75 / 130
本編
72 夏季休暇前の試験 その伍
しおりを挟む
それは一瞬だった。
瞬き一つ。
2人は手練れでも追えないような速さで刀身を合わせていく。
もちろん魔法は使ってない。
純粋な身体能力での戦闘だが、常人をはるかに超える打ち合いを見て、闘技場の面々は呆気にとられて言葉が出なかった。
「サクヤ、どうして刀を抜かない?」
打ち合いの合間にスオウが聞く。
「ちょっとね。スオウのせいじゃないから安心して?」
「アレに細工でもされたか?」
「うん、刀が折れるように傷が入ってるから、たぶんスオウと1合でも打ち合いしたら砕けるよ。幸い、鞘は何ともないので、このままでゴメンね?」
「あー・・・本当にクズだな。事故を狙ったんだろうが、強者は武器の具合なんて手に取るように分かるって知らないのかね」
「それより、学園の備品に手を出せる内通者がいると思うから、そっちをあぶり出して欲しいかな。何にしても楽しみをぶち壊されて頭にきてます!」
弱冠、イラッとしながら言い放って、一旦距離をとる。
お互いまだまだ余裕だが、おそらく時間切れで決着が着かないだろう。
サクヤが鞘を握りしめて、居合い切りのモーションに入った。
スオウも剣を握り直す。
次の瞬間、お互い剣を振り抜き、斬撃を飛ばした。
互いに避けたが、パキンと音がしてサクヤの刀が砕けた。
サクヤの居合いに耐えられなかったようだ。
「武器が破損したので『降参』します」
サクヤが静かに告げると、終了の合図があがった。
見学者は皆、呆然としていたが、すぐにわあっと歓声が上がった。
「お疲れ様」
「サクヤもお疲れ」
「あーあ、もっとやりたかったなあ」
サクヤが残念そうだったが、どうせ騎士団の訓練に混ざるんだから、その時にな。
「ところで気付いてるか?」
「当然。殺気を隠してないもの。僕じゃなくても分かるんじゃない?」
ハルキがあからさまに睨んでる。
周りの人も引いてるぞ。いいのか?
・・・気付いてないんだろうな。
「本当に何がしたいんだろうな」
「アレの考えてることは分かりません。それより上級生の実技試験見ようよ! ガオウ兄様とレックスさんも出るんでしょ?」
「そうだな。あんなヤツほっといて兄さん達の実技を見よう。兄さんも強いぞ」
「あんなに物腰柔らかくて優しそうなのに?」
「騙されてるぞ、サクヤ。兄さんは見かけだけだ。身内以外には優しくない」
腹の中真っ黒の黒だよ。
「ええ?」
「そんなことないよ! スオウ、ヘンなこと吹き込まないでよ!」
「ガオウ兄様、レックスさんも」
次の準備でやって来たガオウ達だ。
「さっきのは凄かったね! 最後は武器損壊で終わっちゃったけど」
「それなんだけど、どうやら刀全部に細工がしてあったらしい。先生たちに連絡して確認して貰わないと」
「・・・ああ。あの戦闘を見てたら壊れても不思議じゃないと思ったけど、そういうこと」
「備品倉庫に入って細工なんて、手引きしたヤツが居ないと無理だろうな。内通者を探さないと。ちょっと待ってね」
そういってレックスさんがイヤーカフで通信を始めた。
生徒会長辺りに連絡したのだろう。
「武器は一旦回収して確認に回すそうだ。試験は少し遅れる」
「犯人探しはプロに任せよう」
「じゃあ、向こうで少し休みません? 冷たい飲み物を出しますよ」
「やった!」
そんな会話をしながら舞台をおりる。
その間もずっと殺気の籠もった視線を感じながら・・・。
1学年の控え室に戻ると、先に脱落した皆が興奮気味に詰め寄ってきた。
「スオウ様もサクヤ様も何ですかアレ凄すぎですよ何がどうなったらあんなに強くなれるんですか?!」
「---落ち着け委員長!」
「それよりも共闘作戦、凄かったね。誰が考えたの? 咄嗟にじゃないよね?」
「俺達皆でやりました!」
アンディ君だ。
やっぱり作戦練ってたんだね。
ちょっとびっくりしたよ。
ガオウ兄様達にレモネードを渡しながら聞いたら、生徒会の執務中にこっそりやってたとか。
そんな話をしていたら2学年の実技が始まりそうだ。
コップを回収してガオウ兄様達を送り出す。
ガオウ達の戦いを見ようと、スオウと表に出る。
風紀委員も何人もいて、これはどうなるか分からないなと興味津々だった。
「勝ち負けじゃあないのは分かってるけど、気になるよね」
「そうだな。俺としてはやっぱり兄さん達に勝って欲しいけどな」
「僕も」
ガオウ兄様ってどんな戦い方なんだろう。
武器は・・・・・・太刀だ。ええ?
ちょっと予想外。
「兄さんは母さんの影響でやっぱり刀を使うんだ。体格がいいから主に太刀なんだけど。さすがに細工はされなかったようだな」
「僕は普通の刀だからね。やっぱり僕狙いかあ・・・・・・腹立つ」
ガオウ兄様がこちらをチラッと見てウインクした。余裕だね。
こちらは軽く手を振って。
レックスさんは槍だった。けっこうな重量のはずなんだけど、ぶんぶん振り回している。
僕と同じく細マッチョなのかな?
