月の至高体験

エウラ

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本編

46 義両親に会いに行く

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陽希達の処分を聞いた後、スオウ達から転移の魔導具の事を聞いた父様達にも頼まれて、夜、オクタヴィア家に転移して魔導具を作ることになった。

「おかえりなさい、朔夜」
「ただいま」

当たり前のようにそう言って迎えてくれるこの家が、本当に好きだなあ。

「早速だけど、サロンでいいかな?」

リオネル父様がワクワクして言った。
皆も同じようだ。

「大丈夫。すぐに作るからね」
「驚くだろうけど、騒ぐなよ?」
「分かってるよ、スオウ」

移動して、テーブルに魔石をジャラジャラ出す。
皆、静かになった。

「あの、この中から好きなのを選んで? 何色でもいいから。後は指輪とか、どんなのがいいか考えておいて」
「・・・いや、驚きすぎて声が出なかった。聞いてはいたんだけど・・・」
「これほどとは」
「?」

キョトンとする僕を見て皆、はっとして石を選ぶ。

それぞれが選んだ石に魔法陣と僕の魔力を注入して、台座をうねうねして作り、スオウ達同様、魔法を仕込んでからそれぞれの魔力を登録して貰った。

仕上げに試し跳びをして。

「・・・素晴らしい。だが迂闊に表沙汰には出来ない。朔夜には申し訳ないが、これは秘密で、限定した者にだけ知らせるが、いいね?」
「もちろんです。リオネル父様のいいように」

そもそも他に作れる人はいないと思うよ。

「おそらく陛下は欲しがるねえ。でもアイツに渡すとちょいちょい仕事をさぼって行っちゃいそうで・・・」
「それなら転移先を限定したモノにすればいいんじゃない?」
「え、出来るの?」
「魔法陣を書き換えて、特定の条件で特定の場所だけにすれば。そもそも皇城内はそういう魔法が使えない仕様なのでは?」
「あー、確かに。防犯上陛下の居室や皇妃、皇子方の部屋など皇族のみが魔法を使えるエリアが存在するが、それ以外はほぼ不可だな」
「私室にいるときはすでにプライベートな時間でしょうから、転移先を限定すれば問題ないかと。例えば、父様の所とか」

そう言ったら、イヤな顔をされた。何故?

「私ではなく、この邸のどこかにしてくれ。万が一にも華恋と愛し合っているときだったら、転移してきたときに殺しそうだ」
「・・・あー、例えが悪かったね。ごめんなさい」

僕だってイヤだわ、そんな状況。

という感じで、緊急避難場所ということでオクタヴィア家を指定した魔導具をその場で作り、皇帝陛下に献上する事にした。

実質、義両親との顔合わせでもある。
リオネル父様が謁見の申し込みをしてくれるので、後日教えて貰う。

「じゃあ、お休みなさい」
「お休み。気を付けて。良い夢を」




ーーーそう言って別れた翌日、早速連絡が来て、今日にでも会いに来いって。

「早っ」
「必死だな、叔父上」

スオウが笑って言った。
各務も苦笑している。

「今日は欠席の旨、連絡済みで御座います」
「ありがとう。支度は分からないから二人に任せる。謁見なんてしたことないから服も持ってないんだよね」

だから何を着ればいいのか分からない。

「向こうで謁見してないのか」
「すると思う? 悉く体調不良で部屋に押し込められてたよ。面倒だったから別にいいんだけど。僕は伯父に直接会ったことは一度もない」

生誕祭の時に転移で遠くから眺めたくらい。
立派な方だとは聞いてるけど、僕にはどうでもよかった。

ここに留学させてくれたこと以外は関わりがない、親族って実感もない。

「僕に顔立ちが似てるなってくらいの感情しかないかな。皇帝だから僕に拘っている暇もないだろうし、そもそも僕の存在を知っていたのか・・・生まれて一度も会ったことのない甥っ子なんて忘れてるよね」

自分で言っててちょっと傷付いた。
気にしていなかった癖に。

「ゴメン、湿っぽい話しちゃって。支度、しちゃおうか」
「そうだな、各務、サクヤの衣装を選ぶぞ」
「ええ。オクタヴィア家からたくさん持ち込んでおりますので、お任せください!」

空気を変えようと皆してわいわいしながら支度をして、皇城から寄越された馬車に乗り込み揺られながら向かった。

リオネル父様は先に皇城に行っていて、向こうで合流するそうだ。

「緊張してる?」
「ん。ちょっと。自国でも謁見なんてしたことないから、礼儀作法とか、大丈夫かなって」
「そんなの気にしない方だから大丈夫。それに謁見って言うよりはプライベートな面会だと思うし」

スオウがぽそっと言ったので良く聞き取れなかった。
そんな話をぽつぽつと話していたら着いたようだ。

馬車を降りて案内される。

道すがら、すれ違う使用人や警備の騎士、文官等に二度見三度見されながら着いた場所は、謁見の間ではなく、皇帝陛下の私室だった。

おう、まじかぁ・・・。

思わず心の声が崩れた。
リオネル父様は先に案内されていたようで、ソファに座っている。

「やあ、来たね。朔夜は今日も可愛いね」
「ぁ、ありがとう御座います」
「俺は?」
「スオウも格好いいよ!」

「ついでのように聞こえるよ」
乾いた笑いが聞こえた。


皇帝陛下が入ってきた。
リオネル父様がさっと立ち上がって礼をしながら挨拶をする。
僕達もそれに倣う。

「皇帝陛下のご尊顔を拝謁する栄誉を賜り」
「良い。プライベートだ。兄上も普段通りに」
「最後まで言わせてよ」

急に砕けた会話にキョトンとするサクヤ。
ウン、普通はこんなにサバサバとしてないよな。
びっくりしたろう。

「叔父上、サクヤが驚いて固まってる」
「え、あ? ゴメンゴメン! 朔夜! 父様だよ!」

ウン、確かに養子になって義理とは言え、父様なんだけど・・・。

ざっくばらん過ぎない?

「サクヤ? 大丈夫?」
「・・・は、うん、大丈夫・・・」

驚いただけです。

「たぶん、このあと叔母上と甥っ子も来ると思う。気楽にしてていいからな」
「へ、ああ、うん?」

珍しく頭が真っ白なサクヤだった。

ええ、皇帝陛下ってこんな人?
でもリオネル父様もこんな感じかも。
兄弟だから仲がいいのか?
ウチとは大違い。

なんて考えていて、反応が遅れた。

「サクヤちゃん! 母様なのじゃ!」

唐突に抱きしめられてビクッとした。
直後、両脇から皇太子と第3皇子、後ろから末の皇女に抱きしめられて硬直した。

「初めまして。サクヤの兄になるレオクラン、レオンと呼んでね」
「僕はカルロス。よろしくね、サクヤ兄上」
「私は妹になります、ロゼリアです。気軽にロゼと呼んで下さいませ」

押しくらまんじゅうをされながら自己紹介をされた。

「サクヤ、です。よろしくお願い致します」

かろうじて自分も挨拶を交わした。

スオウと各務は呆れて見ていて、リオネル父様は笑っている。
皇帝陛下はムキーっと悔しそうな顔をしていてカオスな感じだった。


ちなみに護衛の近衛騎士がその場に5人程いたが、一様に呆れたような目で見ていたので、これがこの皇族の通常運転なのだと思われた。
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