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432 ヴァンは高みの見物 1(side獣人国王都冒険者ギルド&ノアズアーク隊)
しおりを挟む「それでヴァン殿、私達『ノアズアーク隊』に頼みたいこととは?」
ギルマスのシィオンが真剣な眼差しでヴァンに尋ねた。
ヴァンは先ほど王妃の間からくすねてきた例のポーションを腕輪からテーブルに取り出す。
二人は見慣れたポーションの瓶を見て首を傾げた。
「これは薬師ギルドで作っている、よく見るポーションの瓶ですね。ウチでも卸して貰ってますよ」
「ええ、あと確か錬金術師ギルドも同じモノを使ってるはずです。・・・・・・もっとも錬金術師ギルドは矜持だけは一人前で、薬師ギルドより出来の悪いヘッポコなポーションを作っているので冒険者ギルドでは取り扱っていないのですが」
シィオンがそう分析しているとアルディーヤが歯に衣着せぬ言葉で錬金術師ギルドをこき下ろしている。
『酷い言い様だな』
「冒険者は何が命取りになるのか分かりませんからね。己の命を預けられないようなポーション類を持たせたくありませんので」
ヴァンが苦笑して言うと、当然のようにそう言い切るアルディーヤ。
シィオンも頷いている。
『ギルドのトップの鑑だな。良いことだ。ノアが聞いたら喜ぶ言葉だな。ノアは自分の薬に誇りを持っているから』
「そう言われるとこちらも嬉しい限りです」
『・・・さて、今回その誇りを穢すような事が起きておる。お主ら、鑑定スキルはあるか? 出来ればMAXが良いんだが・・・。とにかくそのポーションを鑑定して見ろ』
「・・・私は鑑定スキル上級ですので、見てみますね」
真剣な声のヴァンに言われて、アルディーヤが鑑定してみる。
すると・・・・・・。
「---っこれは・・・!」
「どうした? アルディーヤ、何か見えたのか?」
顔色の悪くなったアルディーヤにやや焦るシィオンが矢継ぎ早に問いかけると・・・。
「・・・・・・微量の毒物が入っています。上級スキルでも経験の浅い者には分からないでしょう。しかも私達の知らない毒草の可能性があります。言われて初めて鑑定して分かるくらい、上手く隠蔽されてますね。何重にも隠蔽魔法が施されてあります」
「---まさか、薬師ギルドが・・・・・・?」
シィオンは厳しい顔をしている。
まさか自分達にとっても大切な薬を作る薬師ギルドが・・・と。
『ソコよ。ソレを調べて欲しいのだ。さすがに我が彷徨いていては目立つであろう? だから、ノアズアーク隊の情報網で調べて貰いたいのだ。毒草がナニかの調査はあとで良いが、毒がどの段階で混入されているのか、ソレを知りたい。・・・・・・出来れば毒を盛っている輩を突き止めたいがさすがに時間が必要であろう?』
「確かに時間がかかると思いますが・・・。取り急ぎ、毒混入の経路の割り出しを致します。・・・その間、ヴァン殿はどちらに滞在予定で・・・?」
『いや、決めとらん』
調査の間の滞在予定を聞けば決まっていないというヴァンに、アルディーヤがパッと表情を明るくさせた。
それを見て苦笑したシィオンがヴァンに提案する。
「であれば、ぜひ私達の家にお泊まり下さい。小さいですが、宿に泊まるよりは寛げるかと」
『・・・邪魔ではないか? 子供はおらんのか?』
「ええ、まだまだ新婚なんですよ。コレからです」
『おーおー、お熱いねえ。ノアとアークみたいだの。それならばお邪魔させて貰おうか』
「是非に!!」
「良かったな、アルディーヤ」
「はいっ!!」
そんなことを執務室でしているとは露ほども思っていない冒険者やギルド職員達。
あとでノアズアーク隊員に密かに下った指令に気を引き締めたり、気合いを入れ直すのだった。
※咳のし過ぎで横隔膜辺りが痛い。
皆様も御自愛下さい。
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