93 / 133
本編
90 ジスとギルマスとマスター
しおりを挟む
久しぶりにローゼンのギルドに顔を出した俺は、酒場で昼飯を食うスオウに気付き声をかけようと近付いた。
・・・が、めちゃくちゃ美味そうな匂いと向かいに座っている美人に思わず足を止めていた。
二人とも絶対気付いているだろうに、俺の方を見もしない。
それでも俺が凝視し続けていたからか、美人がウザそうな雰囲気を隠そうともせずにちらっと見てひと言。
「・・・・・・何か?」
ゾクッとした。無表情で抑揚のない声。
悪い意味で背筋が震えた。それをAランクの矜持で堪える。
「いや、美味そうだなと思って」
当初の目的を話せばすげなく断られ、スオウにも面倒くさそうに紹介?され。
挙げ句にデートだから邪魔するなって・・・。
スオウに婚約者だなんて。しかも『夜叉姫』。
色々と驚いてるうちに二人はギルドから出て行ってしまった。
酒場のマスターが苦笑しながらジスに声をかける。
「もっと早くここにいれば面白いものがみられたぜ?」
「・・・何だよ」
カウンター席に座ってエールを頼む。
今日は顔を出しただけだからな。飲むぜ。
「朝、スオウ殿と『夜叉姫』に絡んだバカがいてな、ギルマスに冒険者資格を剥奪されてた」
「・・・・・・ほう?」
「その後、難易度が高くて塩漬けになってた火竜の素材納品の依頼を受けたんだが、30分もせずに火竜を丸々、無傷で狩ってきた」
「・・・・・・は?」
「納品先の魔導具研究所では狂喜乱舞だったらしい」
「・・・・・・」
スオウも話に聞く『夜叉姫』も規格外だとは思っていたが、少し盛ってないか?
「盛ってないよ」
「って、ギルマス?!」
俺の心を読んだように急に現れたギルマスに驚く。
マスターは平然としているので、気付いていたんだろう。
「さすがに無傷の火竜は初めて見たよ。ギルド内は大騒ぎだった。しかも夜叉姫一人で魔法で倒したそうで、次は体を動かしたいから討伐系のだって張りきって出かけたよ」
「ええ、じゃあさっき出てったのは」
「ガララビ亜種討伐だって」
「---はあ?!」
ギルマスもマスターも苦笑している。
体を動かしたいって理由で受ける依頼じゃないよな?
亜種だぞ!
「あの二人なら造作もないだろうね」
そう言ったギルマスの言葉通りに、それから1時間もかからないうちに帰ってきた二人は解体場にガララビ亜種をドンと出し、ギルマスにバジリスク化してるって言って確認を取り。
報酬を上乗せされて喜んで帰って行った。
「---マジか・・・・・・」
さすがSランク二人。
俺もAランクでそこそこ強いって思ってたけど次元が違ってたわ。
比較にならなかった。
「サービスな」
そういってマスターがナッツを小皿にのせて出してくれた。
若干やさぐれていた俺はありがたく貰い、エールのおかわりと共にカリコリ摘まんだ。
「あの二人を同じ人間だと思わないことさ」
「味方だと心強いが、敵に回したら国どころか世界が滅ぶだろうな」
「・・・・・・確かに」
「でもまあ、大丈夫だと思うよ。スオウ殿はここ大公家の令息だし、サクヤ殿は皇子殿下だから」
「・・・・・・え?」
何か爆弾発言を聞いた気が・・・・・・?
スオウは有名だから知っているが、サクヤは初見だった。
夜叉姫ってだけでも凄いのに、皇子殿下?!
「今は非公表だから内緒ね?」
・・・・・・いや、内緒ね?じゃねえ---!
内緒なら自分の胸にしまっとけよ!
俺を巻き込むな!
色々とついてない感じのジスだった。
・・・が、めちゃくちゃ美味そうな匂いと向かいに座っている美人に思わず足を止めていた。
二人とも絶対気付いているだろうに、俺の方を見もしない。
それでも俺が凝視し続けていたからか、美人がウザそうな雰囲気を隠そうともせずにちらっと見てひと言。
「・・・・・・何か?」
ゾクッとした。無表情で抑揚のない声。
悪い意味で背筋が震えた。それをAランクの矜持で堪える。
「いや、美味そうだなと思って」
