月の至高体験

エウラ

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本編

53 野外授業は嵐の予感 その参

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このチェックポイントはセーフティエリアにもなっているので、安心して寛げる。

5分ほどして、サクヤ達は先生に別れを告げて次のチェックポイントに向けて出発した。

次のチェックポイントまでは距離があって、また分かれ道を選ぶことになる。
10分ほど歩いて分かれ道に到着した。

何も言わずにささっと地図を広げるサクヤに気付いて。

「サクヤ様はもしかして、ずっと探索魔法を使っているの?」

エルネスト君が聞いてきた。

「使ってるよ。寝てても大丈夫」
「・・・魔力切れにならないの?」
「大丈夫です。無尽蔵だから」

サクヤ的にはドヤ顔をしたようだが、単なる真顔でしかなかった。
キリッという感じでもなかった。

でも声で何となくわかって、皆が微笑ましい顔をしたので、解せんという表情を浮かべた。

「サクヤなら問題ないから本当に大丈夫」

スオウが追従したので、皆も安心したようだ。

「俺達本当に必要?」
「要らなくない?」
「楽でいいんだけどさあ」

上級生のぼやきが酷くなったのは気にしない。

さて、今回の分かれ道は3ルート。
例によってサクヤの探索魔法が役立つ。
今回は少し複雑だ。
距離がバラバラで起伏も色々。
今回は薬草採取はないが、魔物と会敵する確率が高い。

戦闘をメインとしたコースだった。
コースによって会敵する魔物が違う。
難易度は同じくらいだが、草食系か肉食系かではけっこう対処方法が違ってくる。
肉食系は割と攻撃的なものが多いのだ。

「ルートは川沿いのやや開けた場所、ほぼ獣道の森の中、開けた平原で隠れられそうなところがない場所だね」
「距離としてはどうなんだ?」

スオウが聞いてきた。

「川沿いは川に沿っているから、一番長い。獣道は二番目の長さ。平原はまっすぐ突っ切れるから一番短い。でもね」
「そう簡単じゃない、だろ?」
「うん。川沿いは水を確保しに魔物がたくさん集まるし、獣道は荒れてるから歩きにくい上に上から下から襲われやすい」
「平原は言わずもがな」
「自分が身を隠す場所がないから魔物からは丸見え。まあ、魔物もそうだけど、機動力で言ったら魔物の方が上だから、油断するとあっという間に襲われて終わり」

「・・・・・・」

無言になった。
皆もちょっと考えてる。

「・・・ここで重要なのは、チェックポイントに早く着くことじゃない」

3年の先輩が話し出した。他の先輩方も口々に意見を述べる。

「そうそう。班のメンバーの得手不得手を把握して協力しながら目指すことに意味があるんだよ」
「メンバーを決める時にある程度の能力を確認しただろ? バランスがいい班はそういないが、攻撃が得意なヤツばかりなら平原を突っ切るのも有りだし」
「出て来る魔物全部殲滅しちゃうヤツとかな」

そう言ってスオウをチラッと見た。
スオウは確かに強いよね。

エルネスト君は神官タイプで、回復や補助魔法が得意。でもメイスでガンガン敵を殴るくらい力がある。
ウィル君は剣が得意。見かけによらず大剣を使う。
アンディ君は魔導士タイプで攻撃魔法をよく使うんだよね。

「うん、この班は攻撃特化で回復役もいるから平原ルートで行こうか」

索敵してマーキングすれば魔法一発で倒せるけど、それは言わないでおく。

「え、一番危険なルートで大丈夫?」
「スオウがいるから問題ないでしょ」
「サクヤもいるしねえ」
「「むしろサクヤだけで行けるんじゃないか?」」

なんて先輩方が盛り上がってる。
実際、サクヤだけでも殲滅出来るので苦笑に留める。

「僕は皆に防御魔法をかけながら前衛でスオウと魔物を倒す。アンディ君はエルネスト君と後衛で頼むね。ウィル君は2人を守って」
「分かった」

皆がそれぞれ武器や防具を整えてる中、僕は先輩方に声をかける。

「皆さんはこういう時はどうするんです?」
「ーーーあー、ついて回って危険なら手を出すが・・・」
「うん、必要なさそうだからこっちは自分達で対処しながら君達の様子を見てるよ」
「こっちは心配ないから気にせず戦って?」
「分かりました。念の為プロテクターかけときますね」

そう言って全員にプロテクターをかけた。
スオウ以外の全員が微妙な顔をしている。

そもそもサラッと無詠唱でこの人数にかけることもそうだが、さっきから探索魔法も展開しているのだ。
多重魔法展開って・・・。

『有り得ない』

皆がそう思った。



「さて、準備はいいかな」
「大丈夫!」
「何時でも行けるぜ」

スオウがニヤリと笑う。
悪い笑みだ。

「スオウは左側をお願い。そっちの方が数が多い」
「了解」

さて僕の得物は前に迷宮探索で出たボス戦のドロップアイテムの妖刀ムラサメ。
これを帯刀してダマスカスでできた胸当てをつけるだけでオッケー。

なんか皆の視線が怖いんだけど・・・。

「サクヤ、ソレってまさかダマスカス」
「自分で採ってきたヤツです!」
「・・・や、そういう意味じゃねえって」
「スオウもいるならあげるよ?」
「イヤだからそうじゃ・・・・・・はあ、も、いいや」
「?」

スオウ、疲れてる?

「俺、スオウが可哀想になってきた」
「そうそう、やんちゃしてて我関せずみたいだったのに」
「サクヤに振り回されてて面白い!」
「面白くなんかないです!」

何やらスオウがキレていた。

エルネスト君達も、そんな憐れんだ目で見ないであげて。


自分が原因だと分かってないサクヤだった。









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