3 / 7
2ー1【どうしてこうなった?】わんこ系年下冒険者攻め×年上転生冒険者受け
しおりを挟む
【わんこ系年下冒険者攻め×前世記憶持ち年上転生冒険者受け。22歳でSランク冒険者になった男と物心ついたときに前世の記憶が甦ってちょっとチートだけど基本よわよわの27歳無自覚美人Cランク冒険者の男。
やや無理矢理な行為あり。わんこ君は若干ストーカー気味】
ココはドーリアという神様のいる剣と魔法の世界。
大陸にはいくつかの大国と小国が存在していて、魔王と呼ばれる存在はいないが、どこからか瘴気が湧いてきてそこから魔物が生まれる。
そしてその魔物を狩る者達も当然のように存在して、一般的に冒険者や傭兵と呼ばれている。
冒険者は冒険者ギルド、傭兵は傭兵ギルドに所属していている。
冒険者は冒険者ランクというモノがあって各自依頼を達成しながら昇級していく。
冒険者は誰かを守るためにランクをあげるのではなく金を稼ぐのが主な目的だ。
一方、傭兵も傭兵ランクがあるが冒険者が普段は個人個人や数名のグループで行動するのに対し、傭兵は自治体の軍のような存在なので大抵が大人数で行動するのだ。
要するに傭兵は街を守るために行動する。
有事の際は協力体制を取るが、お互いの行動意義がそもそも違うので、平時の時はあまり関わらない。
そんな中で、俺は辺境の街にある冒険者ギルドに所属している。
俺の名前はノヴァ。
黒髪黒目で童顔、ひょろっとした筋肉のつきにくい身体で、特筆するとしたら前世の記憶があるくらいの平凡な男だ。
物心ついた頃に魔物に襲われて大ケガを負ったときに前世の記憶が走馬灯のように頭に流れ込んで意識を失った。
ケガじゃなくてオーバーフローで死にかけたっていう……。いや瀕死の重傷だったのは確かだけど。
ちなみに旅の行商人だった両親はこのときに俺を庇って死んでしまったらしい。
意識不明で生死の境を彷徨うことおよそ一週間。気付いたら孤児院で院長先生にそう言われた。
葬儀はとっくに済んでいて、歩けるくらいに回復したあと、教会の裏手にある共同墓地に連れてきてくれた。
『ここに君のご両親が眠っています。……お別れの言葉を伝えますか?』
そんな難しい言葉で言われてもわずか三歳足らずの幼児に通じないだろ、と思いつつも今世での両親に挨拶をした。
『これまであいじょうをもってそだててくれて、ありがとうございます。ととさま、かかさま。おれはつよくいきていきます』
『───っよく出来ましたね。これからは教会
の孤児院があなたの家です。皆が家族ですよ。何も心配いりません』
『はい。よろしくおねがいします』
そう言って泣きもせずにお辞儀をする俺を気味悪がらずに面倒見てくれて、本当に助かったと思う。
よく考えれば三歳足らずの幼児がそんな風に話したり行動しないだろう。
俺も大概、動揺していたみたいだ。
孤児院での生活はおおむね快適だった。そりゃあご飯も足りてないし、孤児院の掃除や料理の当番とか下の子の面倒とかやることも課題も多かったけど、衣食住は最低限あったし俺はチョイチョイと前世の知識で問題を解決していった。
あとはなるべく自分のことは自分でやり、文字を習い本を読んだ。
知識はどこの世界でも宝だからな。
前世の記憶が甦り、この世界に魔法があると知ってからはより一層そっち方面にのめり込んだ。
食生活がよくなかったのと下の子にちょっとずつ分けていたせいでガリガリのチビだったから、剣で戦うのは早々に諦めた。
そうしてこの世界で成人となる16歳で孤児院を出て冒険者になって、はや11年。
───なぜ俺はこいつに襲われてるんだろう?
