月の至高体験

エウラ

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本編

22 こっそり視察と非常識

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昨日は夕御飯の最中、半分寝ていたと思う。

おかしいな。僕、そんなに体力なかったかな?

そんな事を呟いていたサクヤだが、邸中の皆が思っていた。

『それはスオウ(様)のせい!!』

朝食の席に着いたサクヤをどこかほっとして迎えた皆に?となりながら挨拶をする。

「おはようございます。昨夜はお先に済みませんでした」
「いいんだよ。疲れてたろうし。昨夜はよく眠れた?」

リオネル父様が気遣ってくれる。

「ありがとうございます。グッスリ眠れました」
「よかった。とりあえず食べたら今日の予定を確認しようか」
「はい」

そして今日も美味しいご飯を食べて、食後のお茶を頂きながら、予定を確認する。

「私は仕事があるから今日は余り顔を見せないけど、皆は好きに過ごすといいよ。サクヤは皇の領を見に行くならば必ずスオウを連れて行くこと。あ、各務も連れて行ってくれて構わない。むしろ連れて行って」

ストッパーになるから・・・って、何の?
スオウが苦笑しているところをみるに、スオウ達は分かってるんだろうな。

「では、お言葉に甘えて、この後、支度をしてこっそり視察してきますね」
「うん。気を付けて」
「俺は学園に残ってる生徒会のメンバーとちょっとやり取りするから、サクヤに付き合えなくて残念!」
「大変だね? 頑張って、ガオウ兄様」
「うう! その言葉で兄様頑張れるよ!」
「現金なやつ」
「何だとぉ!」
「僕は母上とお茶会です! サクヤ兄様、戻ったら一緒にどうですか?」

リオウ君のお誘いは魅力的だ。

「そうだね。早く帰れたらクッキーでも焼いてお茶にしようか」
「はいっ!」

可愛いなあ。

そんな話をして各々散っていった。
僕も動きやすい服装に着替えないと。



さて、スオウと各務も支度を終えて、いざ行かん。



お約束通り、一旦、僕の執務室(仮)に転移した。
机の上に、インベントリから出した地図を広げてスオウ達に見せる。

二人がゴクッと喉を鳴らした気がするが、放置で。

「これは僕が上空から皇の公爵領を見て転写した地図だから正確なものだ。ここが今いる皇家で、この範囲が領内になる。で、代理人の邸がここ」

そう言って指差す。

距離的には3ケトル。
ちなみに1ケトルは前世での1㎞に当たるから、3キロって事。
1メトルが1mで1センは1cm、1ミルは1mmとなる。
その辺りは前世と同じで助かる。

「この邸の後ろ側に森があるから、そこに一旦転移して、邸をうかがう。何も問題がなさそうならば、あちこち転々として確認して帰るつもり。・・・大丈夫?」
「あ、うん。分かった。大丈夫だ、な? 各務も」
「はい。問題ありません」
「じゃあ、行こうか。インビジブルをかけるけど、この3人は離れてもかかったまま、普通に話も出来るから。匂いも消せるから安心して。さすがに人や物にはぶつかるからそこは注意してね」

さて、森に転移っと。



一瞬にして景色が森になった。

「到着!」
「凄いな。一瞬だ」
「・・・何というか・・・その、こんなに簡単に? そういえば無詠唱でした?! 魔力量は大丈夫なのですか?!」

スオウは昨日体験してるから大丈夫そうだけど、各務はいいリアクションするなあ。
そういえば説明不足だった。

「えーと、言うの忘れてたけど、基本、無詠唱です。短縮詠唱もするけど、使用する魔力はさほど差がないので、いつも無詠唱です!」

元々魔力量は多いので無問題。
って言ったら二人が半目でジトッと見てきた。何で?

「・・・・・・サクヤ、帰ったらその辺り、ガッツリ確認しようか」
「腹を割って、洗いざらい吐いて貰いましょう」

うん?
なんか悪役っぽいセリフ言ってない?!
帰るの怖いんですけど!

僕がぴるぴる震えてるのを見たスオウが、両手で顔を覆って天を仰いで何かブツブツ言ってる。

『クソ可愛いかよ。可愛いが過ぎる。抱き潰してえ』
『そんな事をしたら邸中の者を敵に回すぞ』

それをど突いた各務が耳元で何か呟いて、スオウが復活した。


何?

「ナンデモナイヨ」

スオウ、片言だぞ。ソレって怪しいヤツだぞ。
さり気なく目を逸らしたな。

まあいいや。

「ともかく、代理人の邸に転移するから近くに固まってて」

そう言って邸の傍に跳んでから探知魔法を使った。
代理人を探すためである。

「・・・・・・いた。でも、特に困ってる感じがしないな。問題なく廻ってるみたい」
「え、分かるの? 何をした?」
「探知魔法で位置を探って、魔力探知で魔力が安定してるか確認した。不安定だと何かしらあって動揺しているから分かるんだ」
「・・・・・・なんて言うか・・・」
「・・・帰ってから、ね?」
「・・・・・・ん?」

良く分かってない僕を置いてけぼりに、二人は仲良く?話してる。
・・・別にいいけどね!

「じゃあサクサク行こうか」

そう言って東西南北、果ては山のてっぺんまで跳んで、花江と見ていた藤の花を見ながら持参したお弁当を食べて、オクタヴィア家に転移した。

戻ったらちょうどこちらもお昼を終えたところで、約束していた午後のお茶会の為にクッキーを焼くことにした。

一旦、汗を流してから着替える為に部屋に戻る。
時間も少ないので、シャワーで済ませて着物に着替え、たすきとエプロンを持って厨房へ。

スオウも着替えて様子を見に来た。

「寮でいつも見てるけど、凄いよな。俺は混ぜたりするときの力仕事くらいしか手伝えない」

ササッとたすきを締めて着物を汚さないようにエプロンを身に付ける。
クッキーの材料は用意して貰ってる。助かります。

バターをクリーム状に練ったら、砂糖を加えて泡立て器で白くもったりするまで混ぜる。
溶き卵を何回かに分けて入れ、その都度よく混ぜて。
ふるった小麦粉をへらで捏ねないようにさっくり、粉っぽくなくなったら絞り出し袋に入れて、オーブン用の天板に絞り出す。

後はオーブンで、焦げないように焼き上げたら粗熱を取って完成。

オーブンを開けたら、甘い、幸せな香りが広がった。









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