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本編
16 口が悪いサクヤの前世と今世
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夕御飯の時は猫を被った。
最初に泣いたことを謝ったら、逆に謝られて心配された。
いたたまれない。
のっけからスオウが猫を捨てた俺の事を暴露したので、早々に猫は脱ぎ捨てた。
と言うか、今世と前世がごちゃ混ぜで、正直自分でも区別が上手くつかないので、『僕』になったり『俺』になったり、雑な話し方になったり。
ちょっと落ち着くまで待って欲しい。
そんなことを、夕御飯の後に取って貰った時間の中で話した。
まずは、自分の前世で覚えてること。
こことは違う世界で、魔法がない。代わりに科学という物が発展し、病気や怪我の治療も薬や科学技術で行っていた。
俺は発達した治療法でも治らない不治の病だったらしく、ほとんどベッドの中で過ごした。
いるのは医者と看護士、病院に入院中の他の患者。
親は物心つく頃に一度会ったか。噂で弟がいると聞いた。元気で愛されていると。
「生きていながら、死んでいるようなそんな感じだ。医者達は仕事だから面倒を見るし、おそらく親は資産家だったんだろう。お金はあったから、世間体のために治療していたんだと思う。・・・死ぬときまで会いにも来なかったのは覚えてる」
だから、今世、最初から期待はしなかった。
「生まれてすぐに記憶があったから、周りの様子を観察して、前世と境遇が似てるなって思った。健康だったのが一番の喜びで。どこにでも自由に行ける・・・・・・そう思ってたけど」
蓋を開ければ、勉強勉強・・・。マナー、ダンス、剣術、帝王学、領地運営、魔法・・・etc.。
そのくせ、世話人はなく、食事は最低限よりも酷く、体面上衣服はくれたが質素なもので。
「もう、ひたすら無になって過ごした。ふとした時に考えるんだ。俺って居なくてもよくね?って」
それを聞いていたオクタヴィア家の面々は、この前世からの荒んだ生活のせいで言動が粗野になったのだろうと納得する。
それでもそこはかとなく品がいいのは、生まれ持った容姿と今世の教育のたまものか。
「サクヤは、前世でどんな容姿だったんだ? 覚えてる?」
スオウが聞いてきた。
皆も興味津々なのか、心なしか体を乗り出している。
「うーん。まあ、今よりずっとガリガリだったけど、ほとんど今と変わらないかな? あ、でも色は全然違う。アルビノだったんだ」
「あるびの?」
「うん。遺伝子の欠如で、生まれつき色が薄いんだ。俺は、髪は真っ白で目も薄い灰色。目はろくに見えないから眼鏡かけてた。肌も白くて、日に当たると火傷したようになるから外に出たこともない」
それを聞いた皆は絶句していた。
「だからね、今世での環境は最悪だけど、この体は最高って思ってる。生きててよかった。スオウに出逢えてよかったって思ってるから。だからね」
そんな顔しないで。
僕より辛そうで、心が痛い。
「とりあえず、僕の話はひとまずこれでお終い。また何かあったら聞いて? 皆も、こんな僕を身内のように接してくれてありがとうございます」
そう言って、最後はいっぱい猫を被ってみた。
精一杯の笑顔を添えて・・・。
それから部屋に戻ってひと息吐く。
今日一日が凄い濃密だった。
体力よりも気力が削られた。
カウチでぼーっと横になっていると、ノックと共にスオウが入ってきて、俺の向かいに座った。
「お疲れ」
スオウが苦笑してる。
「うん。疲れた。主に気疲れ」
もう取り繕う気がないので、そのまま寝転がっている。
「でも、スッキリしてるんだ。前世の事なんて誰にも言えないし、なんか、背負ってた物が減ったよね?」
だから、ありがとう。
「どういたしまして。じゃあ、体もスッキリして寝ようか」
「・・・あー、動きたくない。浄化魔法で終わりじゃ駄目か?」
気疲れで動くの億劫で。風呂好きだから入りたいけど。
「俺が世話してやるぜ?」
「え? スオウが? 世話される側だろう?」
出来るのか?
「俺だって一通りは自分でできるよ。騎士の野外訓練で野営とかするからな」
「へえ。俺は野外訓練とか経験ないな。今度やってみたい。学園で予定はなかったっけ?」
「連休明けのひと月後にあるな。後でやり方教えてやるから、とりあえず、今はこっちな」
そう言っていつの間にかスオウの部屋に連れて行かれてた。
あれ?