俺の目の前にいるのはSランク冒険者のアビス。ミディアムの長さの薄い金色の髪に透き通るような薄い紫色の瞳を持つ、やや垂れ目の美丈夫。俺の5歳年下で今22歳のコイツの背は俺の頭一つ分高いから190cmはあるだろう。
「ノヴァ」
そんなモテ要素満載の男が、平々凡々の俺の名を甘く呼ぶ───絶賛壁ドンならぬ床ドン中の俺を。
いや意味が分からん。
ココは森の中にある小さな横穴。俺は平気だが、背の高いアビスは頭のてっぺんを擦りそうなくらいの高さしかない。
おそらくはベア系の魔物がねぐらに使っていたのだろう。
そんな場所に大の大人の男が二人、なぜいるのかというと───。
◇◇◇
遡ること約30分前。
俺は朝から、常時依頼の出ている回復薬に使う薬草の採取で街から離れたこの森に来ていた。
ついでに串焼き屋台のおっさんに依頼された角兎の肉を手に入れられたらラッキーくらいの気持ちで薬草を刈り取っていたら、昼にさしかかった頃になって雲行きが怪しくなってきたんだ。
一応雨対策にレインコートを持っていたが、どうやら雷雨っぽくて危険だから避難できそうな場所を探して見つけたのがこの横穴だった。
その頃には土砂降りで俺はレインコートの下までびしょ濡れ。
慌てて異空間収納鞄に入れておいた枯れ枝を出してまとめて『着火』の魔法で火を点けた。
その炎が大きくなったタイミングで俺のいる横穴に飛び込んできたのがコイツ、Sランク冒険者のアビスだった。
俺は濡れて張り付いた服を脱ごうと上着の裾を捲り始めたところで静止してポカンとした。
だって、何でSランク冒険者がこんな森にいるんだよって話で。Sランク冒険者の受けるような依頼はこの森にはないだろう?
アビスも俺同様にびしょ濡れで、濡れた髪をかき上げながら俺を見てニコッと笑った。
いや、水もしたたるイイ男の色気満載だったのに笑うと大型犬みたいで可愛い、なんて思わずキュンとしてしまった。
これがギャップ萌えか。
───いやいや何言ってんの、俺!
「えと、どーも?」
「やあ、ノヴァ」
俺は話したことはないが彼は超有名人だから一応挨拶しとこう。
……んん?
「……何で俺の名前……」
たぶん教えてないと思うんだが、なぜしがない万年Cランク冒険者の俺の名前を知ってるんだ?
「だって有名でしょ」
「? 俺が有名なことなんて何もないが?」
首を傾げるとアビスも同じように首を傾げた。オイコラ可愛いな。
「……ま、いっか。ちょうど火を熾したところだから雨宿りがてら暖まっていけば?」
「うん、じゃあお言葉に甘えてそうさせて貰おうかな」
俺はこのとき、アビスは焚き火で乾かさなくても魔法でパッと乾かせるだろうことに気付かずにそう言って火の近くに誘ったんだ。
平凡な俺と違って魔力も豊富なアビスならそれくらい朝飯前だったろう。
俺は自分が魔力が少なくて、それを温存するためにできるだけ魔法を使わずにいたのでアビスにもそのつもりで接していたんだ。
俺は基本ソロだから、他の冒険者がどう行動しているかなんてよく知らなかったから。
それにアビスは否定もせずに笑って焚き火に近づいたからそんな簡単なことにも気付けなかったんだ。
濡れた服を脱ぐ途中だった俺は寒さにふるりと震えて慌ててシャツを脱いだ。脱いだ服は焚き火のそばに杭を打ってロープを渡した物干しにかけた。
靴もぐっしょりで気持ち悪い。さっさと脱いで逆さに吊し、ズボンも脱ぐ───と、視線を感じて顔を上げた。
アビスが俺を───いや正確には俺の左胸付近の傷痕を見ていた。
三本のかぎ爪が左鎖骨から胸の中央に向かって走っている。結構な傷だ。
「……あー、気分悪いよな、悪い。すぐに新しいシャツを羽織るから───」
「───いや、気にしないが……それは?」
「……子供の頃に魔物に襲われて、そのときのケガだ」
「傷痕を見るにかなり深そうだけど」
「うん、実は死にかけた。……両親はそのときに死んじゃったけどな」
「───ごめん。イヤなこと聞いちゃったね」
そう言ってシュンとするアビスに苦笑した。
「いや、全然大丈夫。気にするな」
そう言えばアビスはあからさまにホッとした。
俺はその隙にさっさと替えのシャツを羽織ってパンツも履き替えるとズボンも靴も履いてホッと一息吐く。
見るとアビスもいつの間にか着替えていた。
早っ!
