458 / 534
451 交渉 4
しおりを挟むリオラルは思わず立ち上がって叫んでいた。
『そんな香水を錬成していたのですか?! では、もしや錬金術師ギルドが、王妃に、毒を・・・・・・?!』
「可能性はありますね」
そう付け加えられて宰相オウランも部屋に控えていた護衛騎士達も息を飲む。
『まさか、本当に?』
呆然とするリオラルに見えるように鑑定書を広げるウラノス。
「コレがその香水の鑑定書です。間違い無く獣人国王都に唯一ある錬金術師ギルドの方々が錬成したものですよ。しかもバレないように巧妙に隠蔽魔法で隠してありました。後で転送致しますのでご確認下さい」
そう言った後、一旦言葉を切ったウラノス。
そして真剣な顔で告げた。
「ただし、ごく少数の、信用のおける方にのみお知らせして調査したほうが良いでしょう」
ウラノスの言葉は、暗に裏切り者が潜んでいる可能性を示唆している。
そもそも王族の口にするモノに容易く毒を盛るなんて本来は出来ないはずなのだから。
『・・・・・・そうですね。ココにいる者には誓約魔法を使います。あとは影達には元々誓約魔法を使ってあるので、大丈夫でしょう』
リオラルも顔色が悪い。
その様子から想定外だったことが窺える。
のろのろと椅子に座り直すリオラルに、竜王国側の皆が疑問に思ったことをウラノスがズバリ切り出す。
「・・・・・・質問なのですが」
『何でしょう?』
「錬金術師ギルドはノーマークだったのですか?」
リオラルやオウランが気まずそうな顔になったのでウラノス達は確信した。
リオラルは溜息を吐くと話し始めた。
『ご存知の通り、我が国の王都には唯一の錬金術師ギルドがあります。しかしながら、薬師ギルドと違い、その内部は腐っておりまして』
『・・・・・・矜持だけやたらと高く、錬金術師としての腕はからっきし。子供騙しのような粗悪な錬成ばかりなのです』
リオラルに続き、オウランが言葉を続けた。
リオラルも渋い顔で頷いている。
「なるほど。とてもじゃないが毒などを錬成して盛るような芸当は出来ないだろうということで端から除外していたのですね」
『そういうことになります。・・・・・・本当にまさか、という気持ちですよ』
それで最初に薬師ギルドの名が出たのか。
薬師の方は優秀とみえる。
「それで、その香水ですが、幸い常習性はありませんが興奮作用があり欲望や願望が表に現れやすくなるようです。こちらにいるエレン殿の場合ですと、自己中心的になり周りの様子を気にしない。大声を上げたり行動が激しかったり、ですね」
『・・・・・・その様な貴族を、こちらでも最近目にする事が多い気が・・・・・・。まさか彼等も使用しているんじゃ・・・・・・』
「そこそこのお値段のモノらしいので、庶民には手が出ないでしょうね。ですので、可能性はあると思います」
「実はこちらの国の第二王子殿下の影がすでに動いております。ソコから判明致しましたので、引き続き調査中です」
ウラノスが貴族を中心に広まっている事を示唆し、リュウギがリュカリオン殿下の事を告げると、リオラルはギョッとした。
『そちらの第二王子殿下が動いているのですか?!』
「ええ。ウチのアルカンシエルとははとこですしノアとも仲が良いので、今回は自主的に動いてますよ。何か分かればすぐ連絡を取れるようにこちらの影と王太子殿下の影とで顔合わせを致しましょうか?」
珍しくウラノスが若干面白がっている。
レーゲンは止めようかどうしようか迷って、結局諦めたようだ。
ウラノスの場合、面白がっていると言うことは、裏を返せば怒っているということなのだから。
「あと、必要であれば『ノアズアーク隊』の協力もつけましょう。・・・・・・どうです? 王太子殿下」
『---っ、ノアズアーク隊の協力を得られると?』
どうやらリオラルは『ノアズアーク隊』の存在を知っていて、如何に凄い情報網かも分かっているようだ。
目を瞠って驚いている。
オウランの方は知らないのか、ピンときていないようだ。
『・・・・・・彼等は、国に属さない組織では?』
「ええ。国のために動くことはありません。彼等はあくまで自主的でノアとアルカンシエルのためだけの組織です。ですが大陸中で活動しているので情報は凄いですよ」
そう言ってにっこり笑うウラノスと後ろで頷いているクリカラ達。
ルドヴィカは右手の親指を立ててニカッとしていて近衛騎士達が思わず彼の頭を叩いていた。
「その上、竜王国の騎士団員がほぼほぼ入隊していますからね。何かあれば総動員で元凶を潰しにかかります」
「その元凶、瞬殺だな」
更に追加情報を渡すウラノスに続けてルドヴィカがニカッとそう告げたのでウラノス以外の全員にツッコまれて頭を叩かれていた。
もちろんその中には竜王陛下もいる。
『---っそれは、頼もしい、ですね』
獣人国王太子リオラルは血の気の引いた顔を引き攣らせて何とかそう言った。
※漸く怪しいところが。そして今回はノアズアーク隊出張っちゃうぞ。すでにヴァンが調査依頼していますからね。影達も頑張るぞ。
アークとノアはのんびり・・・かな?
190
お気に入りに追加
7,355
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~
空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。
どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。
そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。
ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。
スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。
※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる