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6 ツリーハウスは不思議ハウス 1
しおりを挟む「───ヨウガ。朝御飯、出来たぞ」
「はーい、今行く!」
ルーカスが出来上がった朝食のプレートをリビングのテーブルに並べながら二階にいるヨウガに声をかける。
ソレに返事をしてパタパタと階段を駆け下りるヨウガの足音を聞きながら、コーヒーメーカーで淹れたてのコーヒーを注ぐ。
「ありがとう、ルーカス! 美味しそう!」
「簡単なものだけどね」
「いやいや、これだって加減とか難しいんだよ? 大体、ココの家電品を使いこなしてることが十分凄いってば!」
ヨウガがプレートの上のとろふわオムレツを指差して、更にコーヒーメーカーを差しながら言った。
「───カデンヒン・・・ああ、魔導具の事か? 初日にテーブルの上に取説が置いてあったから、ソレを熟読してその通りに使わせて貰ってるだけだぞ?」
「ソレが凄いんだって。俺なんかこんなに最新設備を見たときに、コレどう使うんだって頭を抱えそうになったもの」
その時を思い出したのか、若干遠い目をするヨウガに苦笑して食事を促す。
「まあまあ、冷めないうちに食べてくれ」
「あっ、ハイ。頂きまーす!」
「頂きます」
食事の挨拶をすると、オムレツを一口。
「・・・美味っ! ああ、チーズ入ってる・・・。俺、チーズ大好きなんだよねぇ。幸せぇ・・・」
些細な事で蕩けるような顔になるヨウガに、嬉しくも外には出せないな、と思うルーカス。
「それは良かった。スープもどうぞ」
「───んまっ!」
「コレも凄いよな。お湯を注ぐだけでスープが十数秒足らずで出来上がり、しかも美味い。ヨウガの前世の世界は便利な良いところだったんだな」
キッチンの保管庫に入っていた異世界の即席スープの素。
封を切ってカップに入れてお湯を注いでかき混ぜるだけで手軽に美味しいスープが出来上がる。
魔物の討伐遠征に持っていきたいくらいだ。
「まあね、魔法なんて無い世界だから色んな道具を発明してたよ。空を飛ぶ飛行機とか馬車の代わりにもっと速く走れる自動車・バイクとか。でも俺の国は特に食事に拘るお国柄で、美味いモノを追求しまくってたから、ちょっとお店に足を運べば色んな国の食べ物を食べられたよ」
「───それは、想像もつかないな」
ルーカスがポカンとしたのを見てヨウガが笑った。
「ははっ、俺からしたら色んな事が出来る魔法とか魔物の方が想像もつかないよ。だからお互い、分からないことは何でも口に出して分かり合おう? 人生、長いんだし」
「・・・そうだな。俺達はおそらく、どちらか長い寿命に合わさっているはずだから、本当に死ぬまで一緒だ」
「え、そうなのか? 良かったのか? 俺、どれくらい生きられるのか良く分かんないけど」
「『ハイヒューマン』だと聞いたが? おそらく俺と同等か、うーん、愛し子だからそれ以上かも?」
コレばかりは俺も分からんと言うので、アステナ神に聞いてみよう。
「神様───!」
『ホイ、何じゃ?』
「うおっ、何時も軽いな・・・じゃ無くて、直球だけど、俺達ってどれくらい長生きなの?」
『大体5000年くらいかの?』
「・・・・・・5000? 500とかで無く?」
『五千年じゃ』
「・・・・・・いや、漢数字にしなくても分かるわ。そっかー、5000年かー。じゃあルーカスは俺と一緒に死ぬの?」
『そうじゃな』
「・・・・・・良いの?」
これはルーカスに問いかけ。
「もちろん。嬉しいよ」
迷い無く笑って応えるルーカスにじわっと涙腺が緩む。
「ヨウガ」
「うっ、年取ると、涙腺が・・・・・・っ」
「いや、まだ18だろう?」
「───カミングアウトするけど、実は前世30歳でした。オジサンでした───! ・・・幻滅した?」
「何で? それなら俺は124歳だけど、幻滅する?」
「・・・・・・エルフの124って、オジサンじゃ無いじゃんか・・・・・・」
「なら、ヨウガも気にするな。5000年に比べたら赤ん坊だろ?」
パチンとウインクする茶目っ気たっぷりなルーカスに気が弛むヨウガ。
「───ふっ、そうだな」
『───何やら纏まったようだの。ワシはお暇するからの。また何かあれば呼ぶと良い』
「「ありがとうございます」」
脱線したと、我に返って食事を再開する二人の表情は明るかった。
食後、改めてツリーハウスを探検する事になった。
「だって、ほとんど、ベッドから動いてねえもん。誰かさんのせいで!」
「誰のことかな?」
にんまり笑い合う二人だが、先にヨウガが折れた。
「───アホらし。もう良いからサッサと確認するよ!」
「ちなみに俺は初日に済ませてあるが」
「―うが───っ!! なんてこと言うの、この男は?!」
「はっはっは」
何か、ルーカスには一生勝てない気しかしない。
ブスッとむくれるヨウガも可愛いとニコニコ顔のルーカスだった。
※諸事情でちょっと手が空く時間が少ないのでコレも含めて、当分、他作品も更新滞りがちになってます。
スミマセン。気長にお待ち下さいませ(>_<)
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