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本編
93 その頃の朔夜たち
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今日はギルドに火竜の報酬を貰いに行く日だったので、フル装備とまではいかないけどそこそこの装備を纏って出かけた。
先日、丸々納品したせいで高額になった報酬を用意するのに数日かかると言われて二つ返事で了承した。
それの支払いが整ったと連絡があり、今向かっているところだった。
そこへイヤな予感がしてスオウと顔を見合わせていたら、陽希に声をかけられたのだ。
相変わらず取り巻きの侍従達を連れている。
ウザいのでほとんど無視するようにギルド内に入ると、陽希達も入ってきて、一斉に視線を向けられてビクッとしていた。
「・・・なあ、あれ、絶対問題起こすよな」
「起こすだろうね。でも僕はフォローなんかしないよ。もう赤の他人だし。まあ、生まれた時から他人だったけど?」
そんなことを言いながら報酬の受け取り手続きをしていたら、陽希が思わぬ一言を言った。
おそらく冒険者及びギルド関係者を全員敵に回す地雷を踏み抜いた。
『冒険者なんぞに』
『惨めだな』
コレにはサクヤ達も殺気を漲らせて陽希達を睨んだ。
---何を言ってるんだ?
各地にあるギルドに所属する冒険者は、普段から魔獣や魔物の討伐をして数を減らし、スタンピードなどの有事には尽力して人々の暮らしを守っている。
それはひいてはその領の安全を守っているという事で・・・・・・。
ソレを全く分かって無いからこその発言だった。
「アイツ、出禁だな」
「当然。いや、殺っちゃってもいいかな!」
「・・・・・・お前も大概だな・・・」
スオウがブツブツと言ってるけど、何?
「---その発言は皇公爵家の総意と取っていいのかな?」
「ギルマス!」
「ギルマス?」
騒ぎを聞きつけたのだろう、それか誰かが呼びに行ったのかもしれない。
顔は微笑んでいるが、目が笑っていない。
これは相当頭にきているな。
「当然だ。次期公爵である僕の言葉は皇公爵家の言葉と同じだ!」
「・・・・・・そのお言葉、お忘れ無きように。ではこのままお引き取りを」
「・・・・・・はあ? 何で?!」
陽希が噛みついてくるが、当然だろう。
『冒険者なんぞに』って貶める発言してるんだから。
全ギルドを敵に回したのだ。
全く分かっていない陽希達を外に誘導して追い出している職員さん達。
凄い手際がいい!
格好いい!
「・・・やれやれ。話には聞いていたがとんでもない馬鹿だね。救いようのない阿呆だね」
深い溜息と共に吐き出された毒が辛辣だ。
お疲れ様です、ギルマス。
「元弟がすみません」
「いやいや、サクヤ殿のせいではないのだから謝る必要はないよ。皆分かってるから」
ね?と職員さん達を見渡すとにっこり笑った。
「そういうわけで、冒険者ギルドは今後一切、皇公爵領のギルドの関与を禁止する! 素材を流すこともしない!」
そう宣言をした。
すなわち、どんなに高い報酬を提示されようとも皇公爵領及び関連する事柄全てを拒否するということだ。
ギルドは基本的に国に属さない。よっていくら国の王でも強制することはできないのだ。
有事には協力をする場合もあったが、今回の決定はそれすらも拒否するもの。
皇公爵家は、今後、厳しい状況になるだろう。
魔物の魔石や素材はかなり一般的に流通している。それも冒険者ギルドから一切止めるのだ。
自領の騎士や傭兵などに頼るしかない。
陽希達の自業自得とはいえ、特に罪もない領民の生活に心苦しい思いでいたら、スオウが慰めてくれた。
「公爵家はどうしようもないが、皇国の皇帝は優秀だと聞いている。何とかしてくれるさ」
「・・・そうだね」
「じゃあ、収入も得たし、街探検しながらゆっくりしようぜ!」
「うん。僕は屋台の食べ歩きがしたいです!」
「よっしゃ、俺のおすすめを片っ端から制覇しよう」
そんなことを言いながらギルドを後にした。
先日、丸々納品したせいで高額になった報酬を用意するのに数日かかると言われて二つ返事で了承した。
それの支払いが整ったと連絡があり、今向かっているところだった。
そこへイヤな予感がしてスオウと顔を見合わせていたら、陽希に声をかけられたのだ。
相変わらず取り巻きの侍従達を連れている。
ウザいのでほとんど無視するようにギルド内に入ると、陽希達も入ってきて、一斉に視線を向けられてビクッとしていた。
「・・・なあ、あれ、絶対問題起こすよな」
「起こすだろうね。でも僕はフォローなんかしないよ。もう赤の他人だし。まあ、生まれた時から他人だったけど?」
そんなことを言いながら報酬の受け取り手続きをしていたら、陽希が思わぬ一言を言った。
おそらく冒険者及びギルド関係者を全員敵に回す地雷を踏み抜いた。
『冒険者なんぞに』
『惨めだな』
コレにはサクヤ達も殺気を漲らせて陽希達を睨んだ。
---何を言ってるんだ?
