迷い子の月下美人

エウラ

文字の大きさ
上 下
461 / 538

454 メーレ王妃復活!

しおりを挟む

介護要員としてやって来たエレンとミオが森での生活に何とか慣れた頃、世話の甲斐あってかメーレ王妃の意識がハッキリ戻ってきた。

ノアが攫ってきてからちょうど二週間。

拠点にしている精霊王の住処の一画。
何故か薄暗い古の森なのに空から自然の光が良く差し込む場所にノアが錬金術で寛ぎスペースを作っていた。

ウッドデッキのような板張りの上にふわふわの柔らかく毛足の長い絨毯を敷き、大きくて広い、簡易ベッドになりそうなカウチソファを置いて。
向かいには座り心地の良い二人用と一人用のソファ。

ローテーブルにワゴンもある。

屋根代わりの透けるような総レースの布が四隅の柱に取り付けられている。

そのカウチソファに、たまにはお日様も感じないとね、とノアがメーレ王妃を抱き上げて連れ出して寝かせていたのだ。

未だ夢うつつの状態のメーレ王妃だが、ちまちま食べさせていた甲斐があってか、瘦けた頬も少しふっくらしてきた。

コレならば少し陽や風にあたっても良いだろうという判断で。

お昼前から午後二時くらいならば大丈夫だろうと寝かせていた。

「悪いけど、俺も少し横になるね」
「はい、お任せ下さい」

ノアも夜に備えて少し午睡をすると言うと、エレンはキリッとした顔でそう応えた。

少し前の我が儘坊ちゃんとはまるで別人である。
本人が一番ビックリしていたが。

そうしてお昼も過ぎてエレン達も暖かな光にうとうとし出した頃・・・・・・。

不意にメーレ王妃が身じろいだ。

何時もの緩慢な動きかと、エレンとミオはハッとしながら王妃の顔を覗いていると、目蓋がはっきりと開いて、虚ろだった瞳がエレン達をしっかり映したのだ。

「・・・・・・けほ、こ・・・・・・こは?」
「「---っ!!」」

掠れた声で、でもしっかり話す声にエレン達は一瞬驚いて固まるが、ミオが先に立ち直った。

「ノア殿に知らせて来ます!」

その声にエレンもハッと我に返り、水差しの水を吸い吞みに入れてそっとメーレ王妃の口に含ませた。

「あっあの、メーレ王妃様。僕はエレンと言います。僕が誰だか分かりますか?」

エレンは、小さいときに何度か会ったことがあるので、自分が分かるか尋ねてみた。
メーレ王妃は少し考えて応えた。

「・・・・・・その、泣きそうな顔・・・・・・スーラ侯爵家の、下の子、かしら。・・・・・・エレン、よね?」
「---っはいっ! ・・・・・・良かった。本当に、良かっ・・・・・・」
「・・・・・・相変わらず、泣き虫さんだね。・・・・・・それにしても、私は、一体・・・・・・」

カウチソファに凭れるように床に膝を付けて思わず縋るように涙を溢すエレンの頬を震える手で撫ぜていると、ミオがノアとアークと彼にしがみ付くブラウとイェルを連れて来た。

「---っ本当だ。意識がハッキリしてる。良かった」
「おう、やっと目覚めたか。ひとまず安心したな、ノア」
「うん。コレでご飯ももりもり食べればあっと言う間に元気になるよ」

エレンの後ろから顔を覗かせているノアとアークにメーレ王妃が驚いていると、ブラウとイェルがびょんとカウチソファに飛び降りた。

『元気になりました?』
『良かったねえ』
「・・・・・・あらあら、可愛らしい猫獣人の・・・・・・子供?」
「あー、ゴーレムです。俺が錬成しました」
「・・・・・・え? えと、貴方方は・・・・・・?」

メーレ王妃がキョトンとした。
ソコでノア達は自己紹介がまだだったことに気付き、カウチソファから離れて挨拶をした。

「初めましてメーレ王妃殿下。竜王国ヴァルハラ大公家が三男、アルカンシエルと申します。今は冒険者をしております。こちらは番いのノアです」
「ノアと申します。アルカンシエルの番いです。冒険者で薬師で錬金術師です。王妃様の具合があまりにも悪かったので、こちらで静養させて頂いてました」
「ちなみにここは古の森の精霊王の棲んでいる場所ですよ」

淡々と説明してくれているが、メーレ王妃はポカンと口を開けたまま固まっていた。

「・・・・・・そうなりますよね、それが普通ですよね」

おいおいと泣くエレンを穏やかな目で見ながら、ミオはメーレ王妃の気持ちが分かる、とうんうんと一人頷いていたのだった。





※やっと王妃様目が覚めた。
眠り姫を目覚めさせてくれたのは王様じゃ無かった(笑)。そして荊(蔦)に囲まれてたのは王様自身。



しおりを挟む
感想 1,191

あなたにおすすめの小説

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...