そうして地面にシートを敷いてそこにクッションを置いて座ると、俺達は遅めの昼食を摂りながら雑談をした。
───不意に雷がすぐ近くに落ちた音が聞こえて、俺はビクッと大袈裟なほど身体を跳ねさせた。
「───っひ、」
「ノヴァ? どうし───っ」
「───っや……」
次の瞬間には俺は隣に座っていたアビスにしがみついてガタガタと震えていた。
それをアビスが戸惑いながら受け入れてくれる。
「……ノヴァ、大丈夫?」
「……お、俺、かっ雷が昔っから、こっ怖くて───っごめ……っ」
「……うん。大丈夫だから。落ち着くまでギュッとしててあげる」
前世の俺の死因はハッキリしないが、稲光のような眩しさと轟音でブラックアウトした記憶が残っていて、それを思い起こさせる雷が昔から苦手だった。
だから今もこうして避難していたんだけど……。
鳴り止まない雷が俺をパニックにさせた。
いい年したアラサーが年下に抱きついて泣いて震えてるって、端から見たらやべえ男じゃん。
アビスがそんな俺を愛おしそうに見つめているなんて思いもせずに───。
◇◇◇
───そして、さっきの壁、いや床ドンに繋がるわけだが……。
雨は相変わらず激しいが雷はだいぶ遠くに移動して、さすがに俺も冷静になった。
恐怖でぐちょぐちょに泣いた汚い顔を袖で拭うと慌ててアビスから離れようとして───出来なかった。
ヒョイッと視界が天を向いて、俺の顔の両脇にはアビスの腕が。
至近距離の目と鼻の先にはイケメンがいる。ソレは口がくっつくくらいの距離で。
「ノヴァ」
その口が俺の名を甘く紡いで───唇が触れた。
「……っ!? な、あっアビス!? んぅ……」
「しぃ。黙って、俺にその身を委ねて」
「…………へ、ぇ?」
俺の今世での、いやもしかすると前世からのファーストキスを奪ったこの男は、壮絶な色気を醸し出してそう言った。
俺は惚けて固まり、いつの間にかアビスの唇をまた受け入れていた。
───そして現在、俺の後孔にはあり得ないほど大きなアビスの剛直が挿入されている。
「───ん、あっ……それダメ……っ」
「ん、ココ気持ちいいね、ノヴァ」
やだって言ってるのにガツガツと執拗に俺の気持ちいいところばかり攻め立てるアビス。
アレからどのくらい時間が経ったのか、これもおそらく前世から童貞処女の俺の後ろの処女を奪った男にあっという間に調教された身体が感じまくって辛い。
「や、アビス……やだっ───何でぇ?」
「……理由が必要? 俺がノヴァを好きだから、じゃあダメ?」
「───っどこに、そん、な、要素があっ……!」
「ソレは───だから」
「っえ? 何───」
アビスがぼそっと何か呟いた気がするけど、感じすぎて善がっていた俺にはよく聞き取れなかった。
「ううん。俺にはどこもかしこも可愛らしくて好きだよ、ノヴァ」
そう言って笑うアビスに夕方頃までぐちょぐちょのでろでろに犯され続けた俺は、精も根も尽き果てて気絶するように寝落ちしてアビスに街までお姫様抱っこで運ばれたらしい。
気付いたら翌朝で、こじんまりとした小さい家の知らないベッドで寝ていて、執事っぽい初老の紳士が執事っぽい服を着て、目を覚ました俺に挨拶をしていた。
「お初にお目にかかります。アビス様にお仕えしております、エヴァンスと申します。あちらの者はアビス様の専属侍従のトリニティと申します」
「……はぁ」
きっちりと腰を45度の角度で止めてそう挨拶をするエヴァンスとトリニティに、状況が把握できていないもののとりあえず俺も挨拶を返す。
「ノヴァです」
「ノヴァ様、我ら使用人に敬語は不要でございます」
「……分かった。よろしく」
今の説明で何となくココがアビスの家で、ひとまずエヴァンスとトリニティはこの家の使用人ってことが分かった。
……まあ、Sランクともなれば持ち家に使用人も当たり前───なのか?
ココに生まれて27年。
前世の記憶のせいでイマイチ常識が分からなくて非常に困るな。
それにしてもなぜアビスんちにいるのか、全く意味不明なんだが?
