上 下
17 / 20

16 検査結果 4

しおりを挟む
ササナギに張り倒されて再び我に返るティメール師団長が、誤魔化すようにゴホンと咳払いをした。

今更遅いよ?

「失礼しました。ええと、何ですっけ? あ、そうそう。とにかく器は凄いんですが先日まで隷属魔法で縛られていた弊害でしょう。今のムツキ様の体内魔力量はほんのわずかしかありません」
「……よく分からないんだけど、魔力って普通はどういう風に回復させるの? さっきナツメは休まないと回復しないからって言ったよね?」

ティメール師団長の言うことは何となく理解できた。
そもそも最初に捕まったときに魔法が使えないって決めつけられてたから、もしかしたら隷属魔法で魔力回復できないような縛りがあったのかもしれない。実際、魔導具はおろか生活魔法すら使えなかったわけだし。

今となってはどうだったのかなんて分からないけれど。

そして元々この世界の住人じゃない俺は基本的な常識なんて全然分からないから、ミリィによるセッ……セックスでミリィから、つまり致した相手から分けて貰うっていうのしか知らないんだよね。

俺の問いに応えてくれたのはミリィとササナギ。

「あー、上限にもよるが基本的には食事や睡眠でほとんど回復する。あとは魔力回復薬MPポーションというモノがあるが一度に使用できる上限が決まっているんだ」
「MPポーションはそれなりに強い薬で、体質に合わなかったり飲み過ぎると、人によっては吐き気や頭痛などを起こす。二日酔いみたいなモノだな」

ああ、エナジードリンクとお酒を合わせたような? やっぱり適量があるんだな。

「ただ、奴隷だったときはこの世界に身体が馴染んでいなくて魔力がゼロだったからなんともなかったが、今は魔力が解放されただろう?」
「うん」
「魔力の器がちゃんと出来たことで今度は最低コレだけはないと魔力枯渇で危険だという状態になっているんだ。ただ、初日に私が魔力を多く含む精を注いで私の魔力がムツキに蓄えられていたからぎりぎり大丈夫だったらしい」
「……ふーん?」

つまり、暴走した昨日の俺の魔力は自前じゃなくてミリィから貰ったモノだったってことか。
俺は今、自分の貯金がゼロってことね。

「でも昨日の魔力暴走で私の魔力を使い切ってしまった。その上ムツキは上限が桁違い過ぎて、自然回復を待っている余裕がなくて命の危険があったから───」
「───ああ、それで夕べのセックスアレに繋がった訳か。……なるほど」

アレは手っ取り早く安全に魔力を譲渡して回復させる手段だったわけだ。
つまり単なる医療行為ってことで……。何だ、そういうことか。

「何を思ってるのか何となく分かるが。精を注ぐのだって魔力の相性があって、拒否反応で具合が悪くなったり不快感や嫌悪感も出る場合があるんだぞ」
「───えっ!? 誰でもいいんじゃないのか!?」

ミリィが眉にしわを寄せてものすごく不本意そうな声で付け足す。
それを聞いた俺は思わず叫んでいた。

「そんなわけあるか。誰にでもするわけないだろう。愛あればこその行為だ。今までもないけど、コレから一生ムツキ以外にはしないよ」

そう言うミリィのあとに、それまで黙って聞いていたナツメが顔を赤くして話しかけてきた。

「……あの、ムツキはミリオネア様とは、その……拒否とか拒絶とか、大丈夫だったんでしょ?」
「え? そりゃあ、別に何とも……。何ならとても気持ちい───って違う! 今のなし!」

思わず口が滑った。恥ずかしい!

「それだよ、それ! 相性がよすぎると感じやすくて僕も……その、凄いんだよね───エッチアレが」
「……え、ええええ!? マジ!?」
「……マジ」

いくらこの五人プラス近衛騎士しかいないとはいえ、お互いの赤裸々な性生活の暴露に俺とナツメは羞恥でゆでだこ状態になったのだった。

反対に超冷静なミリィとササナギは優雅にお茶を口にしているし、ティメール師団長は和やかに俺たちの魔力の相性具合をたぶんノートにメモしてた。

近衛騎士は空気になって───いや生暖かい目で見ていたと思う。

「はいはい。独身の私にはとても耳に痛くて興味深い内容ですが、進まないのでココで仕切り直しましょう!」
「お前が言うな」
「話の進行を足止めした張本人だろうに」

ティメール師団長がノートを閉じて朗らかにそう言うとササナギとミリィがそうツッコミを入れた。

俺とナツメもハッとして、一度落ち着こうとお茶を飲む。

「まあまあ。それじゃあ次行きましょうか」

何とも言えない空気の中、全く気にした様子のないティメール師団長が手を打ってそう言った。

……この人、鋼の心臓の持ち主か、それともマイペース過ぎるのか。
ミリィ達もあまり気にしていないようだから俺も慣れないといけないのか……慣れるかな?

















*何とか今日は更新出来ましたが、コレから年末年始はたぶん不定期になります。他の作品もコミで。





しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。完結しました!

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

処理中です...