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497 わくわくドキドキ錬成タイム 4
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「あー、と。まあそういうことで、じゃあ錬成を始めようか」
周りが急にシンとなってしまって居心地が悪くなったので、俺はそう言ってさっきの素材達を俺の目の前に並べた。
もちろん量は長年の経験と勘で考えた。こういうのは直感って大事で、俺の場合はまず外れることはない。
「さっきのシメピとイエローアパタイトとトケイ草を、まず別々に精製するから見てて」
そう言うと身を乗り出すようにするリオラル達。ただ危険が及ばないだろうギリギリの範囲で離れているのでよく見えないらしい。
───そうだ。
「アーク。皆に結界魔法は、警備上、王族に魔法を使うのはマズいだろうけど逆に俺達と作業台だけなら大丈夫そう?」
「あー、その辺はどうなんだ、リオラル?」
「ふむ、それならば問題あるまい。だがどういう・・・・・・?」
俺とアークの問いに是と唱えてから疑問符を浮かべるリオラルに微笑む。
「うん、俺とアークと作業台で万が一のことがあっても周りには被害がいかないから目の前まで来て見てていいよって───」
「何! 本当か!?」
「それは助かる!」
「じっくり見られるのか!?」
リオラルが俺の言葉に被せ気味に叫び、薬師長や医師長もガバッと腰を上げた。ひえっ。
「はいはい、興奮するのは分かるが落ち着いて。ノアが驚いてるから」
「あ、すまん」
「いいいや、うん、大丈夫。あの、作業台まで近付いていいから騒がないでくれると助かる」
アークが苦い顔でそう言い、俺もぴるぴるしながらそう促すと扉に控えた護衛騎士以外は皆、わくわくするように、でもそろっと近寄ってきた。
リンクスは下ろせばいいのに何故か仔狼サイズのヴァンを抱えたまま興味津々でやって来て、よく見ればヴァンは目を瞑り眠っているのか、されるがままだった。眠ってしまったから下ろすのは忍びなかったのかな?
心なしか扉の護衛騎士二人の顔が、近くで見られなくて残念そうに思えたので部屋全体に結界魔法を使って全員見られるようにしてあげた。
「そこの二人も、この調薬室全体を結界魔法で覆ったからこっち来ていいよ」
「・・・・・・ああ。俺でもたぶん破れない、いつものえげつないヤツな」
「えげつない、とは?」
「アーク殿でも破れない?」
護衛騎士達がかなり引いた声で呟いた。うん。えげつないかはともかく、たぶん誰も入れないよ。
「だから安心してここで錬成見てて」
それぞれドン引きしたり逆に興奮したりとひとしきり騒いだあと落ち着いた頃合いをみて、俺はさて、と仕切り直す。
「はい、じゃあまずは乾燥シメピから精製するよ」
乾燥シメピだけ目の前にこんもりと山のように置いて、俺は両手の平を机にぺたりとつける。
その体勢でシメピを見つめたまま、無詠唱で錬金術用の魔法陣、いわゆる錬成魔法陣を発動させた。
時間にして二、三秒だと思うが、錬成魔法陣が輝き、目の前が真っ白になる。それがスウッと引いて消えたあとには、精製抽出された僅かな量の液体がふよふよと浮いていた。
大きさとしては小指の爪くらいだろうか。
俺はマジックバッグから小指の長さほどの細くて円柱状のガラスの小瓶を取り出し、蓋を開けてその中に吸い込ませて栓をした。
この瓶は俺が錬金術で錬成した特別製で、この瓶は時間停止付きになっているので劣化しないのだ。
周りが唖然として何も言葉を発しないのを、俺は次に行ってもいいという意味に捉えて残りの二つもパパッと精製してしまった。
そして三つの精製物の入った小瓶をリオラル達の目の前に並べ終えると言った。
「これであの香水の元が揃ったんだけど、このまま香水まで錬成しちゃっていいのかな?」
俺のその言葉にハッと我に返ったのか、リオラルが感動しきりで質問してきた。
「ノア殿、さっきの結界魔法といい全部無詠唱でやったようだが、そんなことが可能なのか!?」
「え? うん。そりゃあもちろん最初は普通に詠唱したけど、慣れれば逆に時間がもったいなくて」
「いやいや、慣れても普通は短縮詠唱までですよ! 鍵となる言葉すら詠唱しないなんて」
「・・・・・・そうなの? 俺、他の人のやり方知らなくて」
今まで魔法のお手本はラグ爺さんだけだったし、冒険者しててもパーティー組んだことないから普通が分からない。
こういうところがアーク達いわくの常識外れとか規格外ってヤツなんだろうけど、今更普通なんて分からないし。
「あのな、ノアはそういうモンだと思っててくれ」
アークがいつものように苦笑してそう言う。
うんうん。アークのソレが一番的を射ていると思うよ。
でもね、時々思うんだ。本当にそんな俺でいいの? って。
でもまあ、大賢者の養い子で精霊王の義息子で、更には絶滅したという金竜で古竜を親に持つ俺だから。
ソレだけでも普通じゃないんだから育ち方が特殊だったのは仕方ないよね?
