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434 精霊王はこってり絞られる
しおりを挟む「---で? 持っている情報を洗いざらい吐いて貰いましょうかねえ?」
獣人国との対談を終わらせたそのままに精霊王を皆の圧で囲い込み、逃亡意欲を消してからの和やかな尋問タイム。
ウラノスの目は笑っていない。
クリカラ達は『儂ら知らんもんね』という顔で黙認している。
精霊王は悟った。
---もうこれ、全部ゲロっちゃわないと森に還れないヤツ・・・。
この際、ゲロっちゃうなんて下品な言葉の出所は置いといて。
先ほどまでの威厳は如何したと言わんばかりにぴるぴる震える様は、最初の頃のノアのようだった。
可愛い・・・いやいや相手は精霊王殿。
心を鬼にして・・・。
---聞いた結果、マジかよウソだろ勘弁してくれよ、とウラノスも言葉遣いが乱れた。
目の前のソファには項垂れて両手で顔を覆い、しくしくと泣く(ガチ泣き)精霊王。
「---つまり? 貴方の最近の放浪癖のせいで疎かになった古の森の巡回の目をくぐり抜けた誰かが、森に入れるギリギリの場所で未知の薬草を手に入れたかもしれないと?」
《・・・・・・ふぁい。・・・面目ない・・・》
「・・・・・・最初の説明では如何にもその誰かが偶然手に入れたような言いっぷりでしたが。・・・しかしそうなると精霊王殿の手が回らないうちにそういった薬草を採取しようと目論んだのかもしれないですね」
何処からか情報を得たのか、ソレとも初めは本当に偶然だったのかもしれないが。
《・・・すまん。本来であれば精霊達からも怪しい人物の侵入を探知すれば連絡があるのだが手が足りず・・・もしソレが本当ならば我の失態。故にノアに迷惑はかけられぬと・・・》
未だにしくしくと泣く精霊王に隠しもせずに深い溜息を吐くウラノス。
ビクリとする精霊王にウラノスは言った。
「話は分かりました。理由はともかく、こちらとしては助かりますので、引き続き情報を集めて下さい。あとは・・・ノア達にしっかり怒られて下さいね?」
《ひえっ・・・・・・うう・・・甘んじて受けよう・・・》
終始ビクビクしていた精霊王は青菜に塩状態で、見ていられないほど萎れていた。
「で、如何します? 一度、古の森に還りますか?」
《・・・うむ。そうする。・・・何かあれば喚んでくれ》
「・・・・・・分かりました。まあ、あまり気を落とさずに」
《うう・・・怒られるだけならまだしも、出禁とかになったら・・・ああ・・・どうしよう・・・・・・》
どんよりとしたオーラを纏ってブツブツ言いながら精霊王は還っていった。
クリカラ達は苦笑して、ルドヴィカは相変わらず腹を抱えて笑っていた。
「まあ、原因の一端は精霊王様としてもこれはこれで役に立ってるんですし、かえって良かったんじゃないですか? ヴァンももしかしたら面白がりながら何か掴んでいるかもですし?」
「---ああ・・・ヴァンね。もしそうだとしてもアレもあとでアーク達に思いっきり締められるだろうね・・・」
「いやあ、そもそも本来、フェンリルは従魔になるような存在じゃ無いだろう?」
「フェンリルに言うことを聞かせるのが無理な話ですって」
「だが実際、従魔だし主にノアの言うことは聞いているが?」
「ソレはやっぱり餌付けの効果だろう」
「胃袋掴まれてますもんね」
「・・・・・・精霊王殿も餌付けされてるね」
「ノアの手料理に貪欲すぎる件」
自由すぎる食いしん坊の精霊王とフェンリルにクリカラ達は乾いた笑いを溢すのだった。
---そうしてお仕置きセッ・・・・・・から漸く復活したノアが事の次第を知り、大荒れに荒れるのはこの後すぐのことである。
今はほんの少しの、嵐の前の静けさだった。
※漸くノア復活!
エレフもヴァンも生きていられるのか?
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