月の至高体験

エウラ

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本編

47 皇城でお泊まり会 その壱

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あの後、ひとまず、と言って皆して席に座ってお茶を飲んで一息ついた。

オクタヴィア家も和やかだったが、皇族の方も同じように和やかで、前世からの憧れた家族の一員になれた事が本当に嬉しい。

そんな僕は無意識に微笑んで魔力の花を撒き散らしていたらしく、私室にいる皆が微笑ましそうに見ていた。

僕は気付いていなかったけど。

「さて、ライナスに贈り物があるんだが」

リオネル父様が切り出した。それにライナス父様がぱあっと顔を綻ばせた。

「ああ、何やら聞いているよ! なんだい?」
「その前に、絶対に他言無用なんだが、ここにいる者達は信用できるのだろうな?」
「もちろん。影すらも機密を漏らさぬようにあらかじめ誓約魔法で縛ってある。・・・サクヤの事かな?」
「そうだ。では、これを・・・」

リオネル父様がピアスの入った宝石箱を差しだした。
ライナス父様が受け取り、そっと蓋を開ける。
中には、父様達5人分のピアスが並んでいた。

「・・・これは」
「転移の魔導具だ」
「・・・・・・は?」
「転移魔法を組み込んだ魔導具」
「ーーーはあ?!」

オクタヴィア家以外の皆が唖然としていた。
普通はそんなもの国宝級だ。
それがこんなに?!

「一応聞くが、まさか、サクヤが作ったとか言わないよな?」

何故かヒソヒソと話す父様達。

「そのまさかだ」
「嘘まじか?!」

ライナス父様言葉が乱れてますよ。
そして皆さんごめんなさい。
僕のせいですね。

あからさまにショボンとした僕に気付いて、皆がわたわたし出した。

「スミマセン。ご迷惑おかけして・・・」
「いやいやビックリしただけだから、迷惑じゃないから!」

スオウが素早く僕をぎゅっとしてくれた。ほっとする。

「一応、制限を付けてあるから。緊急避難場所としてオクタヴィア家に転移するようになってる。これに魔力を登録して。本人以外は使えないようになるから」
「凄いな」
「盗難防止や紛失時に手元に戻るようになってます。今はピアスですけど、本人の意思で形を変えられるようにしたので、魔力を登録後に念じて下さい。ネックレスやブレスレットにもなります」
「えー、簡単そうに言ってるけど激ムズだからね?」

そうなの?

「サクヤに至っては規格外だからね。気にしないで」
「ちなみに魔石はランクSで台座はミスリル」
「はあああー?!」

ライナス父様が凄い顔で僕を見た。
・・・あの目は知ってる。有り得ないモノを、いわばバケモノを見る目だ。
周りにいた近衛騎士達も驚愕している。

「元手はかかってないです。自分が狩って採掘しているので」
「そう言う事じゃない」
「ライナス、いいから早く魔力登録して。それで各々好きな形状にして身につけて」

リオネル父様がライナス父様を遮って言った。
たぶん僕に考慮したんだ。
でもごめんなさい。
ちょっとメンタル弱ってたみたいだ。

自分が普通じゃないって、つくづく思い知らされる。

父様達が息を飲むのが分かった。

「・・・ごめんなさい。迷惑かけどおしで・・・。だって、何が普通かなんて誰も教えてくれなかったし、なにも比較できるものがなくて・・・」

何時も独りで如何すればいいのかなんて分からないよ。

さっきから涙が溢れて止まらない。
せっかく気持ちいい空間だったのに、僕が壊した。
こんなことなら来なきゃよかった。
独りでいればこんなに苦しくなる事もなかったのに・・・。

「ごめ、」
「謝るな。サクヤは悪くない。そんな環境に置いていたアイツらが悪いんだ」

ーーーっ・・・。
スオウは何時も僕の欲しい言葉をくれる。

ありがとう。


「少し眠れ」

そう言って眠りの魔法をサクヤにかけた。
すぐに深い呼吸になって、眠ったことが分かる。
抱き直して、叔父上を見る。

「叔父上」
「っ何かな、スオウ?」

ビクつくならもう少し言葉を、態度を選んで欲しかったな。

「サクヤは先日、辛い思いをしたんだけど、聞いてなかった?」
「・・・報告を受けてる」
「じゃあ、精神的に不安定だったのも知ってるよね? 驚いたのは仕方ないけど、自分の子供に取る態度じゃないよね。受け入れて貰えてると思ってたのに、拒絶されたと思うよね」

自分を否定されたような、信じられないモノを見たような目で。

弱ってた心を更に抉った。

「きっと嫌われたね。もう父様って呼んで貰えないね」

だからね、ちょっと意地悪してやろう。
サクヤの代わりに。
もちろんサクヤはそんなこと思わないと思うけどね。

ガックリしている叔父上に溜飲を下げる。

「私もフォロー出来なかった。悪かった、スオウ」
「父さんが庇ってくれたこと、分かってたよ。大丈夫。ひとまずサクヤを寝かせるから、部屋を用意して貰える?」
「サクヤちゃんの部屋は用意してあるのよ。貴方、案内してあげて」

さすが叔母上。
近衛騎士の一人が先導してくれるようだ。

「父さん、後はよろしくね」
「しっかり説教しておくよ!」

いや、そう言う意味じゃないんだけどな。

「父上がすまない。後で様子をうかがいに行ってもいいか?」

レオンが聞いてきたので、了承しておいた。
とにかく、サクヤを少し休ませたい。
明日が休日でよかった。














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