月の至高体験

エウラ

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本編

1 僕の事

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僕の名前は皇朔夜スメラギサクヤ
東の皇国ジパングの皇弟を父に持つ公爵家の嫡男だ。
黒髪黒曈と皇国に多い色味を持つが、僕ほど漆黒なのは珍しいそうだ。

15歳になり、留学生として帝国の学園に入学したのだけど・・・。

何故こんな事になったんだろうか。

新入生代表として壇上に上がる。

コレって入学試験で首席の人がやるんだよね?
え、僕が首席なの?
挨拶なんて何にも考えてないよぉ!
何で前もって教えてくれないの?!
それとも案内に書いてあった?
分かんないよぉ。

内心ガクブルしながら壇上で何とか挨拶をし、席に戻った。今ココ。

ほっとしたのも束の間、後ろの方から殺気にも似た視線を感じる。
・・・おそらく、というか確実にアイツだ。

双子の弟、陽希ハルキ
二卵性双生児で、あまり似ていない。
可愛らしい容姿で、両親や周りの皆から愛されている弟。

そのせいか、ちょっと(かなり?)傲慢で、自分の思った通りにならないとすぐに癇癪を起こす。
周りがソレを諫めないものだからやりたい放題。

僕を目の敵にするなら、勉強も剣術も魔法も努力して勝てばいいのに。
僕はそれら全てを厳しく詰め込まれたから頑張って熟しただけ。
他にする事もなかったし。

自分の不勉強を棚に上げて僕に八つ当たりしないで欲しい。
ホント迷惑。

「・・・なあ、ヤバい視線を感じるんだけど、大丈夫か?」
左側の席の人がコソッと声をかけてきた。
「いつものことだから気にしないでいい」
僕もコソッと告げる。
「ええ? まじか」
「僕の双子の弟。二卵性双生児で似てないけどね。茶髪クセ毛で茶色い垂れ目、僕より小柄」
そう言ったら器用に後ろを覗き見して確認してた。
「・・・なるほど。りょーかい」

敵を確認したような返事に、クスッと笑う。ああ、表情筋は死んでるから声だけね。
「悪いね、とばっちりで気分悪くさせて。僕は皇朔夜」
「いやいや。知ってるよ、今さっき挨拶してたじゃん。俺はオクタヴィア・スオウ。よろしくな」
・・・オタク・・・いやいや違う。
「・・・名前が皇国っぽい」
「俺の母が皇国出身なんだ。スオウは蘇芳とも書く」
僕はそれを聞いてまじまじと彼を見直した。
黒っぽい紅の、蘇芳色の髪と瞳。
意思の強そうなキリッとした顔だ。
「うん、いい名だね」

名は体を表す。

それは僕にも当てはまるけれど。

「ありがとう!」
嬉しそうに笑う彼が眩しかった。

この後、彼が親友と呼べる間柄になるのはあっという間のこと。
僕の学園生活に、いや、プライベートでもなくてはならない存在になるとはこの時は思わなかったが。



そんな話をコソコソしている間も、いや入学式が終わるまでずっと、ギリギリと歯ぎしりが聞こえそうな視線を受け流して、スオウと教室へ向かった。

目立つつもりはなかったんだけど、絶対に目立ったな。
誰だよ、次席のヤツ!
もっと頑張れよ!
と思ってたが、隣のスオウこそが次席だと気付いた。
成績の席順だった。ごめん。

僕って時々抜けてるから・・・。

はぁ、前途多難だなあ・・・。

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