「こっちは檜風呂で、広いから」
「えっ!! 檜風呂?!」
サクヤがめちゃくちゃ食いついた。
「入る入る入るっ!」
珍しく暴れるサクヤ。
「おおお落ち着け!」
抑えるスオウがちょっと押されていて転びそうだ。
「お二人とも落ち着いて下さい。危のうございます!」
見かねた各務が間に入った。
後、各務一人では危ないと思ったのか影さんが二人追加で駆けつけた。
興奮してすみませんでした。
反省。
最初に泣いたことを謝ったら、逆に謝られて心配された。
いたたまれない。
のっけからスオウが猫を捨てた俺の事を暴露したので、早々に猫は脱ぎ捨てた。
と言うか、今世と前世がごちゃ混ぜで、正直自分でも区別が上手くつかないので、『僕』になったり『俺』になったり、雑な話し方になったり。
ちょっと落ち着くまで待って欲しい。
そんなことを、夕御飯の後に取って貰った時間の中で話した。
まずは、自分の前世で覚えてること。
こことは違う世界で、魔法がない。代わりに科学という物が発展し、病気や怪我の治療も薬や科学技術で行っていた。
俺は発達した治療法でも治らない不治の病だったらしく、ほとんどベッドの中で過ごした。
いるのは医者と看護士、病院に入院中の他の患者。
親は物心つく頃に一度会ったか。噂で弟がいると聞いた。元気で愛されていると。
「生きていながら、死んでいるようなそんな感じだ。医者達は仕事だから面倒を見るし、おそらく親は資産家だったんだろう。お金はあったから、世間体のために治療していたんだと思う。・・・死ぬときまで会いにも来なかったのは覚えてる」
だから、今世、最初から期待はしなかった。
「生まれてすぐに記憶があったから、周りの様子を観察して、前世と境遇が似てるなって思った。健康だったのが一番の喜びで。どこにでも自由に行ける・・・・・・そう思ってたけど」
蓋を開ければ、勉強勉強・・・。マナー、ダンス、剣術、帝王学、領地運営、魔法・・・etc.。
そのくせ、世話人はなく、食事は最低限よりも酷く、体面上衣服はくれたが質素なもので。
「もう、ひたすら無になって過ごした。ふとした時に考えるんだ。俺って居なくてもよくね?って」
それを聞いていたオクタヴィア家の面々は、この前世からの荒んだ生活のせいで言動が粗野になったのだろうと納得する。
それでもそこはかとなく品がいいのは、生まれ持った容姿と今世の教育のたまものか。
「サクヤは、前世でどんな容姿だったんだ? 覚えてる?」
スオウが聞いてきた。
皆も興味津々なのか、心なしか体を乗り出している。
「うーん。まあ、今よりずっとガリガリだったけど、ほとんど今と変わらないかな? あ、でも色は全然違う。アルビノだったんだ」
「あるびの?」
「うん。遺伝子の欠如で、生まれつき色が薄いんだ。俺は、髪は真っ白で目も薄い灰色。目はろくに見えないから眼鏡かけてた。肌も白くて、日に当たると火傷したようになるから外に出たこともない」
それを聞いた皆は絶句していた。
「だからね、今世での環境は最悪だけど、この体は最高って思ってる。生きててよかった。スオウに出逢えてよかったって思ってるから。だからね」
そんな顔しないで。
僕より辛そうで、心が痛い。
「とりあえず、僕の話はひとまずこれでお終い。また何かあったら聞いて? 皆も、こんな僕を身内のように接してくれてありがとうございます」
そう言って、最後はいっぱい猫を被ってみた。
精一杯の笑顔を添えて・・・。
それから部屋に戻ってひと息吐く。
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カウチでぼーっと横になっていると、ノックと共にスオウが入ってきて、俺の向かいに座った。
「お疲れ」
スオウが苦笑してる。
「うん。疲れた。主に気疲れ」
もう取り繕う気がないので、そのまま寝転がっている。
「でも、スッキリしてるんだ。前世の事なんて誰にも言えないし、なんか、背負ってた物が減ったよね?」
だから、ありがとう。
「どういたしまして。じゃあ、体もスッキリして寝ようか」
「・・・あー、動きたくない。浄化魔法で終わりじゃ駄目か?」
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「俺が世話してやるぜ?」
「え? スオウが? 世話される側だろう?」
出来るのか?
「俺だって一通りは自分でできるよ。騎士の野外訓練で野営とかするからな」
「へえ。俺は野外訓練とか経験ないな。今度やってみたい。学園で予定はなかったっけ?」
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そう言っていつの間にかスオウの部屋に連れて行かれてた。
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「お二人とも落ち着いて下さい。危のうございます!」
見かねた各務が間に入った。
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興奮してすみませんでした。
反省。
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