当初の目的を話せばすげなく断られ、スオウにも面倒くさそうに紹介?され。
挙げ句にデートだから邪魔するなって・・・。
スオウに婚約者だなんて。しかも『夜叉姫』。
色々と驚いてるうちに二人はギルドから出て行ってしまった。
酒場のマスターが苦笑しながらジスに声をかける。
「もっと早くここにいれば面白いものがみられたぜ?」
「・・・何だよ」
カウンター席に座ってエールを頼む。
今日は顔を出しただけだからな。飲むぜ。
「朝、スオウ殿と『夜叉姫』に絡んだバカがいてな、ギルマスに冒険者資格を剥奪されてた」
「・・・・・・ほう?」
「その後、難易度が高くて塩漬けになってた火竜の素材納品の依頼を受けたんだが、30分もせずに火竜を丸々、無傷で狩ってきた」
「・・・・・・は?」
「納品先の魔導具研究所では狂喜乱舞だったらしい」
「・・・・・・」
スオウも話に聞く『夜叉姫』も規格外だとは思っていたが、少し盛ってないか?
「盛ってないよ」
「って、ギルマス?!」
俺の心を読んだように急に現れたギルマスに驚く。
マスターは平然としているので、気付いていたんだろう。
「さすがに無傷の火竜は初めて見たよ。ギルド内は大騒ぎだった。しかも夜叉姫一人で魔法で倒したそうで、次は体を動かしたいから討伐系のだって張りきって出かけたよ」
「ええ、じゃあさっき出てったのは」
「ガララビ亜種討伐だって」
「---はあ?!」
ギルマスもマスターも苦笑している。
体を動かしたいって理由で受ける依頼じゃないよな?
亜種だぞ!
「あの二人なら造作もないだろうね」
そう言ったギルマスの言葉通りに、それから1時間もかからないうちに帰ってきた二人は解体場にガララビ亜種をドンと出し、ギルマスにバジリスク化してるって言って確認を取り。
報酬を上乗せされて喜んで帰って行った。
「---マジか・・・・・・」
さすがSランク二人。
俺もAランクでそこそこ強いって思ってたけど次元が違ってたわ。
比較にならなかった。
「サービスな」
そういってマスターがナッツを小皿にのせて出してくれた。
若干やさぐれていた俺はありがたく貰い、エールのおかわりと共にカリコリ摘まんだ。
「あの二人を同じ人間だと思わないことさ」
「味方だと心強いが、敵に回したら国どころか世界が滅ぶだろうな」
「・・・・・・確かに」
「でもまあ、大丈夫だと思うよ。スオウ殿はここ大公家の令息だし、サクヤ殿は皇子殿下だから」
「・・・・・・え?」
何か爆弾発言を聞いた気が・・・・・・?
スオウは有名だから知っているが、サクヤは初見だった。
夜叉姫ってだけでも凄いのに、皇子殿下?!
「今は非公表だから内緒ね?」
・・・・・・いや、内緒ね?じゃねえ---!
内緒なら自分の胸にしまっとけよ!
俺を巻き込むな!
色々とついてない感じのジスだった。
91
お気に入りに追加
1,087
あなたにおすすめの小説

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

箱庭
エウラ
BL
とある事故で異世界転生した主人公と、彼を番い認定した異世界人の話。
受けの主人公はポジティブでくよくよしないタイプです。呑気でマイペース。
攻めの異世界人はそこそこクールで強い人。受けを溺愛して囲っちゃうタイプです。
一応主人公視点と異世界人視点、最後に主人公視点で二人のその後の三話で終わる予定です。
↑スミマセン。三話で終わらなかったです。もうしばらくお付き合い下さいませ。
R15は保険。特に戦闘シーンとかなく、ほのぼのです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。


拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
────────────
※感想、いいね、お気に入り大歓迎です!!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる