迷い子の月下美人

エウラ

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478 古の森スローライフ 2

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あのカミングアウトから目に見えて張り切りだしたメーレは、驚くべきことにアレから一週間足らずで自らの足で薬草畑まで歩いて行けるようになった。

「五〇メートル足らずとはいえ、エレン達の補助なしでよく歩いたな」
「凄いよね。よっぽど畑仕事したかったんだな」

アークと俺がそんなことを話している間も瞳をキラキラさせているメーレ。好きなモノに触れられる喜びを噛みしめているようだ。
そのメーレは今、汚れてもいいように簡素な作りのシャツとズボンにエプロンを付けてショートブーツを履き、日除けのつばが広い帽子を被って更に手袋を嵌めていた。
一般的な農作業スタイルだが身に付けているのは一国の王妃。そこはかとなく気品が漂っているのは気のせいじゃないな。

「ノア! 早く! どこから手を付ければいい!?」
「あー、はいはい。今行くよ。えっとね、そこの柵から入って右端に行けるかな? そっちから雑草取りするんだけど」
「分かった!」
「今日は初めての作業だからとりあえず三〇分したら休憩を挟むよ。分かった? 無理はしないでね」
「はーい」

ゆっくりだが畑の端に移動してしゃがみ込み、丁寧に薬草以外の雑草を嬉々として抜き始めるメーレの側で、同じような格好のエレン達も作業しだした。ソレを確認すると俺も反対方向から畑の手入れを始める。

「向こうの作業はメーレ達に任せよう。しっかりした足取りだし、大丈夫だろう」
「何かあればブラウイェルがガッチリ補助してくれるさ。さて、俺はちょっと父上に呼ばれてるから大公家に行くけど」
「うん。ここで待ってるからいってらっしゃい」
「悪いな。なるべく早く戻る」

アークはどうやらウラノス義父様に呼ばれているらしくて、大公家に渋々移動して行った。以前、エレフが大公家の庭の樹の洞とこの古の森の住処をいつの間にか繋げていたのだが、そのまま繫がっているので有効利用させて貰っている。
ちなみに竜王国の王宮庭園も古の森に繫がっているが、ソッチは普通に古の森の真ん中に行くので大祖父様がたまに鍛錬だと言って魔物狩りをしている。いやあ、パワフルだよね。

さてさて、今のうちに作業を進めよう。一通り手入れをすると、育った薬草を摘んで畑の側に設置した簡易な作業台の上で調合の試験を行う。

「例の薬草、鑑定アナライズすると詳しい成分は出るけど、解毒の配合とかは自分で考えて実験しないと分からないしな」

そう独りごちて黙々と必要と思われる素材を並べていく。この薬草を見付けてから幾度となく調合をしているが、未だにコレという成果がない。
錬金術で錬成するにしても、必要な素材が揃っていないと失敗するのだ。それにコレは薬師が調合できるようにならないといけない。これからのためにも。
俺も実験は好きだし未知の薬草にわくわくもするが、今回は猫系獣人達のためにも早急に解毒薬を生成したい。

「ソレを考えると、カガシさんのスキルってホントに凄いよな」

妬ましいなんてちょっと思うけど、俺は俺、他人は他人。無いものねだりなんてしても仕方がない。

「でもせめて素材が分かるなら教えて貰えると助かるんだけどな」

溜息を吐きながら黙々と何通りもの組み合わせを試していると、不意に足先に気配を感じて視線を落とした。

『時間!』
『休憩』

イェルとブラウがしがみ付きながらそう言って、ハッとした。そうだった、三〇分で休憩って───。

「ノアは私よりも見ていないといけない子ね」
「ノアさん、集中するといつもこうなんです」
「アークさんが付きっきりで見てますよね」
「・・・・・・あ、ごめんなさい。手を洗ってお茶飲もう」

ニコニコ笑顔でそう言われて、俺は顔を赤くしながら慌てて片付け始める。そしてウッドデッキの方に移動してお茶を用意するのだった。









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