誰か説明プリーズ!
*一話で終わらなかった。三話くらい続くと思います。
体調崩しました。皆様もご自愛下さい。
やや無理矢理な行為あり。わんこ君は若干ストーカー気味】
ココはドーリアという神様のいる剣と魔法の世界。
大陸にはいくつかの大国と小国が存在していて、魔王と呼ばれる存在はいないが、どこからか瘴気が湧いてきてそこから魔物が生まれる。
そしてその魔物を狩る者達も当然のように存在して、一般的に冒険者や傭兵と呼ばれている。
冒険者は冒険者ギルド、傭兵は傭兵ギルドに所属していている。
冒険者は冒険者ランクというモノがあって各自依頼を達成しながら昇級していく。
冒険者は誰かを守るためにランクをあげるのではなく金を稼ぐのが主な目的だ。
一方、傭兵も傭兵ランクがあるが冒険者が普段は個人個人や数名のグループで行動するのに対し、傭兵は自治体の軍のような存在なので大抵が大人数で行動するのだ。
要するに傭兵は街を守るために行動する。
有事の際は協力体制を取るが、お互いの行動意義がそもそも違うので、平時の時はあまり関わらない。
そんな中で、俺は辺境の街にある冒険者ギルドに所属している。
俺の名前はノヴァ。
黒髪黒目で童顔、ひょろっとした筋肉のつきにくい身体で、特筆するとしたら前世の記憶があるくらいの平凡な男だ。
物心ついた頃に魔物に襲われて大ケガを負ったときに前世の記憶が走馬灯のように頭に流れ込んで意識を失った。
ケガじゃなくてオーバーフローで死にかけたっていう……。いや瀕死の重傷だったのは確かだけど。
ちなみに旅の行商人だった両親はこのときに俺を庇って死んでしまったらしい。
意識不明で生死の境を彷徨うことおよそ一週間。気付いたら孤児院で院長先生にそう言われた。
葬儀はとっくに済んでいて、歩けるくらいに回復したあと、教会の裏手にある共同墓地に連れてきてくれた。
『ここに君のご両親が眠っています。……お別れの言葉を伝えますか?』
そんな難しい言葉で言われてもわずか三歳足らずの幼児に通じないだろ、と思いつつも今世での両親に挨拶をした。
『これまであいじょうをもってそだててくれて、ありがとうございます。ととさま、かかさま。おれはつよくいきていきます』
『───っよく出来ましたね。これからは教会
の孤児院があなたの家です。皆が家族ですよ。何も心配いりません』
『はい。よろしくおねがいします』
そう言って泣きもせずにお辞儀をする俺を気味悪がらずに面倒見てくれて、本当に助かったと思う。
よく考えれば三歳足らずの幼児がそんな風に話したり行動しないだろう。
俺も大概、動揺していたみたいだ。
孤児院での生活はおおむね快適だった。そりゃあご飯も足りてないし、孤児院の掃除や料理の当番とか下の子の面倒とかやることも課題も多かったけど、衣食住は最低限あったし俺はチョイチョイと前世の知識で問題を解決していった。
あとはなるべく自分のことは自分でやり、文字を習い本を読んだ。
知識はどこの世界でも宝だからな。
前世の記憶が甦り、この世界に魔法があると知ってからはより一層そっち方面にのめり込んだ。
食生活がよくなかったのと下の子にちょっとずつ分けていたせいでガリガリのチビだったから、剣で戦うのは早々に諦めた。
そうしてこの世界で成人となる16歳で孤児院を出て冒険者になって、はや11年。
───なぜ俺はこいつに襲われてるんだろう?
