月の至高体験

エウラ

文字の大きさ
上 下
84 / 133
本編

81 ひ○狩り行こーぜ!! その壱

しおりを挟む
帰省初日に抱き潰されたサクヤは、結局次の日は治癒魔法を使っても腰が抜けていてベッドの住人と化し、スオウは邸中の人から大ブーイングを貰った。

しかし楽しそうにサクヤのお世話をしていたので、今回も『反省はするが後悔はしない』のだろう。

抱き潰されたサクヤは別に怒ってはいなかったが、せっかくの休暇を一日寝て過ごしてしまったので、体を動かしたくてスオウにこの街の冒険者ギルドに連れて行って貰う約束をした。

野外授業からの実技試験でどうにも一狩りしたくて仕方がなかったのだ。

ストレス発散ともいう。

帝国のギルドに興味があったのでもの凄く楽しみにしていた。


そして次の日。

やって来ました、冒険者ギルド!

僕達は野外授業の時の軽装備の防具にスオウはロングソード、僕は妖刀ムラサメ。
軽装備と言っても素材はね、Sクラス級の物だけども。
そこに二人共フードコートを羽織っている。
もちろん温度調節機能付きです。暑くても寒くてもいつでも快適、適温だ。

それにしてもさすが大公家お膝元のギルドだけあって建物は大きいし何より清潔感がある。

荒くれ者の出入りが違和感ありまくりな様式である。

大きな扉を軽く押し開いて足を踏み出す。


「俺はここで冒険者登録して、腕を磨いたり難しいクエストとか受けてて職員とも顔馴染みだから心配いらないよ」
「そうなんだ。そういえばスオウの冒険者ランクって?」
「Sランクだよ」
「おお、やっぱり凄いねスオウって」
「そういうお前だってSだろう」
「まあねえ。登録出来る10才からガンガン依頼熟して、ある程度ランクアップしたら生活の為に高報酬の依頼受けまくってたからじゃないかな?」

領地経営で忙しくて最近は余り活動出来てなかったなあ。

そんな会話をしながら依頼書を貼り出してる掲示板クエストボードに向かっていると、不意にガタイのいい冒険者風な男が前を遮ってきた。

「おいおい、こんな所にガキが何のようだあ?!」

うわー、久々に絡まれた。面倒くさ。
・・・とスオウが思っていたら、サクヤが目をキラキラさせていた。え?

「ギルドで絡まれるテンプレだ」
「はあ?」
「物語では大抵、ギルドで絡まれるんだよ。ガキは引っ込んでな、みたいな。皇国ではインビジブルで姿を現さなかったから、絡まれた事なかったんだよね」

ウキウキして言うことか?
そうこうしてる間もいきり立つ男。
面倒くせえ。

スオウはフードを取った。サクヤもそれに倣ってフードを下ろす。

美貌の二人が現れて、ギルド内は静まり返る。

「退け、雑魚」

スオウがぶっきらぼうに言うと、サクヤがスオウにキラキラしい目を向けた。

「・・・てめ、ふざけやがって!!」
「いや、だって雑魚だよね?」

サクヤもサラッと言った。
男は顔を真っ赤してブルブル震えている。

「てめえら、ぶっ殺す!」
「そこまで!」

男が武器を抜いた時、声がかかって動きを止めた。
声の聞こえた方を見ると、ギルド職員の制服をもっと豪華にしたような格好の美丈夫が立っていた。

「っギルマス! だってコイツらが」
「貴様が雑魚なのは本当だろう。これ以上問題を起こしたら冒険者資格を剥奪すると言っただろう」
「何でだよ! こんなガキに舐められて・・・!」
「こんなガキじゃない。こちらは二人共Sランクの冒険者だ。そもそもスオウ殿を知らんとは。このギルドに所属していて知らないのはモグリだと言われるぞ」
「嘘だ!」
「これならいいのか?」

溜息を吐いてギルドタグを見せるスオウ。僕も見せてあげよう。

「Sランクのタグはオリハルコンで出来てるから偽造は出来ないぜ」
「僕はここの所属じゃないけど。えーと、ギルマスさん? 僕もここの所属に替えて貰ってもいいですか?」
「もちろんですよ、『夜叉姫』」

ギルマスの言葉に再びザワついた。
そういえば、野外授業で依頼した冒険者はここがほとんどだったっけな。
チラリと流し見ると、なるほど、あの時の冒険者とか、見知った顔がいるな。

「分かったら剥奪の手続きをしに向こうへ連れて行け。お二人は私の部屋へお願いします」
「ああ」
「はい」

移動中サクヤを見ると、テンプレ?が良かったのかご機嫌で花を撒き散らしていて、本人の知らぬ間に場をほのぼのとさせていた。


しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

天才第二王子は引きこもりたい 【穀潰士】の無自覚無双

柊彼方
ファンタジー
「この穀潰しが!」 アストリア国の第二王子『ニート』は十年以上王城に引きこもっており、国民からは『穀潰しの第二王子』と呼ばれていた。 ニート自身その罵倒を受け入れていたのだ。さらには穀潰士などと言う空想上の職業に憧れを抱いていた。 だが、ある日突然、国王である父親によってニートは強制的に学園に通わされることになる。 しかし誰も知らなかった。ニートが実は『天才』であるということを。 今まで引きこもっていたことで隠されていたニートの化け物じみた実力が次々と明らかになる。 学院で起こされた波は徐々に広がりを見せ、それは国を覆うほどのものとなるのだった。 その後、ニートが学生ライフを送りながらいろいろな事件に巻き込まれるのだが…… 「家族を守る。それが俺の穀潰士としての使命だ」 これは、穀潰しの第二王子と蔑まれていたニートが、いつの日か『穀潰士の第二王子』と賞賛されるような、そんな物語。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...