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本編
59 大嵐だった件 その弐
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*やや残酷な描写があります*
さて、準備万端。
危険なのでキマイラの結界を消さずに僕達が動きやすいように広げる。
「スオウ、入るけど大丈夫?」
「ああ、何時でもいいぜ」
「じゃあ、行くよ!」
久々の大きい獲物。
舌舐めずりしちゃうよ。
実際、無意識にしていたらしくてスオウが苦笑して口元を指差した。
おおっと、失礼。
僕達が結界内に入った瞬間、キマイラの咆哮が聞こえた。
威圧を放っているようで、ビリビリと空気が震える。
でもそれくらいなら全然効かないよ。
スオウをチラッと見ると、やはり平然としていた。さすがだ。
自分とスオウに防御魔法をかける。次いで身体強化の魔法も。
お互いのイヤーカフで通信も出来るから、声をかけながらまずは一太刀浴びせる。
直後、スオウは二太刀。伊達に双剣を使っていないね。
即座に距離を取り、様子をうかがうと、徐々に傷が塞がっていく。
再生能力を有する個体のようだ。珍しい。
「スオウ、あの再生速度どう思う?」
「そうだな、あれくらいなら再生が間に合わないくらいの傷を付け続ければ割といけるな。そもそも、お前の力量なら一刀両断か魔法で一撃だろう?」
うん、それは否定できないかな。
でも色々試したいよねえ。
「色んな攻撃をして効果を試したいんだ。今後の為に有効な攻撃とか効果の薄いものとか、向こうの攻撃パターンとか知りたい」
「・・・ああ、そういう・・・。分かった。じゃあ指示してくれるか? 俺も出来る範囲で検証しよう」
「ありがとう! じゃあまずはねえ・・・」
嬉々としてスオウに指示を出すサクヤ。
それに苦笑しながらも的確に繰り出される攻撃にサクヤが惚れ直しているとは露ほども思わないスオウは、サクヤ同様、戦闘狂の資質があるのだろう。
高揚とした気持ちにサクヤ同様舌舐めずりをしていた。
途中サクヤとバトンタッチして、今度はサクヤの検証に付き合う。
だが、どちらかというとサクヤの戦いぶりを観察していた。
いくら再生能力を持っていようと、さすがに足や尻尾を切断されれば元に戻るのには時間がかかる。
すでにスオウによってかなりのダメージを負っていたので、サクヤが攻撃をするころには再生速度が落ちてきていた。
なのでサクヤはかなり手加減をしていた。
検証には一番軽い魔法でも十分なので、火や水、風、土、氷、雷、闇、光と、攻撃系の魔法を軽く当てて様子を見る。
最終的にはサクヤが刀で獅子と山羊の首を横に一振りして斬り落とし、こちらにはなんの被害もなく早々に決着がついた。
結界内の学生や教職員、外にいた冒険者達、皇族の影や騎士団員は全く何もせず、いや、手を出す暇も無く戦闘は終わった。
検証などしなければあっという間だったと思う。
結界を解除すると、見た目は綺麗な、首無しキマイラがあらわになった。
実際は下手に再生能力を持っていたためにサンドバッグになった憐れな魔物だが。
別に不可視の結界ではなかったので、中で何をしていたのか丸見えだったのだろう。
何となく2人以外の皆がドン引きしていたように思う。
スオウとしては、サクヤの役に立てたのですこぶるご機嫌だった。
サクヤも、初めて対峙したキマイラに終始興奮気味で、しまいにはスオウによってテントに隔離された。
興奮の余り、魔力の花が飛び散っていて周りが凄いことになっていたからだ。
冒険者の他に騎士団も総出でキマイラの後始末と現場検証などでかなり時間はかかったが、概ね落ち着いたところで、結界で被害の無かった野営地でようやく夕御飯となり、生徒達もホッと一息吐いて穏やかな空気が流れた。
「僕が一晩中結界を展開しておくので、皆は安心して休んで下さい」
そうサクヤが言うと、あの戦闘の時の事を思い出したのか、皆がやや引き気味に、でもアレなら安心だと納得して、各々テントに戻っていった。
今日は疲れているだろうとの配慮で、交代での寝ず番は各自の判断でやらなくてもいいことになった。
サクヤの結界で事足りるからだ。
聞いたら、サクヤの負担は全く無いとのこと。
さすがだな。
俺とサクヤは戦闘で昂ぶっていて眠れそうに無かったので、2人して寝ず番をする事にした。
皆は休んでいる。
静かになった夜。
焚き火を見ながらお茶を飲んだ。
空には気持ちいいほどの満天の星が瞬いている。
こんな気持ちで夜空を眺めるなんて、ほんの数ヶ月前までは全く想像もしなかった。
それも、今は大好きな人と一緒だ。
「ふふ」
思わず笑うと、スオウがこちらを見た。
「いやね、少し前はこんな事になるなんて思わなかったから」
「そうだな。俺も思わなかったよ」
「・・・・・・今までクソな生活を唯々諾々と過ごしていた事に微塵も疑問を持たなかったけど、やっと人間らしい生活を送れるようになったんだなって」
スオウが優しい顔で僕を見つめた。
「スオウのお陰だよ。本当にありがとう」
そう言ってそっとスオウに近づき、その唇に僕の唇にをそっと押し付けた。
途端に後頭部を押さえられ、あっという間に深い口づけに変わった。
「ん、・・・はぁ」
息も絶え絶えになった頃、銀色の糸を引いて唇が離れた。
お互いに滾っていたが、今は野外授業中。
それに青姦なんてもっての外。
2人は一晩中他愛ない話をして気を逸らし、何とか朝までには平常通りになったのであった。