俺の目の前にいるのはSランク冒険者のアビス。ミディアムの長さの薄い金色の髪に透き通るような薄い紫色の瞳を持つ、やや垂れ目の美丈夫。俺の5歳年下で今22歳のコイツの背は俺の頭一つ分高いから190cmはあるだろう。
「ノヴァ」
そんなモテ要素満載の男が、平々凡々の俺の名を甘く呼ぶ───絶賛壁ドンならぬ床ドン中の俺を。
いや意味が分からん。
ココは森の中にある小さな横穴。俺は平気だが、背の高いアビスは頭のてっぺんを擦りそうなくらいの高さしかない。
おそらくはベア系の魔物がねぐらに使っていたのだろう。
そんな場所に大の大人の男が二人、なぜいるのかというと───。
◇◇◇
遡ること約30分前。
俺は朝から、常時依頼の出ている回復薬に使う薬草の採取で街から離れたこの森に来ていた。
ついでに串焼き屋台のおっさんに依頼された角兎の肉を手に入れられたらラッキーくらいの気持ちで薬草を刈り取っていたら、昼にさしかかった頃になって雲行きが怪しくなってきたんだ。
一応雨対策にレインコートを持っていたが、どうやら雷雨っぽくて危険だから避難できそうな場所を探して見つけたのがこの横穴だった。
その頃には土砂降りで俺はレインコートの下までびしょ濡れ。
慌てて異空間収納鞄に入れておいた枯れ枝を出してまとめて『着火』の魔法で火を点けた。
その炎が大きくなったタイミングで俺のいる横穴に飛び込んできたのがコイツ、Sランク冒険者のアビスだった。
俺は濡れて張り付いた服を脱ごうと上着の裾を捲り始めたところで静止してポカンとした。
だって、何でSランク冒険者がこんな森にいるんだよって話で。Sランク冒険者の受けるような依頼はこの森にはないだろう?
アビスも俺同様にびしょ濡れで、濡れた髪をかき上げながら俺を見てニコッと笑った。
いや、水もしたたるイイ男の色気満載だったのに笑うと大型犬みたいで可愛い、なんて思わずキュンとしてしまった。
これがギャップ萌えか。
───いやいや何言ってんの、俺!
「えと、どーも?」
「やあ、ノヴァ」
俺は話したことはないが彼は超有名人だから一応挨拶しとこう。
……んん?
「……何で俺の名前……」
たぶん教えてないと思うんだが、なぜしがない万年Cランク冒険者の俺の名前を知ってるんだ?
「だって有名でしょ」
「? 俺が有名なことなんて何もないが?」
首を傾げるとアビスも同じように首を傾げた。オイコラ可愛いな。
「……ま、いっか。ちょうど火を熾したところだから雨宿りがてら暖まっていけば?」
「うん、じゃあお言葉に甘えてそうさせて貰おうかな」
俺はこのとき、アビスは焚き火で乾かさなくても魔法でパッと乾かせるだろうことに気付かずにそう言って火の近くに誘ったんだ。
平凡な俺と違って魔力も豊富なアビスならそれくらい朝飯前だったろう。
俺は自分が魔力が少なくて、それを温存するためにできるだけ魔法を使わずにいたのでアビスにもそのつもりで接していたんだ。
俺は基本ソロだから、他の冒険者がどう行動しているかなんてよく知らなかったから。
それにアビスは否定もせずに笑って焚き火に近づいたからそんな簡単なことにも気付けなかったんだ。
濡れた服を脱ぐ途中だった俺は寒さにふるりと震えて慌ててシャツを脱いだ。脱いだ服は焚き火のそばに杭を打ってロープを渡した物干しにかけた。
靴もぐっしょりで気持ち悪い。さっさと脱いで逆さに吊し、ズボンも脱ぐ───と、視線を感じて顔を上げた。
アビスが俺を───いや正確には俺の左胸付近の傷痕を見ていた。
三本のかぎ爪が左鎖骨から胸の中央に向かって走っている。結構な傷だ。
「……あー、気分悪いよな、悪い。すぐに新しいシャツを羽織るから───」
「───いや、気にしないが……それは?」
「……子供の頃に魔物に襲われて、そのときのケガだ」
「傷痕を見るにかなり深そうだけど」
「うん、実は死にかけた。……両親はそのときに死んじゃったけどな」
「───ごめん。イヤなこと聞いちゃったね」
そう言ってシュンとするアビスに苦笑した。
「いや、全然大丈夫。気にするな」
そう言えばアビスはあからさまにホッとした。
俺はその隙にさっさと替えのシャツを羽織ってパンツも履き替えるとズボンも靴も履いてホッと一息吐く。
見るとアビスもいつの間にか着替えていた。
早っ!
