は子供っぽいから、絶対にこうなると思ってた」
「え? 俺、大人なのに? 見た目のせい?」
「見た目もそうだけど、エルフとしては18歳って赤子みたいな感覚だから。人族での18歳は大人だけど、ヨウガはハイヒューマンだから余計に子供に見られるよ。だから里中のエルフに構われると思う。───つまり俺と過ごす時間が減る」

そう言ってブスッとむくれるルーカスにポカンとしたあと、ヨウガは破顔した。

「ルーカス、可愛い───!!」

なにそれ、ヤキモチ?!

「可愛くない。見ただろう? この里で俺ほどガッチリ体型のヤツはいない。何時も言ってたろう? エルフだからって訳じゃ無いって」
「---そうだけど。ルーカスはそのまんまのルーカスで良いよ。最高! カッコいいし可愛いし!!」
「───っかわっ・・・もう良い。好きにしろ」

ぷいっとそっぽを向いたルーカスだったが、耳が赤くなっているのが見えて、照れてると思ったら、ますます可愛いと思うヨウガだった。







※エルフさんは想像通りのほっそりした美人さんでした。
ルーカスみたいなマッチョが珍しいんです。
先日、何も考えずに真っ昼間にぼーっとエロを投稿しました。スミマセン。風邪でぽやぽやしてました。次はせめて夕方に・・・。






しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完】悪役令嬢の復讐(改)全6話

325号室の住人
BL
初出 2021/10/08 2022/11/02 改稿、再投稿 わたくしマデリーンは18歳の誕生日の今日、2歳年上の第2王子から婚姻式をブッチされました。 「お前は国外追放だ!!」 と、花嫁衣装のまま国境の森に追放。 良いですわ。そちらがその気なら……… 悪役令嬢が国外追放に決まった時、友人達はプランBで、動き出した。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

処理中です...