そして2学年Sクラスのバトルロイヤルがスタートした。
瞬き一つ。
2人は手練れでも追えないような速さで刀身を合わせていく。
もちろん魔法は使ってない。
純粋な身体能力での戦闘だが、常人をはるかに超える打ち合いを見て、闘技場の面々は呆気にとられて言葉が出なかった。
「サクヤ、どうして刀を抜かない?」
打ち合いの合間にスオウが聞く。
「ちょっとね。スオウのせいじゃないから安心して?」
「アレに細工でもされたか?」
「うん、刀が折れるように傷が入ってるから、たぶんスオウと1合でも打ち合いしたら砕けるよ。幸い、鞘は何ともないので、このままでゴメンね?」
「あー・・・本当にクズだな。事故を狙ったんだろうが、強者は武器の具合なんて手に取るように分かるって知らないのかね」
「それより、学園の備品に手を出せる内通者がいると思うから、そっちをあぶり出して欲しいかな。何にしても楽しみをぶち壊されて頭にきてます!」
弱冠、イラッとしながら言い放って、一旦距離をとる。
お互いまだまだ余裕だが、おそらく時間切れで決着が着かないだろう。
サクヤが鞘を握りしめて、居合い切りのモーションに入った。
スオウも剣を握り直す。
次の瞬間、お互い剣を振り抜き、斬撃を飛ばした。
互いに避けたが、パキンと音がしてサクヤの刀が砕けた。
サクヤの居合いに耐えられなかったようだ。
「武器が破損したので『降参』します」
サクヤが静かに告げると、終了の合図があがった。
見学者は皆、呆然としていたが、すぐにわあっと歓声が上がった。
「お疲れ様」
「サクヤもお疲れ」
「あーあ、もっとやりたかったなあ」
サクヤが残念そうだったが、どうせ騎士団の訓練に混ざるんだから、その時にな。
「ところで気付いてるか?」
「当然。殺気を隠してないもの。僕じゃなくても分かるんじゃない?」
ハルキがあからさまに睨んでる。
周りの人も引いてるぞ。いいのか?
・・・気付いてないんだろうな。
「本当に何がしたいんだろうな」
「アレの考えてることは分かりません。それより上級生の実技試験見ようよ! ガオウ兄様とレックスさんも出るんでしょ?」
「そうだな。あんなヤツほっといて兄さん達の実技を見よう。兄さんも強いぞ」
「あんなに物腰柔らかくて優しそうなのに?」
「騙されてるぞ、サクヤ。兄さんは見かけだけだ。身内以外には優しくない」
腹の中真っ黒の黒だよ。
「ええ?」
「そんなことないよ! スオウ、ヘンなこと吹き込まないでよ!」
「ガオウ兄様、レックスさんも」
次の準備でやって来たガオウ達だ。
「さっきのは凄かったね! 最後は武器損壊で終わっちゃったけど」
「それなんだけど、どうやら刀全部に細工がしてあったらしい。先生たちに連絡して確認して貰わないと」
「・・・ああ。あの戦闘を見てたら壊れても不思議じゃないと思ったけど、そういうこと」
「備品倉庫に入って細工なんて、手引きしたヤツが居ないと無理だろうな。内通者を探さないと。ちょっと待ってね」
そういってレックスさんがイヤーカフで通信を始めた。
生徒会長辺りに連絡したのだろう。
「武器は一旦回収して確認に回すそうだ。試験は少し遅れる」
「犯人探しはプロに任せよう」
「じゃあ、向こうで少し休みません? 冷たい飲み物を出しますよ」
「やった!」
そんな会話をしながら舞台をおりる。
その間もずっと殺気の籠もった視線を感じながら・・・。
1学年の控え室に戻ると、先に脱落した皆が興奮気味に詰め寄ってきた。
「スオウ様もサクヤ様も何ですかアレ凄すぎですよ何がどうなったらあんなに強くなれるんですか?!」
「---落ち着け委員長!」
「それよりも共闘作戦、凄かったね。誰が考えたの? 咄嗟にじゃないよね?」
「俺達皆でやりました!」
アンディ君だ。
やっぱり作戦練ってたんだね。
ちょっとびっくりしたよ。
ガオウ兄様達にレモネードを渡しながら聞いたら、生徒会の執務中にこっそりやってたとか。
そんな話をしていたら2学年の実技が始まりそうだ。
コップを回収してガオウ兄様達を送り出す。
ガオウ達の戦いを見ようと、スオウと表に出る。
風紀委員も何人もいて、これはどうなるか分からないなと興味津々だった。
「勝ち負けじゃあないのは分かってるけど、気になるよね」
「そうだな。俺としてはやっぱり兄さん達に勝って欲しいけどな」
「僕も」
ガオウ兄様ってどんな戦い方なんだろう。
武器は・・・・・・太刀だ。ええ?
ちょっと予想外。
「兄さんは母さんの影響でやっぱり刀を使うんだ。体格がいいから主に太刀なんだけど。さすがに細工はされなかったようだな」
「僕は普通の刀だからね。やっぱり僕狙いかあ・・・・・・腹立つ」
ガオウ兄様がこちらをチラッと見てウインクした。余裕だね。
こちらは軽く手を振って。
レックスさんは槍だった。けっこうな重量のはずなんだけど、ぶんぶん振り回している。
僕と同じく細マッチョなのかな?
そして2学年Sクラスのバトルロイヤルがスタートした。
応援ありがとうございます!
3
お気に入りに追加
1,035
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる