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本編
117 一方その頃(side燈夜&灯哉&公爵家)
しおりを挟む「---またひと悶着ありそうだね」
執務室で独り言のように呟いているのは皇燈夜・・・皇国の皇帝だ。
『帝国で学園の体育祭があるそうだ。そこで何か企んでいるらしい』
「---はぁ。本当に何がしたいんだ? こちらの準備もまだ整っていないのに、また何かやらかすつもりなのか・・・罪状が増える一方だな」
『帝国の許可を得てこちらからもかなりの人数を送り込んでいる。心配はない』
「分かってはいるんだけどねえ。・・・ねえ、私はやはり、朔夜に嫌われているかな?」
少しの沈黙の後、応えがあった。
『強いて言えば無関心、だろうな。会った記憶もない伯父だが悪感情はないはず。理由が分かれば興味を持っては貰えるのでは・・・?』
「・・・・・・そっか。・・・まあ、引き続き頼むよ」
『御意』
天井から気配が消えた。
私の分身、灯哉。
影の道を歩ませてしまった、大切な双子の弟。
お前に頼ることしか出来ない不甲斐ない兄ですまん。
不甲斐ない伯父で・・・・・・すまん、朔夜。
---はぁ。
また燈夜は斜め後ろの思考になっているな。
俺はお前のためならばこの身を犠牲にすることも厭わないのに・・・。
朔夜の事だって心配するような事は無いだろうに。
ああ、前世の話を打ち明けられたら良かったのに。
だがそれは悪手だ。
知ったら燈夜は更に自分を追い込み、許せなくなるだろう。
だからこれは墓場まで持っていく。
その頃、皇公爵家では、色んな事が立ちゆかなくなり混乱を極めていた。
ありとあらゆる仕事が滞り、領地は代理人の采配でぎりぎり回っている状態。
当然だ。
全てを任せていた朔夜がいないのだから。
しかも廃嫡にしたので、今更呼び戻しも出来ない。
仕事を全くしてこなかった公爵達は書類の書き方すら知らないのだ。
「おい、金はどうした?! 何故無いんだ!」
「こちらに入った分はすでに奥方様がお使いになられました」
「じゃあ、次の夜会用の私の衣装代はどうなるんだ!」
「ございません! 何か宝飾品をお売りになさらないと、工面出来ません」
「な、何故こんな・・・」
全ては朔夜の手腕でぎりぎりまかなっていたのを知らぬからこそ。
「何故・・・・・・何故・・・?!」
公爵家はひたすら右往左往するだけだった。
一方、陽希に届くはずの小遣いも滞り始めていたが、その事にまだ陽希は気付いておらず徐々に没落の道を辿っていくのだった。
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