そうして地面にシートを敷いてそこにクッションを置いて座ると、俺達は遅めの昼食を摂りながら雑談をした。
───不意に雷がすぐ近くに落ちた音が聞こえて、俺はビクッと大袈裟なほど身体を跳ねさせた。
「───っひ、」
「ノヴァ? どうし───っ」
「───っや……」
次の瞬間には俺は隣に座っていたアビスにしがみついてガタガタと震えていた。
それをアビスが戸惑いながら受け入れてくれる。
「……ノヴァ、大丈夫?」
「……お、俺、かっ雷が昔っから、こっ怖くて───っごめ……っ」
「……うん。大丈夫だから。落ち着くまでギュッとしててあげる」
前世の俺の死因はハッキリしないが、稲光のような眩しさと轟音でブラックアウトした記憶が残っていて、それを思い起こさせる雷が昔から苦手だった。
だから今もこうして避難していたんだけど……。
鳴り止まない雷が俺をパニックにさせた。
いい年したアラサーが年下に抱きついて泣いて震えてるって、端から見たらやべえ男じゃん。
アビスがそんな俺を愛おしそうに見つめているなんて思いもせずに───。
◇◇◇
───そして、さっきの壁、いや床ドンに繋がるわけだが……。
雨は相変わらず激しいが雷はだいぶ遠くに移動して、さすがに俺も冷静になった。
恐怖でぐちょぐちょに泣いた汚い顔を袖で拭うと慌ててアビスから離れようとして───出来なかった。
ヒョイッと視界が天を向いて、俺の顔の両脇にはアビスの腕が。
至近距離の目と鼻の先にはイケメンがいる。ソレは口がくっつくくらいの距離で。
「ノヴァ」
その口が俺の名を甘く紡いで───唇が触れた。
「……っ!? な、あっアビス!? んぅ……」
「しぃ。黙って、俺にその身を委ねて」
「…………へ、ぇ?」
俺の今世での、いやもしかすると前世からのファーストキスを奪ったこの男は、壮絶な色気を醸し出してそう言った。
俺は惚けて固まり、いつの間にかアビスの唇をまた受け入れていた。
───そして現在、俺の後孔にはあり得ないほど大きなアビスの剛直が挿入されている。
「───ん、あっ……それダメ……っ」
「ん、ココ気持ちいいね、ノヴァ」
やだって言ってるのにガツガツと執拗に俺の気持ちいいところばかり攻め立てるアビス。
アレからどのくらい時間が経ったのか、これもおそらく前世から童貞処女の俺の後ろの処女を奪った男にあっという間に調教された身体が感じまくって辛い。
「や、アビス……やだっ───何でぇ?」
「……理由が必要? 俺がノヴァを好きだから、じゃあダメ?」
「───っどこに、そん、な、要素があっ……!」
「ソレは───だから」
「っえ? 何───」
アビスがぼそっと何か呟いた気がするけど、感じすぎて善がっていた俺にはよく聞き取れなかった。
「ううん。俺にはどこもかしこも可愛らしくて好きだよ、ノヴァ」
そう言って笑うアビスに夕方頃までぐちょぐちょのでろでろに犯され続けた俺は、精も根も尽き果てて気絶するように寝落ちしてアビスに街までお姫様抱っこで運ばれたらしい。
気付いたら翌朝で、こじんまりとした小さい家の知らないベッドで寝ていて、執事っぽい初老の紳士が執事っぽい服を着て、目を覚ました俺に挨拶をしていた。
「お初にお目にかかります。アビス様にお仕えしております、エヴァンスと申します。あちらの者はアビス様の専属侍従のトリニティと申します」
「……はぁ」
きっちりと腰を45度の角度で止めてそう挨拶をするエヴァンスとトリニティに、状況が把握できていないもののとりあえず俺も挨拶を返す。
「ノヴァです」
「ノヴァ様、我ら使用人に敬語は不要でございます」
「……分かった。よろしく」
今の説明で何となくココがアビスの家で、ひとまずエヴァンスとトリニティはこの家の使用人ってことが分かった。
……まあ、Sランクともなれば持ち家に使用人も当たり前───なのか?
ココに生まれて27年。
前世の記憶のせいでイマイチ常識が分からなくて非常に困るな。
それにしてもなぜアビスんちにいるのか、全く意味不明なんだが?
誰か説明プリーズ!
*一話で終わらなかった。三話くらい続くと思います。
体調崩しました。皆様もご自愛下さい。
139
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる