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本編
11 初めてのお泊まり その弐
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そうして馬車で揺られること約2時間。
なだらかな丘と平原が続く、長閑な景色に変わった頃、スオウが言った。
「この辺りはもうオクタヴィア領だよ。領は主に帝国の食糧庫になっているんだ。穀物から野菜、果ては放牧もやってる」
「・・・凄いね。これだけの土地をきちんと管理しているんだね。さすが帝国。大公様々だね」
「サクヤだって、自領の視察とか独りで熟してるんだろ。そっちの方が凄い」
「・・・僕は必要に迫られて、だよ。ほっとくと父上も家令も、誰も行かないし、苦情の処理も僕の役目で。・・・父上は皇城での宮仕えで滅多に帰宅しないし。母上は陽希に構いっきりで家のこともしないし」
実質、僕が皇領を回してたから。
「・・・・・・今、どうなってるのか、知るのが怖い。僕がいなくてもやってくれてるといいんだけど」
前もって出来ることはしておいたけど、長期休暇の時は帰らないと不味いよね・・・・・・。
今までは独りでやって当然という雰囲気で気にもしなかったけど、スオウに出会って分かった。
僕の置かれている状況が異常だって事が。
だからといって、そんなに簡単には変えられないけど。
「・・・今は忘れて、連休を楽しもうぜ。大丈夫、向こうだってそのくらいやれるさ」
「・・・ん、そうだった。せっかくスオウの家にお泊まり出来るんだから、楽しまないとね?」
最悪、こっそり転移して片付けてくればいい。
そんな事を考えていて、スオウと各務が目配せしていたのに気付かなかった。
長閑な景色を見ながら更に30分程進んで、馬車が停まった。
着いたようだ。
各務が先に降りて、スオウが降りる。
そして僕をエスコートしてくれた。
・・・ん?
僕、男だよ?
普通はエスコートする側だよね?
見た目もやしっ子だけど、鍛えてるからね?
ちょっとモヤッとしながら、断る理由もないので手を出してエスコートを受け入れた。
そのままエスコートされて降りると、目の前には大きくて立派な、でも派手じゃない、素敵なお邸があって。
そして、わざわざ出迎えてくれたのだろう、大公家の方々が待っていた。
「いらっしゃい、サクヤ殿。初めまして、スオウの父でリオネルと言う。こちらは妻の華恋。こちらが長子のガオウ。末っ子のリオウだよ。よろしくね?」
「サクヤ様、花江から話だけは伺っておりました。立派になられて、花江もきっと喜びます」
「乳母の花江をご存知で?」
「国では親友でしたの。・・・随分とご苦労なさったとか。私の事はどうぞ母と思って下さいまし」
そう言って優しく抱きしめて下さった。
こんな温もりは5年ぶりで・・・。
「・・・ありがとう・・・存じ、ます。・・・華恋母様と、お呼びしても・・・?」
「ええ、ええ。もちろん。嬉しいわ」
おそらく花を撒き散らしながら、僕もそっと抱きしめ返した。
ヤバい、泣きそう・・・。
スオウ、助けて。
願いが通じたのか、スオウが僕をお母上から引っ剥がしてぎゅうぎゅうと抱きしめた。
お陰で零れそうだった涙が引っ込んだ。
「心の狭いヤツは嫌われるぞ?」
ニヤリと笑うお兄様。
「綺麗で可愛い方ですね!」
にこにこな弟君。
ここには、僕が前世から欲して止まない、でも諦めていた理想の家庭があった。
「こんな家族だけど、よろしくな」
そう言って笑ったスオウは眩しくて・・・・・・。
僕はおそらく、何年ぶりかになる笑顔を見せていたと思う。
たぶんホントにちょっとだけど、口元があがったと思う。
皆が呆然としていたから。
なだらかな丘と平原が続く、長閑な景色に変わった頃、スオウが言った。
「この辺りはもうオクタヴィア領だよ。領は主に帝国の食糧庫になっているんだ。穀物から野菜、果ては放牧もやってる」
「・・・凄いね。これだけの土地をきちんと管理しているんだね。さすが帝国。大公様々だね」
「サクヤだって、自領の視察とか独りで熟してるんだろ。そっちの方が凄い」
「・・・僕は必要に迫られて、だよ。ほっとくと父上も家令も、誰も行かないし、苦情の処理も僕の役目で。・・・父上は皇城での宮仕えで滅多に帰宅しないし。母上は陽希に構いっきりで家のこともしないし」
実質、僕が皇領を回してたから。
「・・・・・・今、どうなってるのか、知るのが怖い。僕がいなくてもやってくれてるといいんだけど」
前もって出来ることはしておいたけど、長期休暇の時は帰らないと不味いよね・・・・・・。
今までは独りでやって当然という雰囲気で気にもしなかったけど、スオウに出会って分かった。
僕の置かれている状況が異常だって事が。
だからといって、そんなに簡単には変えられないけど。
「・・・今は忘れて、連休を楽しもうぜ。大丈夫、向こうだってそのくらいやれるさ」
「・・・ん、そうだった。せっかくスオウの家にお泊まり出来るんだから、楽しまないとね?」
最悪、こっそり転移して片付けてくればいい。
そんな事を考えていて、スオウと各務が目配せしていたのに気付かなかった。
長閑な景色を見ながら更に30分程進んで、馬車が停まった。
着いたようだ。
各務が先に降りて、スオウが降りる。
そして僕をエスコートしてくれた。
・・・ん?
僕、男だよ?
普通はエスコートする側だよね?
見た目もやしっ子だけど、鍛えてるからね?
ちょっとモヤッとしながら、断る理由もないので手を出してエスコートを受け入れた。
そのままエスコートされて降りると、目の前には大きくて立派な、でも派手じゃない、素敵なお邸があって。
そして、わざわざ出迎えてくれたのだろう、大公家の方々が待っていた。
「いらっしゃい、サクヤ殿。初めまして、スオウの父でリオネルと言う。こちらは妻の華恋。こちらが長子のガオウ。末っ子のリオウだよ。よろしくね?」
「サクヤ様、花江から話だけは伺っておりました。立派になられて、花江もきっと喜びます」
「乳母の花江をご存知で?」
「国では親友でしたの。・・・随分とご苦労なさったとか。私の事はどうぞ母と思って下さいまし」
そう言って優しく抱きしめて下さった。
こんな温もりは5年ぶりで・・・。
「・・・ありがとう・・・存じ、ます。・・・華恋母様と、お呼びしても・・・?」
「ええ、ええ。もちろん。嬉しいわ」
おそらく花を撒き散らしながら、僕もそっと抱きしめ返した。
ヤバい、泣きそう・・・。
スオウ、助けて。
願いが通じたのか、スオウが僕をお母上から引っ剥がしてぎゅうぎゅうと抱きしめた。
お陰で零れそうだった涙が引っ込んだ。
「心の狭いヤツは嫌われるぞ?」
ニヤリと笑うお兄様。
「綺麗で可愛い方ですね!」
にこにこな弟君。
ここには、僕が前世から欲して止まない、でも諦めていた理想の家庭があった。
「こんな家族だけど、よろしくな」
そう言って笑ったスオウは眩しくて・・・・・・。
僕はおそらく、何年ぶりかになる笑顔を見せていたと思う。
たぶんホントにちょっとだけど、口元があがったと思う。
皆が呆然としていたから。
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