荒れ地に咲く一輪の花

エウラ

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1 異世界転生します

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すっかり日付の変わった深夜───。


コンビニの灯りが誘蛾灯のようにふらふらとくたびれた男を誘う。


いわゆるブラック企業に勤める社畜サラリーマンの男、神無月陽華かんなづきようが・29歳。
いや、終電を逃して日付が変わったのでもう30歳か。

───30歳まで童貞だと魔法使いになれるんだっけ?
あれ、賢者だったか?

連日連夜、サービス残業のそんな日々に疲れ果てて、寝不足の頭はもう思考を放棄していた。

世間一般には大事な誕生日だろうが、両親も早世し、親戚もなく友人と呼べる輩もいない。
天涯孤独の身だ。
祝ってくれる人はいない。

自分には縁の無いどうでも良いことだと考えながら、とりあえず何か買って口にしなければ死ぬ、なんてぼんやり歩いていたら、急に突風が吹いた。

ヘロヘロの細い体は簡単に吹き飛ばされ、陽華はコンビニ前の道路側に倒れた。

そこに運悪く深夜配送のトラックが突っ込み。

陽華があっと思う間もなく、ぐちゃっとイヤな音が耳に入り、陽華の意識はブラックアウトした───。


次に目覚めると、巷で聞く真っ白い空間で、神様と名乗るお爺さんが土下座していた。

『すまなんだ!! ワシのせいで其方は死んでしもうた!!』
「───はあ・・・・・・」

そのお爺さん神様の言うことには、あの突風は神様が着地点を間違えたために起こった現象だったのだとか。

いわゆる異世界の神様だというお爺さん神様はちょうど地球に視察に来ていた所で、コンビニに興味を惹かれて、少し離れた場所に下りようとして座標を間違え、陽華のすぐ側に下りちゃったらしい。

それで辺りに突風が吹き荒れて陽華が道路に倒れ、トラックに轢かれてグチャ・・・。

即死だったそうだ。

「───はあ、どうせ死んでも嘆く人はいないですし・・・・・・ああ、会社は使える社員が一人減ってそういう意味では嘆くかも・・・。ははっ、ざまぁみろ」

自嘲気味に言った後、ブラックな仕事をしなくて済むと、満面の笑みで笑った。

神様はそこらへんも知ってるのか、複雑そうな顔だったが。

『それでな、地球の神にお願いしたら、ワシの世界に転生してやってくれと言われての。其方が良ければワシの世界に転生してみないか? ちなみに剣や魔法がある世界だ。魔物が棲むが、魔王は勇者によってすでに滅ぼされておって、割と平和な世界になっているから安心じゃぞ』
「───それって、俺も魔法とか使えるんですか? 良く聞く異世界転生とかって、魔力無しで使えない、ガックリって」

そういうも結構聞いたからさ。

『ないない。其方が死ぬ前に考えてた童貞云々とは違うがの、其方は元より魔法使い向けの魔力量じゃ。お詫びに色々便利なスキルも付け放題で、あと若くしてやるからの!』
「え、それは嬉しいです。それならそちらの世界でのんびりまったり過ごしたいです。何が良いのか分からないんで任せても良いですか?」
『おお、そうか! 任せておけ! あとでステータスと唱えて確認すると良いぞ。それまで休むと良い』
「───はい・・・」

神様はウキウキしだして、俺は眠くなってきたので床に寝転んであっと言う間に夢の中。
普段の不養生のせいでボロボロだったので。

『・・・・・・うむ。不憫じゃの。お詫びだから役立つモノを目一杯詰め込んでやろう。あとは転生先は・・・・・・あそこが良いな。面倒くさい人との交流もほぼ無い場所だ。一人でゆっくり過ごせるだろう』

そう言って本当に目一杯スキルを授けて、歳も18歳に戻して。

『───ヨシ。これで、あそこの大樹にツリーハウスを設置して、島に結界を張って、と』

───うむ、良かろう。

『では、転生させるぞ・・・・・・っと、聞こえておらんな。すまんかったの。第二の人生、心穏やかに・・・・・・』

そこで愛する者を見つけて幸せになると良い。




───そんなことをお爺さん神様が言ってた気がする。

次に目覚めたら、小さい無人島並みの小高い、海に囲まれた島にいた。

遥か先には大きな大陸が見えるが、簡単には渡れなさそうだ。

「・・・・・・まあ、一人でゆっくり過ごすにはちょうど良いな」

仕事でも人との会話も交流もほぼ無かったし。
───ただ、何もなさ過ぎて生活できるのかな?

『目覚めたようだの。スキルはステータスで確認しておくれ。あと、大樹にツリーハウスを設置しておいたからな。其方の地球での一般的な生活水準を参考に、地球の食べ物もこちらの食べ物も冷蔵庫や保存庫から無限に出したり仕舞ったり出来るように魔導具にしておいたので安心せい。衣服はさすがにこの世界のデザインになるがね』
「え、至れり尽くせりです! ありがとうございます、神様。・・・そう言えばお名前、聞いてませんね」

もの凄く今更だったが。

『あ、そうじゃった。この世界の名前でアステナと言う。何時も見守っておるから、何かあれば呼ぶと良いぞ。声だけだが聞こえるのでな』
「助かります。ありがとうございます、アステナ様」
『うむ。のんびりと過ごすと良い。ではな』

アステナ様の声が消えて、ひと息つく。

───さて、まずはステータスの確認だな。

陽華は軽い気持ちで唱えた。

「ステータス」

目の前に現れた半透明のタブレットには現在の陽華のステータスが表示されたが・・・・・・。

「───コレって、いわゆるチート、だよな」

呆気にとられたあと、苦笑してそう言った。









※終わらないので前後もしくは前中後にしようと思います。






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