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本編
2 俺の事
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俺はこのオクタヴィウス帝国の皇兄を父に持つ大公家の次男だ。
母は東の皇国ジパングの侯爵家令嬢だったので、スオウという帝国では珍しい名前をつけてくれた。
漢字というものがあって、俺の名前の由来が『蘇芳』だそうだ。
髪や瞳が蘇芳色というんだそうだ。
そんな俺が今回入学する学園の試験で次席だったと聞いたときは両親や兄弟にも驚かれた。
そりゃあ、神童と言われるくらい勉強も剣術も魔法もトップクラスだったからな。
でも俺だって人間だぜ?
一問や二問くらい間違えるって。
聞いたところ、首席の子は満点合格だった。
嘘だろ?
俺をおさえて首席を取ったジパング皇国の公爵令息には大いに興味を持った。
で、母さんに聞いたらいやーな話を聞かされた。
「父である公爵様には厳しくされて、母親の公爵夫人は双子の弟の陽希様を猫可愛がりして、兄である朔夜様には目もくれないそうよ。彼の方を愛し慈しむものは皆無と」
悩ましげに溜息を吐くと。
「おかげで、元々感情の機微に疎いお顔が全く仕事をしなくなったとか。それを聞くと不憫で・・・」
やけに詳しいな。
影でも潜ませてたのか?
「・・・母さん、それ、何処からの情報?」
思わずといった感じでガオウ兄さんが口を挟んだ。
「朔夜様の乳母だった花江からよ。花江は母様の親友なの。こちらに輿入れしてからもずっと手紙のやり取りをしていたのよ。でも5年ほど前に体を悪くして里下がりをしたあとは解雇されて、それきり朔夜様の事は分からないと・・・」
思いだしたのか、涙を堪えるようにして父さんの胸に顔を埋めてしまった。
「他国の家のことに首を突っ込む気はないが、聞くに堪えんな。皇弟ともあろう方がそれを許しているとは・・・」
父さんに同意だ。
「スオウ、学園で接触したら、人となりを見極めて、よかったらサポートしてあげなよ。俺の方でも探ってみるから、何かあれば遠慮なく頼れ」
ガオウ兄さんに頷いた。
今年2学年になる兄さんは生徒会の副会長を任されている。頼りになるな。
「僕は何も出来ないけど、頑張って!」
末のリオウは5歳離れていてまだ初等科だ。
「ありがとう。お前は母さんを護ってやってくれ」
そう言うと、ニコッと笑った。
「で、母さん。悪いんだけどその弟の方は聞いてるの?」
チラッと父さんを見てから母さんに聞く。
「・・・ごめんなさい。大丈夫よ。弟の陽希様は夫人に似て可愛らしい容姿だそうよ。それで陽希様ばかりを可愛がられているから、陽希様も朔夜様に辛く当たり、使用人すら朔夜様を蔑ろにしていたと聞くわ」
「誰も諫めないのか」
「そうみたい。世話人の一人もなく、花江だけでは限度があるからと身の回りの事は全てご自分でなさっていたそうよ。でも無理がたたって花江は体を壊してしまったのだけれど・・・」
思った以上に深刻そうだ。
母さんの話を聞いて望んだ入学式で、冷たい印象だった横顔が、新入生代表として呼ばれたときに『へっ?』て顔に一瞬なって、『嘘ぉ』と呟かれた弱々しい声に思わず口元が弛んだ。
え? 自分が首席って気付いてなかったんだ?
そんなことってある?!
天然か!
ギャップ萌かよ!
結局、席に戻ってからコソッと話してみたら、天然いい子ちゃんだと分かった。
これは俺が護ってやらないとアカンやつだ。
あの弟からも、有象無象の野郎どもからも護ってやるからな!
任せろ!
母は東の皇国ジパングの侯爵家令嬢だったので、スオウという帝国では珍しい名前をつけてくれた。
漢字というものがあって、俺の名前の由来が『蘇芳』だそうだ。
髪や瞳が蘇芳色というんだそうだ。
そんな俺が今回入学する学園の試験で次席だったと聞いたときは両親や兄弟にも驚かれた。
そりゃあ、神童と言われるくらい勉強も剣術も魔法もトップクラスだったからな。
でも俺だって人間だぜ?
一問や二問くらい間違えるって。
聞いたところ、首席の子は満点合格だった。
嘘だろ?
俺をおさえて首席を取ったジパング皇国の公爵令息には大いに興味を持った。
で、母さんに聞いたらいやーな話を聞かされた。
「父である公爵様には厳しくされて、母親の公爵夫人は双子の弟の陽希様を猫可愛がりして、兄である朔夜様には目もくれないそうよ。彼の方を愛し慈しむものは皆無と」
悩ましげに溜息を吐くと。
「おかげで、元々感情の機微に疎いお顔が全く仕事をしなくなったとか。それを聞くと不憫で・・・」
やけに詳しいな。
影でも潜ませてたのか?
「・・・母さん、それ、何処からの情報?」
思わずといった感じでガオウ兄さんが口を挟んだ。
「朔夜様の乳母だった花江からよ。花江は母様の親友なの。こちらに輿入れしてからもずっと手紙のやり取りをしていたのよ。でも5年ほど前に体を悪くして里下がりをしたあとは解雇されて、それきり朔夜様の事は分からないと・・・」
思いだしたのか、涙を堪えるようにして父さんの胸に顔を埋めてしまった。
「他国の家のことに首を突っ込む気はないが、聞くに堪えんな。皇弟ともあろう方がそれを許しているとは・・・」
父さんに同意だ。
「スオウ、学園で接触したら、人となりを見極めて、よかったらサポートしてあげなよ。俺の方でも探ってみるから、何かあれば遠慮なく頼れ」
ガオウ兄さんに頷いた。
今年2学年になる兄さんは生徒会の副会長を任されている。頼りになるな。
「僕は何も出来ないけど、頑張って!」
末のリオウは5歳離れていてまだ初等科だ。
「ありがとう。お前は母さんを護ってやってくれ」
そう言うと、ニコッと笑った。
「で、母さん。悪いんだけどその弟の方は聞いてるの?」
チラッと父さんを見てから母さんに聞く。
「・・・ごめんなさい。大丈夫よ。弟の陽希様は夫人に似て可愛らしい容姿だそうよ。それで陽希様ばかりを可愛がられているから、陽希様も朔夜様に辛く当たり、使用人すら朔夜様を蔑ろにしていたと聞くわ」
「誰も諫めないのか」
「そうみたい。世話人の一人もなく、花江だけでは限度があるからと身の回りの事は全てご自分でなさっていたそうよ。でも無理がたたって花江は体を壊してしまったのだけれど・・・」
思った以上に深刻そうだ。
母さんの話を聞いて望んだ入学式で、冷たい印象だった横顔が、新入生代表として呼ばれたときに『へっ?』て顔に一瞬なって、『嘘ぉ』と呟かれた弱々しい声に思わず口元が弛んだ。
え? 自分が首席って気付いてなかったんだ?
そんなことってある?!
天然か!
ギャップ萌かよ!
結局、席に戻ってからコソッと話してみたら、天然いい子ちゃんだと分かった。
これは俺が護ってやらないとアカンやつだ。
あの弟からも、有象無象の野郎どもからも護ってやるからな!
任せろ!
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