無事に帰ってからは・・・・・・。
まあ、ご想像通り。
さて、準備万端。
危険なのでキマイラの結界を消さずに僕達が動きやすいように広げる。
「スオウ、入るけど大丈夫?」
「ああ、何時でもいいぜ」
「じゃあ、行くよ!」
久々の大きい獲物。
舌舐めずりしちゃうよ。
実際、無意識にしていたらしくてスオウが苦笑して口元を指差した。
おおっと、失礼。
僕達が結界内に入った瞬間、キマイラの咆哮が聞こえた。
威圧を放っているようで、ビリビリと空気が震える。
でもそれくらいなら全然効かないよ。
スオウをチラッと見ると、やはり平然としていた。さすがだ。
自分とスオウに防御魔法をかける。次いで身体強化の魔法も。
お互いのイヤーカフで通信も出来るから、声をかけながらまずは一太刀浴びせる。
直後、スオウは二太刀。伊達に双剣を使っていないね。
即座に距離を取り、様子をうかがうと、徐々に傷が塞がっていく。
再生能力を有する個体のようだ。珍しい。
「スオウ、あの再生速度どう思う?」
「そうだな、あれくらいなら再生が間に合わないくらいの傷を付け続ければ割といけるな。そもそも、お前の力量なら一刀両断か魔法で一撃だろう?」
うん、それは否定できないかな。
でも色々試したいよねえ。
「色んな攻撃をして効果を試したいんだ。今後の為に有効な攻撃とか効果の薄いものとか、向こうの攻撃パターンとか知りたい」
「・・・ああ、そういう・・・。分かった。じゃあ指示してくれるか? 俺も出来る範囲で検証しよう」
「ありがとう! じゃあまずはねえ・・・」
嬉々としてスオウに指示を出すサクヤ。
それに苦笑しながらも的確に繰り出される攻撃にサクヤが惚れ直しているとは露ほども思わないスオウは、サクヤ同様、戦闘狂の資質があるのだろう。
高揚とした気持ちにサクヤ同様舌舐めずりをしていた。
途中サクヤとバトンタッチして、今度はサクヤの検証に付き合う。
だが、どちらかというとサクヤの戦いぶりを観察していた。
いくら再生能力を持っていようと、さすがに足や尻尾を切断されれば元に戻るのには時間がかかる。
すでにスオウによってかなりのダメージを負っていたので、サクヤが攻撃をするころには再生速度が落ちてきていた。
なのでサクヤはかなり手加減をしていた。
検証には一番軽い魔法でも十分なので、火や水、風、土、氷、雷、闇、光と、攻撃系の魔法を軽く当てて様子を見る。
最終的にはサクヤが刀で獅子と山羊の首を横に一振りして斬り落とし、こちらにはなんの被害もなく早々に決着がついた。
結界内の学生や教職員、外にいた冒険者達、皇族の影や騎士団員は全く何もせず、いや、手を出す暇も無く戦闘は終わった。
検証などしなければあっという間だったと思う。
結界を解除すると、見た目は綺麗な、首無しキマイラがあらわになった。
実際は下手に再生能力を持っていたためにサンドバッグになった憐れな魔物だが。
別に不可視の結界ではなかったので、中で何をしていたのか丸見えだったのだろう。
何となく2人以外の皆がドン引きしていたように思う。
スオウとしては、サクヤの役に立てたのですこぶるご機嫌だった。
サクヤも、初めて対峙したキマイラに終始興奮気味で、しまいにはスオウによってテントに隔離された。
興奮の余り、魔力の花が飛び散っていて周りが凄いことになっていたからだ。
冒険者の他に騎士団も総出でキマイラの後始末と現場検証などでかなり時間はかかったが、概ね落ち着いたところで、結界で被害の無かった野営地でようやく夕御飯となり、生徒達もホッと一息吐いて穏やかな空気が流れた。
「僕が一晩中結界を展開しておくので、皆は安心して休んで下さい」
そうサクヤが言うと、あの戦闘の時の事を思い出したのか、皆がやや引き気味に、でもアレなら安心だと納得して、各々テントに戻っていった。
今日は疲れているだろうとの配慮で、交代での寝ず番は各自の判断でやらなくてもいいことになった。
サクヤの結界で事足りるからだ。
聞いたら、サクヤの負担は全く無いとのこと。
さすがだな。
俺とサクヤは戦闘で昂ぶっていて眠れそうに無かったので、2人して寝ず番をする事にした。
皆は休んでいる。
静かになった夜。
焚き火を見ながらお茶を飲んだ。
空には気持ちいいほどの満天の星が瞬いている。
こんな気持ちで夜空を眺めるなんて、ほんの数ヶ月前までは全く想像もしなかった。
それも、今は大好きな人と一緒だ。
「ふふ」
思わず笑うと、スオウがこちらを見た。
「いやね、少し前はこんな事になるなんて思わなかったから」
「そうだな。俺も思わなかったよ」
「・・・・・・今までクソな生活を唯々諾々と過ごしていた事に微塵も疑問を持たなかったけど、やっと人間らしい生活を送れるようになったんだなって」
スオウが優しい顔で僕を見つめた。
「スオウのお陰だよ。本当にありがとう」
そう言ってそっとスオウに近づき、その唇に僕の唇にをそっと押し付けた。
途端に後頭部を押さえられ、あっという間に深い口づけに変わった。
「ん、・・・はぁ」
息も絶え絶えになった頃、銀色の糸を引いて唇が離れた。
お互いに滾っていたが、今は野外授業中。
それに青姦なんてもっての外。
2人は一晩中他愛ない話をして気を逸らし、何とか朝までには平常通りになったのであった。
無事に帰ってからは・・・・・・。
まあ、ご想像通り。
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