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2 まったり過ごす予定です
しおりを挟むざっと見たステータスは、名前が『カンナヅキ・ヨウガ』とカタカナになっただけで変わらず。
歳が18歳なのは地味に嬉しい。
両親も生きていて、一番幸せだったときだ。
思い出してしんみり・・・。
ところで種族ってなんぞや?
そこらへん聞いてなかったな。
もしかしてこの世界、獣人とかエルフとかいるんじゃなかろうか?
凄いワクワクドキドキ。
いつか会えると良いな・・・俺が引き籠もってなければ。
で?
俺は『ハイヒューマン』・・・・・・。
どゆこと?
タッチ出来たので触ると、詳細が出た。
何々、人族の上位互換の種族で、限界突破した超人族の事・・・。
・・・・・・へえ。
俺、いつの間にか人間辞めてたんだ。
アレか、長い社畜生活でヤバい方に限界突破しちゃったんだな。
わはははっ!!
「───って、んなわけあるか───ッ!!」
思わず自分でツッコんじゃったよ!
「・・・・・・まあ、悪いことじゃ無いみたいだし、良かったと思っとこう。・・・ん? え? ハイヒューマンは寿命がエルフ並み? いや、エルフの寿命知らんがな」
エルフって、物語だと綺麗で美人な森の人で何百年とか生きるってイメージ。
「───ええ・・・数百年から数千年・・・?」
ステータスさんがもれなく教えてくれました。
そんなに長生きして如何すんの・・・・・・?
一人だとそんなに生きててもつまらんと思うが・・・・・・。
「まあ、なっちゃったモンは仕方ない。その時に考えよう、ウン」
長い社畜生活で身についたスルースキルはここでも役立つ。
「スキルは多すぎてアカン、無理。もう、確認はあとあと。ツリーハウスに行こう。寝たい」
若い身体になって異世界転生しても、長年の不摂生のダメージは回復できてなかったようだ。
───神様、そこは回復しておいて欲しかったなあ。
独りごちるが、まあ時間はいっぱいあるし、安心安全な住処もあるし。
心置きなく惰眠を貪ろう、ウン。
・・・・・・そして大樹を見上げたら勝手に『鑑定』してくれちゃって。
そういやスキルにあったな。
んで、鑑定結果がコレ・・・。
『世界樹の若木』
───突っ込みどころ満載なんですけど、神様ー?!
ナニコレ、世界樹って何?
え? 世界を安寧に導く?
魔法の元を世界中に生み出して行き渡らせる?
・・・・・・なしてそんなに大層な樹にツリーハウスなんて作った、神様?!
聖域だから、安心安全?
・・・・・・おっけー、俺のためなのね?
もう至れり尽くせりです、ホント。
天涯孤独になってから初めてこんなに親切にされて目から水が・・・・・・。
嬉しくてほんわかしたままツリーハウスの寝室に入るとキングサイズの天蓋付きベッド。
思わず飛び乗ってボンボンと跳ねる。
「うわあ・・・・・・サイコー・・・もう・・・・・・」
おやすみ3秒で夢の中。
慢性的な睡眠不足のせいで死ぬほど睡眠を欲した身体が急激に休息を求めて、結果、数日間眠りっぱなしだったらしい。
そう言ったのは、俺が惰眠を貪っている間にどうやって入ってきたのか、気付くとベッドで一緒に横になって寝ていた男。
───そういや、鍵かけてなかった。
誰も来ないだろうと高をくくっていたからな。
思わず咄嗟に衣類の乱れを確認してしまった。
だって俺はネコだから。
最近、向こうでも認知されつつある同性愛者。
激務でそんな相手もいたこと無いけど。
さすがにヤられたら気付くだろう。
思わずジト目で睨むと笑われた。
「無用心ですよ?」
「人ンちに不法侵入したヤツが言うんじゃねえ!」
「ですよねえ」
のほほんとお茶を飲みながら穏やかに話すこの男、聖騎士なんだって。
聖騎士とはその名の通り、悪を滅するのに特化した騎士の事。
その身に聖魔法を使うことの出来る魔力を多く宿していて、なおかつ剣技に優れている騎士の称号だそう。
だいぶ昔に魔王をやっつけた勇者も聖騎士だったんだって。
「・・・凄いんだな」
「今は魔物の討伐くらいのものです。凄くはないですよ」
「いやいや、ここに来ただけでも凄いって」
そう。
どうやって来たのかと問えば、魔法で翔んできたらしい。
───え?
