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429 ヴァンと獣人国王都冒険者ギルド
しおりを挟む最初に声をかけて来た冒険者は名前をロックと言った。
まだ若い、冒険者になりたてのような人の良さそうな犬獣人だった。
「さっき、少し前に大通りでフェンリル様の気配を感じたんです。お姿は見えなかったんですけど、空気が、何かそこだけ違ってるような気がして、もしかしてと思いながらあの後もずっとうろうろしてたんです。そうしたら・・・!!」
『我に気付いちゃったのね』
「はいっ!!」
そう大きな声で耳をぴんっと立てて誇らしげなロックに、アークもこれくらい可愛げがあるといいのにな、なんてどうでも良いことを考えながら冒険者ギルドに案内して貰っていた。
その間中、一定の距離をおいて周りをくっ付いてくる獣人達に若干の鬱陶しさを感じながらも大人しく案内されるフェンリルと、ソレを物珍しさと畏怖で見守る獣人達という、よく分からん集団が出来つつあった。
そして漸く冒険者ギルドに着くと、ヴァンは一言吠えた。
『いい加減散れ! 鬱陶しい!』
ソレに驚いた獣人達は蜘蛛の子を散らすように消えていった。
『・・・やれやれ、面倒だの。ノア達がいればこんな煩わしさなど無かったモノを・・・』
「ソレは申し訳ありませんでした、ヴァン殿」
『いや、お前が謝ることではない・・・って誰?』
「ギルマス!」
疲れたように呟いた言葉に返事が返ってきて思わず会話を続けてから、はた、と気付くヴァン。
ソレにロックが叫んで教えてくれた。
「お初にお目にかかります。獣人国王都冒険者ギルドのマスター、シィオンと申します。お噂は兼々・・・」
『おお、ギルマスか。よろしくな。・・・噂とはアークやノアのアレコレかの?』
「まあ色々と・・・?」
含み笑いで茶を濁すギルマスの後ろに控えるもう一人。
「まあ良い。で? 後ろのヤツは、サブギルマスってところか?」
「ええ。お初にお目にかかります。サブギルマスのアルディーヤと申します。どうぞお見知り置きを」
熊獣人のギルマスと対称的に小さいリス獣人のサブギルマス。
その身長差は50cmはありそうだ。
『・・・エラい凸凹コンビだな』
思わずといった風に呟いたヴァンににっこり笑って応えるギルマス達。
「「実は私達、夫夫なんですよ」」
『・・・・・・は、え?』
二人はしてやったりというふうに笑って言った。
「初めての人は何時も驚きますよ」
「ヴァン殿にも同じリアクションを頂けて最高です」
「---良いなあ、ギルマス達ばっかり」
「お前は一番最初にフェンリル様を見つけ出したじゃないか。そっちの方が凄いだろう」
「ソレは、そうだけど・・・」
「まあまあ、とにかくヴァン殿にお入り願いましょう。いい加減、周りが煩いので、ね?」
アルディーヤの声に周りを見渡せば、確かに遠巻きながらたくさんの衆目を集めていた。
『そうだな。・・・・・・ちょっとサイズダウンするか』
ヴァンは入口を見てから己の体長を確認して、窮屈そうだと仔狼姿になる。
するとアルディーヤがぷるぷる震えてヴァンを抱き上げた。
「ヴァン殿、かっかわっ・・・いえ、あの・・・踏まれたら大変なので抱っこしますね!」
『・・・もうしてるだろうが。構わん。・・・・・・一応言っておくが、吸うなよ?』
「・・・・・・もしかして吸われた事が・・・?」
『・・・・・・ノアにな・・・何時も抱き上げられてもふもふされてスーハーされとる・・・。もう慣れた』
「・・・それは、ははは・・・・・・」
嬉々として抱き上げるアルディーヤにヴァンが呆れつつそう言うと、シィオンがギョッとして聞き返してきた。
ヴァンが遠い目をしてノアとのやり取りを反芻したので、シィオンは何も言えなかった。
そんな感じで冒険者ギルドに入っていくのだった。
※終わってたのに予約投稿忘れてました。スミマセン。つい、にじフェス推し活してました(ナニソレって? 分かる人は心の中で、あ~・・・とツッコんで下さいませ)。
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