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本編
97 騎士団の厨房は大騒ぎ
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---騎士団の食堂は戦場だ。
誰が言ったか、まさしくその通りだと思う。
ここ騎士団の食堂は朝昼晩の他にも夜番の騎士達の為に夜中も開放されている。
だから料理人も交代で立つ。
まあ、夜番は人数も少ないため料理人も最低限の人数だが。
とにかく騎士達の人数もだが、食べる量も半端ない。仕込みも調理も大量だ。
だから厨房は昼間は修羅場と化す。
そんな中、量を減らしてくれだなんてふざけた事を抜かす野郎が居たことに、殺気立っていた厨房の俺達はイラッとして全員そいつを睨みつけた。
---が、次の瞬間、唖然とした。
めちゃくちゃ美人なんだけど!
誰あれ、何でこんな野獣?ばかりのむさ苦しい所に女神が居るのかな?!
厨房の中はこの瞬間だけ静まり返っていた。
「お忙しいのは重々承知の上なんですが、すみません。僕には多すぎて・・・残すのは勿体ないので減らして頂けると嬉しいのですが・・・」
そういって微苦笑した女神のなんて儚げな事か?!
よく見ると副団長のウルティマ様と大公家のスオウ様がいらっしゃる。
と言うことは女神も高貴な方!!
慌てて小さい皿に一般人の量を盛り差し出す。
「ありがとうございます」
と、副団長達と上官用のスペースに移動していった。
「・・・・・・綺麗な方でしたねえ」
「女神!!」
「・・・・・・料理長達、仕事をして下さい」
並んでいた騎士達にツッコまれて再開する料理長達はここでさっきの方の情報を貰った。
何と、先日皇帝陛下の養子となった第2皇子殿下とか!!
あんなに美人で男性とか!!
驚いたが、嬉しくもあった。
俺達のような使用人にまで丁寧に接して下さる、優しいお方。
スオウ様と一緒と言うことはきっとお二人は婚約者同士なのだろう。
チラッと見えただけだがお二人の親密さが伝わってきた。
副団長、お邪魔なのでは?
「大盛りで頼む」
「っエステル団長、いらっしゃいませ」
「彼の方はあちらか」
「あ、先程の方でしたら上官用の席に行きましたよ。第2皇子殿下なんですって? 綺麗な方でした」
「ああ、美人だがスオウ殿より強いぞ」
サラッと告げられた言葉にへえ、そうなんですねと相づちを打ちかけて、再び動きが止まる。
「・・・・・・スオウ様より?」
「ああ」
「・・・・・・団長達より強いというスオウ様より?」
「火竜を無傷で狩ってくるSランク冒険者だからな」
「火竜を? 無傷で?」
「そうだ。ああ、ありがとう。ではまたな」
呆然としながらも手は動いていたらしい。
団長が去って言った後に残された他の団員と俺達は暫く呆然としていた。
暫くして食器を返却口に戻しに来た殿下は、俺達に向かって微笑んだ。
「ご馳走様でした。とても美味しかったです。これからも美味しい料理を皆に食べさせてあげて下さいね」
ズキュ---ン!!!
厨房の皆が堕ちた。
その様子をサクヤ以外が見ていた。
『天然たらし』
団員達のサクヤの評価だった。
誰が言ったか、まさしくその通りだと思う。
ここ騎士団の食堂は朝昼晩の他にも夜番の騎士達の為に夜中も開放されている。
だから料理人も交代で立つ。
まあ、夜番は人数も少ないため料理人も最低限の人数だが。
とにかく騎士達の人数もだが、食べる量も半端ない。仕込みも調理も大量だ。
だから厨房は昼間は修羅場と化す。
そんな中、量を減らしてくれだなんてふざけた事を抜かす野郎が居たことに、殺気立っていた厨房の俺達はイラッとして全員そいつを睨みつけた。
---が、次の瞬間、唖然とした。
めちゃくちゃ美人なんだけど!
誰あれ、何でこんな野獣?ばかりのむさ苦しい所に女神が居るのかな?!
厨房の中はこの瞬間だけ静まり返っていた。
「お忙しいのは重々承知の上なんですが、すみません。僕には多すぎて・・・残すのは勿体ないので減らして頂けると嬉しいのですが・・・」
そういって微苦笑した女神のなんて儚げな事か?!
よく見ると副団長のウルティマ様と大公家のスオウ様がいらっしゃる。
と言うことは女神も高貴な方!!
慌てて小さい皿に一般人の量を盛り差し出す。
「ありがとうございます」
と、副団長達と上官用のスペースに移動していった。
「・・・・・・綺麗な方でしたねえ」
「女神!!」
「・・・・・・料理長達、仕事をして下さい」
並んでいた騎士達にツッコまれて再開する料理長達はここでさっきの方の情報を貰った。
何と、先日皇帝陛下の養子となった第2皇子殿下とか!!
あんなに美人で男性とか!!
驚いたが、嬉しくもあった。
俺達のような使用人にまで丁寧に接して下さる、優しいお方。
スオウ様と一緒と言うことはきっとお二人は婚約者同士なのだろう。
チラッと見えただけだがお二人の親密さが伝わってきた。
副団長、お邪魔なのでは?
「大盛りで頼む」
「っエステル団長、いらっしゃいませ」
「彼の方はあちらか」
「あ、先程の方でしたら上官用の席に行きましたよ。第2皇子殿下なんですって? 綺麗な方でした」
「ああ、美人だがスオウ殿より強いぞ」
サラッと告げられた言葉にへえ、そうなんですねと相づちを打ちかけて、再び動きが止まる。
「・・・・・・スオウ様より?」
「ああ」
「・・・・・・団長達より強いというスオウ様より?」
「火竜を無傷で狩ってくるSランク冒険者だからな」
「火竜を? 無傷で?」
「そうだ。ああ、ありがとう。ではまたな」
呆然としながらも手は動いていたらしい。
団長が去って言った後に残された他の団員と俺達は暫く呆然としていた。
暫くして食器を返却口に戻しに来た殿下は、俺達に向かって微笑んだ。
「ご馳走様でした。とても美味しかったです。これからも美味しい料理を皆に食べさせてあげて下さいね」
ズキュ---ン!!!
厨房の皆が堕ちた。
その様子をサクヤ以外が見ていた。
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団員達のサクヤの評価だった。
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