月の至高体験

エウラ

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本編

90 ジスとギルマスとマスター

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久しぶりにローゼンのギルドに顔を出した俺は、酒場で昼飯を食うスオウに気付き声をかけようと近付いた。
・・・が、めちゃくちゃ美味そうな匂いと向かいに座っている美人に思わず足を止めていた。

二人とも絶対気付いているだろうに、俺の方を見もしない。
それでも俺が凝視し続けていたからか、美人がウザそうな雰囲気を隠そうともせずにちらっと見てひと言。

「・・・・・・何か?」

ゾクッとした。無表情で抑揚のない声。
悪い意味で背筋が震えた。それをAランクの矜持で堪える。

「いや、美味そうだなと思って」

当初の目的を話せばすげなく断られ、スオウにも面倒くさそうに紹介?され。
挙げ句にデートだから邪魔するなって・・・。

スオウに婚約者だなんて。しかも『夜叉姫』。

色々と驚いてるうちに二人はギルドから出て行ってしまった。
酒場のマスターが苦笑しながらジスに声をかける。

「もっと早くここにいれば面白いものがみられたぜ?」
「・・・何だよ」

カウンター席に座ってエールを頼む。
今日は顔を出しただけだからな。飲むぜ。

「朝、スオウ殿と『夜叉姫』に絡んだバカがいてな、ギルマスに冒険者資格を剥奪されてた」
「・・・・・・ほう?」
「その後、難易度が高くて塩漬けになってた火竜の素材納品の依頼を受けたんだが、30分もせずに火竜を丸々、で狩ってきた」
「・・・・・・は?」
「納品先の魔導具研究所では狂喜乱舞だったらしい」
「・・・・・・」

スオウも話に聞く『夜叉姫』も規格外だとは思っていたが、少し盛ってないか?

「盛ってないよ」
「って、ギルマス?!」

俺の心を読んだように急に現れたギルマスに驚く。

マスターは平然としているので、気付いていたんだろう。

「さすがに無傷の火竜は初めて見たよ。ギルド内は大騒ぎだった。しかも夜叉姫一人で魔法で倒したそうで、次は体を動かしたいから討伐系のだって張りきって出かけたよ」
「ええ、じゃあさっき出てったのは」
「ガララビ亜種討伐だって」
「---はあ?!」

ギルマスもマスターも苦笑している。
体を動かしたいって理由で受ける依頼じゃないよな?
亜種だぞ!

「あの二人なら造作もないだろうね」

そう言ったギルマスの言葉通りに、それから1時間もかからないうちに帰ってきた二人は解体場にガララビ亜種をドンと出し、ギルマスにバジリスク化してるって言って確認を取り。

報酬を上乗せされて喜んで帰って行った。

「---マジか・・・・・・」

さすがSランク二人。
俺もAランクでそこそこ強いって思ってたけど次元が違ってたわ。
比較にならなかった。

「サービスな」

そういってマスターがナッツを小皿にのせて出してくれた。
若干やさぐれていた俺はありがたく貰い、エールのおかわりと共にカリコリ摘まんだ。


「あの二人を同じ人間だと思わないことさ」
「味方だと心強いが、敵に回したら国どころか世界が滅ぶだろうな」
「・・・・・・確かに」
「でもまあ、大丈夫だと思うよ。スオウ殿はここ大公家の令息だし、サクヤ殿は皇子殿下だから」
「・・・・・・え?」

何か爆弾発言を聞いた気が・・・・・・?

スオウは有名だから知っているが、サクヤは初見だった。
夜叉姫ってだけでも凄いのに、皇子殿下?!

「今は非公表だから内緒ね?」

・・・・・・いや、内緒ね?じゃねえ---!
内緒なら自分の胸にしまっとけよ!
俺を巻き込むな!

色々とついてない感じのジスだった。


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感想 28

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