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本編
32 私は帝国皇帝陛下の側近です(sideアーサー)
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私はオクタヴィウス帝国の皇帝陛下の側近の1人です。
名をロクサイス・アーサーと申します。
本日の陛下は、朝から様子がおかしいです。
ソワソワと落ち着きがなく、どこかうわの空で時折何かを確認するように時間を気にしております。
ですが、書類はキチンと片付けて下さいますので、文句は言いません。
そうして昼に差し掛かった頃、動きがありました。
大至急という書簡が陛下に届けられました。
学園長の封蝋ですね。
これを待っていたのでしょうか?
開封して読み始める陛下を横目に私は淡々と仕事を熟します。
そしてふっと陛下を見ると、だらしな・・・いえ、締まりのない・・・ぁ、いや、少し弛んだお顔をしておりました。
思わず「陛下?」とお声がけすると、ハッとして顔を引き締めましたが、すでに色々と台無しです。
誤魔化すように私に処理済みの書類を渡して、その後、ついでのようにこう言われました。
「先程、私に可愛い子供が一人増えたんだ。皇妃と皇子達にも伝えてくれないか? きっと大喜びするから」
・・・・・・。
何という事でしょう。
サクヤ様が・・・!
嬉しいやら哀しいやら・・・。
いや、嬉しいが勝る!
あの方の境遇は陛下より聞き及んでおりました。
同じ年頃の息子を持つ親として、決して許せぬ所業と常々思っておりました。
そうですか。やっと自由に・・・。
そんな事を微塵も顔に出さずに陛下の前を辞すると、足早に皇妃様の執務室へと参りました。
「ロクサイスです。陛下より皇妃様へお言付けを預かっております」
扉前の近衛に伝えると、中に確認を取り、許可が出ました。
「ロクサイス殿、どうぞ中へ」
「ありがとうございます」
中では皇妃様が一息ついた所でした。
ソファへと促されました。
お茶を口にしてから私へと問いかけます。
「さて、ロクサイス。陛下からの言付けとは?」
「はい。『先程、私に可愛い子供が一人増えた』との事です。皇妃様と皇子様方にお伝えするように、と」
「誠か!!」
「陛下も大層お喜びでございました」
思い出されるのはにやけた顔・・・おっと。
「皇子様方には、皇妃様からお伝えなさいますか?」
「そうさの! 今ちょうどキリよく片づいたので、これから話して参ろうか! あの子らも喜ぶぞ!」
「では、その様に。私はこれで失礼いたします」
「ロクサイス。大義であった」
「勿体ないお言葉でございます。では御前を失礼いたします」
さて、やる気を出した陛下の為に急ぎの書類の選考をしなければ。
ああ、後は朔夜様がこちらにお泊まりになられる部屋を用意しなければ。
陛下方にも確認をとって、まずは部屋の確保と内装の確認、それから・・・・・・。
「・・・・・・で、いくら書類を持ってこいとは言ったが、これはないんじゃないか?!」
目の前に高く積まれた処理待ちの書類。
それを見てやや青ざめた陛下。
私はにっこり笑うだけ。
執務室にいた他の側近も顔を引きつらせている。
失敬な。
大丈夫でございます。
陛下はやれば出来る子でございます。
その証拠に、口では文句を言いつつも手早く捌いておりますよ。
『いや、お前がそうさせてるんだって!』
他の側近も付き合いが長いのでロクサイスの性格はよく分かっている。
陛下も無駄にスペックが高いので熟せてしまうところが凄いが。
『普通はこんなに出来ねえよ!』
側近達の心の声は届かない。
夜も遅くなり、夕餉を抜きつつ頑張った陛下は、今日のノルマを熟した。
「お疲れ様でございました。また明日」
おやすみなさいませ、とロクサイスが去った後。
皇妃様方からたくさんの『ありがとう』を貰った陛下が、数日張りきって仕事を捌く姿が見られたとか何とか・・・・・・。
名をロクサイス・アーサーと申します。
本日の陛下は、朝から様子がおかしいです。
ソワソワと落ち着きがなく、どこかうわの空で時折何かを確認するように時間を気にしております。
ですが、書類はキチンと片付けて下さいますので、文句は言いません。
そうして昼に差し掛かった頃、動きがありました。
大至急という書簡が陛下に届けられました。
学園長の封蝋ですね。
これを待っていたのでしょうか?
開封して読み始める陛下を横目に私は淡々と仕事を熟します。
そしてふっと陛下を見ると、だらしな・・・いえ、締まりのない・・・ぁ、いや、少し弛んだお顔をしておりました。
思わず「陛下?」とお声がけすると、ハッとして顔を引き締めましたが、すでに色々と台無しです。
誤魔化すように私に処理済みの書類を渡して、その後、ついでのようにこう言われました。
「先程、私に可愛い子供が一人増えたんだ。皇妃と皇子達にも伝えてくれないか? きっと大喜びするから」
・・・・・・。
何という事でしょう。
サクヤ様が・・・!
嬉しいやら哀しいやら・・・。
いや、嬉しいが勝る!
あの方の境遇は陛下より聞き及んでおりました。
同じ年頃の息子を持つ親として、決して許せぬ所業と常々思っておりました。
そうですか。やっと自由に・・・。
そんな事を微塵も顔に出さずに陛下の前を辞すると、足早に皇妃様の執務室へと参りました。
「ロクサイスです。陛下より皇妃様へお言付けを預かっております」
扉前の近衛に伝えると、中に確認を取り、許可が出ました。
「ロクサイス殿、どうぞ中へ」
「ありがとうございます」
中では皇妃様が一息ついた所でした。
ソファへと促されました。
お茶を口にしてから私へと問いかけます。
「さて、ロクサイス。陛下からの言付けとは?」
「はい。『先程、私に可愛い子供が一人増えた』との事です。皇妃様と皇子様方にお伝えするように、と」
「誠か!!」
「陛下も大層お喜びでございました」
思い出されるのはにやけた顔・・・おっと。
「皇子様方には、皇妃様からお伝えなさいますか?」
「そうさの! 今ちょうどキリよく片づいたので、これから話して参ろうか! あの子らも喜ぶぞ!」
「では、その様に。私はこれで失礼いたします」
「ロクサイス。大義であった」
「勿体ないお言葉でございます。では御前を失礼いたします」
さて、やる気を出した陛下の為に急ぎの書類の選考をしなければ。
ああ、後は朔夜様がこちらにお泊まりになられる部屋を用意しなければ。
陛下方にも確認をとって、まずは部屋の確保と内装の確認、それから・・・・・・。
「・・・・・・で、いくら書類を持ってこいとは言ったが、これはないんじゃないか?!」
目の前に高く積まれた処理待ちの書類。
それを見てやや青ざめた陛下。
私はにっこり笑うだけ。
執務室にいた他の側近も顔を引きつらせている。
失敬な。
大丈夫でございます。
陛下はやれば出来る子でございます。
その証拠に、口では文句を言いつつも手早く捌いておりますよ。
『いや、お前がそうさせてるんだって!』
他の側近も付き合いが長いのでロクサイスの性格はよく分かっている。
陛下も無駄にスペックが高いので熟せてしまうところが凄いが。
『普通はこんなに出来ねえよ!』
側近達の心の声は届かない。
夜も遅くなり、夕餉を抜きつつ頑張った陛下は、今日のノルマを熟した。
「お疲れ様でございました。また明日」
おやすみなさいませ、とロクサイスが去った後。
皇妃様方からたくさんの『ありがとう』を貰った陛下が、数日張りきって仕事を捌く姿が見られたとか何とか・・・・・・。
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