俺はあくまでも普通に育ったと思ってるんだけど。
※あとで修正入るかもです。
周りが急にシンとなってしまって居心地が悪くなったので、俺はそう言ってさっきの素材達を俺の目の前に並べた。
もちろん量は長年の経験と勘で考えた。こういうのは直感って大事で、俺の場合はまず外れることはない。
「さっきのシメピとイエローアパタイトとトケイ草を、まず別々に精製するから見てて」
そう言うと身を乗り出すようにするリオラル達。ただ危険が及ばないだろうギリギリの範囲で離れているのでよく見えないらしい。
───そうだ。
「アーク。皆に結界魔法は、警備上、王族に魔法を使うのはマズいだろうけど逆に俺達と作業台だけなら大丈夫そう?」
「あー、その辺はどうなんだ、リオラル?」
「ふむ、それならば問題あるまい。だがどういう・・・・・・?」
俺とアークの問いに是と唱えてから疑問符を浮かべるリオラルに微笑む。
「うん、俺とアークと作業台で万が一のことがあっても周りには被害がいかないから目の前まで来て見てていいよって───」
「何! 本当か!?」
「それは助かる!」
「じっくり見られるのか!?」
リオラルが俺の言葉に被せ気味に叫び、薬師長や医師長もガバッと腰を上げた。ひえっ。
「はいはい、興奮するのは分かるが落ち着いて。ノアが驚いてるから」
「あ、すまん」
「いいいや、うん、大丈夫。あの、作業台まで近付いていいから騒がないでくれると助かる」
アークが苦い顔でそう言い、俺もぴるぴるしながらそう促すと扉に控えた護衛騎士以外は皆、わくわくするように、でもそろっと近寄ってきた。
リンクスは下ろせばいいのに何故か仔狼サイズのヴァンを抱えたまま興味津々でやって来て、よく見ればヴァンは目を瞑り眠っているのか、されるがままだった。眠ってしまったから下ろすのは忍びなかったのかな?
心なしか扉の護衛騎士二人の顔が、近くで見られなくて残念そうに思えたので部屋全体に結界魔法を使って全員見られるようにしてあげた。
「そこの二人も、この調薬室全体を結界魔法で覆ったからこっち来ていいよ」
「・・・・・・ああ。俺でもたぶん破れない、いつものえげつないヤツな」
「えげつない、とは?」
「アーク殿でも破れない?」
護衛騎士達がかなり引いた声で呟いた。うん。えげつないかはともかく、たぶん誰も入れないよ。
「だから安心してここで錬成見てて」
それぞれドン引きしたり逆に興奮したりとひとしきり騒いだあと落ち着いた頃合いをみて、俺はさて、と仕切り直す。
「はい、じゃあまずは乾燥シメピから精製するよ」
乾燥シメピだけ目の前にこんもりと山のように置いて、俺は両手の平を机にぺたりとつける。
その体勢でシメピを見つめたまま、無詠唱で錬金術用の魔法陣、いわゆる錬成魔法陣を発動させた。
時間にして二、三秒だと思うが、錬成魔法陣が輝き、目の前が真っ白になる。それがスウッと引いて消えたあとには、精製抽出された僅かな量の液体がふよふよと浮いていた。
大きさとしては小指の爪くらいだろうか。
俺はマジックバッグから小指の長さほどの細くて円柱状のガラスの小瓶を取り出し、蓋を開けてその中に吸い込ませて栓をした。
この瓶は俺が錬金術で錬成した特別製で、この瓶は時間停止付きになっているので劣化しないのだ。
周りが唖然として何も言葉を発しないのを、俺は次に行ってもいいという意味に捉えて残りの二つもパパッと精製してしまった。
そして三つの精製物の入った小瓶をリオラル達の目の前に並べ終えると言った。
「これであの香水の元が揃ったんだけど、このまま香水まで錬成しちゃっていいのかな?」
俺のその言葉にハッと我に返ったのか、リオラルが感動しきりで質問してきた。
「ノア殿、さっきの結界魔法といい全部無詠唱でやったようだが、そんなことが可能なのか!?」
「え? うん。そりゃあもちろん最初は普通に詠唱したけど、慣れれば逆に時間がもったいなくて」
「いやいや、慣れても普通は短縮詠唱までですよ! 鍵となる言葉すら詠唱しないなんて」
「・・・・・・そうなの? 俺、他の人のやり方知らなくて」
今まで魔法のお手本はラグ爺さんだけだったし、冒険者しててもパーティー組んだことないから普通が分からない。
こういうところがアーク達いわくの常識外れとか規格外ってヤツなんだろうけど、今更普通なんて分からないし。
「あのな、ノアはそういうモンだと思っててくれ」
アークがいつものように苦笑してそう言う。
うんうん。アークのソレが一番的を射ていると思うよ。
でもね、時々思うんだ。本当にそんな俺でいいの? って。
でもまあ、大賢者の養い子で精霊王の義息子で、更には絶滅したという金竜で古竜を親に持つ俺だから。
ソレだけでも普通じゃないんだから育ち方が特殊だったのは仕方ないよね?
俺はあくまでも普通に育ったと思ってるんだけど。
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