各地にあるギルドに所属する冒険者は、普段から魔獣や魔物の討伐をして数を減らし、スタンピードなどの有事には尽力して人々の暮らしを守っている。
それはひいてはその領の安全を守っているという事で・・・・・・。
ソレを全く分かって無いからこその発言だった。
「アイツ、出禁だな」
「当然。いや、殺っちゃってもいいかな!」
「・・・・・・お前も大概だな・・・」
スオウがブツブツと言ってるけど、何?
「---その発言は皇公爵家の総意と取っていいのかな?」
「ギルマス!」
「ギルマス?」
騒ぎを聞きつけたのだろう、それか誰かが呼びに行ったのかもしれない。
顔は微笑んでいるが、目が笑っていない。
これは相当頭にきているな。
「当然だ。次期公爵である僕の言葉は皇公爵家の言葉と同じだ!」
「・・・・・・そのお言葉、お忘れ無きように。ではこのままお引き取りを」
「・・・・・・はあ? 何で?!」
陽希が噛みついてくるが、当然だろう。
『冒険者なんぞに』って貶める発言してるんだから。
全ギルドを敵に回したのだ。
全く分かっていない陽希達を外に誘導して追い出している職員さん達。
凄い手際がいい!
格好いい!
「・・・やれやれ。話には聞いていたがとんでもない馬鹿だね。救いようのない阿呆だね」
深い溜息と共に吐き出された毒が辛辣だ。
お疲れ様です、ギルマス。
「元弟がすみません」
「いやいや、サクヤ殿のせいではないのだから謝る必要はないよ。皆分かってるから」
ね?と職員さん達を見渡すとにっこり笑った。
「そういうわけで、冒険者ギルドは今後一切、皇公爵領のギルドの関与を禁止する! 素材を流すこともしない!」
そう宣言をした。
すなわち、どんなに高い報酬を提示されようとも皇公爵領及び関連する事柄全てを拒否するということだ。
ギルドは基本的に国に属さない。よっていくら国の王でも強制することはできないのだ。
有事には協力をする場合もあったが、今回の決定はそれすらも拒否するもの。
皇公爵家は、今後、厳しい状況になるだろう。
魔物の魔石や素材はかなり一般的に流通している。それも冒険者ギルドから一切止めるのだ。
自領の騎士や傭兵などに頼るしかない。
陽希達の自業自得とはいえ、特に罪もない領民の生活に心苦しい思いでいたら、スオウが慰めてくれた。
「公爵家はどうしようもないが、皇国の皇帝は優秀だと聞いている。何とかしてくれるさ」
「・・・そうだね」
「じゃあ、収入も得たし、街探検しながらゆっくりしようぜ!」
「うん。僕は屋台の食べ歩きがしたいです!」
「よっしゃ、俺のおすすめを片っ端から制覇しよう」
そんなことを言いながらギルドを後にした。
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