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本編
125 してやられた(sideイルミナ)
しおりを挟む「---で、何がどうなってああいうことになってたわけ?」
生徒会のテントに着くなり、ガオウが胡乱な目で見ながら低い声で尋ねてきた。
「---嵌められたんだ」
イルミナは、はぁ---っと深い溜息を吐きながら空いてる席にドカリと座る。
「へえ、イルミナがねえ・・・」
皆も興味津々でこちらを窺う。
アルフレッドは無言で続きを促す。
「陽希を注意しながら見廻りルートをまわっていた風紀委員の一人から、ちょうど借り物競走の頃に近くでトラブルが発生したと。他の風紀委員が応援に駆けつけたが、襲った襲わないで揉めてらちが明かないからって俺が呼ばれたんだ」
イルミナが眉間にシワを寄せた。
「---で、そこにアレが来て連れて行かれたって?」
ガオウがイラッとしたように言った。
いや、イラッとするのは俺の方だけど?!
「借り物のお題も知らんし、シチュエーションも分からん。そもそもトラブルの仲裁に忙しいと拒否したんだが、衆目を集めてしまって、強く出られなかった」
「・・・・・・あー、周りの目を使って拒絶出来ないように持っていったのか。大勢の人の中でアレが風紀委員長に借り物を頼んで、周りは色々と想像しちゃうよね。良くも悪くも目立つ存在だし。・・・なるほど、アレにしては考えてるな」
その様子を思い浮かべたのか、ガオウが渋い顔になった。
ルイス達も苦笑している。
「イルミナは真面目だからなあ」
「で、結局、トラブルはどうなったの?」
「イヤーカフに入った連絡では、俺が連れられて行ったらパタッと仲直りだとさ・・・馬鹿馬鹿しい。ちょっと調べたら、アイツの取り巻きに何かの見返りに喧嘩のフリを頼まれたらしいって・・・」
今頃は別室に連れて行かれて事情聴取の最中だろう。
「・・・あー、お疲れ様?」
ガオウが苦笑して労いの言葉をかける。
精神的な疲労が・・・・・・。
「全くだ。せめてもの意趣返しにアイツには指一本触れずにムスッと不機嫌顔でいてやった」
「あ、アレ、そういう意味だったの?」
「イルミナにしては珍しく顔に出してるなって思ってたけど、わざとだったんだ」
「・・・・・・そもそも演技でも何でも無く本気で嫌がっていたんだが?」
「「気持ちは分かる!」」
ルイスとルークが思わず叫んだ。
「アイツの媚びた目とか」
「媚びた声とか」
「「あざとウザい!!」」
アルフレッドを始め、うんうん頷いている。
「・・・・・・だろう? 本当に、サクヤと血が繋がっているのかと不思議でならん」
「元来の性質もあるのだろうが、育ち、だろうな。物心つく前からチヤホヤされていたんだろう? ソレが当然と刷り込まれて育ったんだ。悪いことだと認識していない」
「ソレが厄介なんだよな。無自覚ならサクヤの方がよっぽど良いな」
レックスの言葉に、やはり皆が頷いている。
---だって・・・。
「ただいま!」
「・・・・・・ッチ」
満面の笑みでスオウを姫抱っこしながらテントに戻ってきたサクヤを見て・・・。
「うんうん。これこれ」
「落ち着くわ・・・」
「無自覚ならこうでなきゃね」
「・・・そうだな・・・ふっ・・・」
「和むわ---」
「だろう?」
めいめいにつぶやく面々に疑問符いっぱいのサクヤと、何となく察したスオウがイラッとした。
「サクヤ、そこら辺にスオウを落として着替えておいで。体操着、戻ってきてるから」
「オイコラ落としてじゃねえよ!」
「あ、はい。名残惜しいけど、ゴメンね、スオウ」
「惜しくねえし!!」
そういってちゃんと椅子に降ろしたサクヤにツッコむスオウ。
周りは思わず笑った。
相変わらず、陽希の視線が向けられていたが。
風紀委員に更に注意を促して、様子見だな。
イルミナはこっそり溜息を吐いた。
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