目視でも分かるとおり、めちゃくちゃ遠かったよ?!
あの距離をずっと翔んできたの?!
「・・・・・・ほへえ・・・」
思わずマヌケ面を晒してしまった。
オイコラそっぽ向くほど酷いかよ?
ちなみに彼の名はエイダン・ルーカス。
この前124歳になったばかりのエルフ。
───そう、エルフだったんだよ!
地球での定番が細くて美人で魔法が得意で、弓の扱いが上手い狩人だったからさ、思わず三度見くらいしちゃったよ!!
確かに耳は長くて尖ってたけども。
薄い色の金髪に翡翠色の瞳。
男らしさのあるキリッとした顔立ち。
体格は細マッチョ、かな?
対する俺は、母に似て女顔でひょろひょろ。
黒髪に隔世遺伝の蒼い瞳。
母方の祖母がイギリス人だったそうだ。
───で、そんな聖騎士様がなぜこんな島にやって来たのか?
偶然じゃ無いだろう?
だってこの島、元々魔王によって蹂躙されてこんなにみみっちく、草木もろくに生えない荒れ地になって人っ子一人居ないんだよ。
わざわざ海を越えて来る理由が無い。
「何で、こんな辺鄙な島に来たの?」
そんな俺のもっともな疑問にニコッと人好きのしそうな笑顔で応えたルーカス。
「つい先日、天啓を得たので」
「・・・天啓? ・・・・・・まさかアステナ様?」
「おや? その様子じゃ何かご存知の様子」
「・・・・・・」
俺は無言でステータスを開いた。
どうやら注意書きに自分以外には見えないようになっていると書いてあったので。
なのでルーカスから目を逸らしてステータス画面を穴が開くほど見つめる。
最初に良く確認しとけば良かったと後悔しても後の祭り。
睡眠の欲求に負けたこの前の自分が恨めしい。
───ぐぬぬ・・・・・・っ!
そう、俺のステータスに何故かあったアステナ神の愛し子という称号。
詳しく知りたいと思えばパッと切り替わった。
ナニナニ・・・・・・。
【『アステナ神の愛し子』
神が自ら認めた神子。
存在するだけで世界の安寧に繋がる、世界樹と同じ役割を持つ愛し子の事。
幸せな一生が送れるように番いと呼ばれる絶対的な伴侶が存在する。魂レベルで惹かれあう者で、離れることは不可能。寿命を共にし、死が2人を別つまで生涯を共にする。】
チラッとルーカスを横目で見れば優しく微笑まれた。
つまりはそういうこと。
───オイコラ神様!!
何してくれちゃってんの?!
何だよ愛し子って、何だよ番いって!!
勝手に結婚相手決めないでくれます?!
俺は頭を抱えて思わず叫んだ。
「アステナ様───!! 説明求むーっ!!」
『───おお、意外と気付くのが遅かったの』
「遅かったの、じゃねえよ! 何なのコレ、俺に拒否権無いの?!」
『無いの』
「うが───!! じゃあなに、この聖騎士様が俺の番い?! 伴侶?! 結婚相手?!」
『そうじゃ。長い人生、良く励めよ』
───何を?!ってナニですよねぇ───?!
異世界転生して僅か数日で結婚なの、俺ェ・・・。
マジかよ!!
「コレから生涯、よろしくお願いしますね。ヨウガ」
腰にクル低くて耳障りの良い声で囁かれて、俺は逃げられないことを悟った。
───それでも最後の悪足掻きとばかりに細やかな抵抗を試みた結果、自分で自分を追い込むことになるとは、この時の俺は露ほども思わなかったのだったが・・・・・・。
※次回、R18予定です。
3話じゃ終わらないかもしれません・・・。
書き上がったら待たずにじゃんじゃん投稿しますよ!
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